ALORC-Bottle-Craft-512-Logbook(Ⅱ)

AよりRへ。記録を継続する。(二冊目)

”世界を面白おかしくするための”サッカー漫画『GIANT KILLING』とノンフィクション映画『マネーボール』の相克

 はてなブックマークランキング上位から芋蔓式に面白い話に辿り着いて、ふと考えた事を書き綴る。


 サッカー漫画GIANT KILLING。私はアニメ(BSでなく地上波放送)、それも第2話中途から見て面白いなーと思って継続視聴し、OP曲の盛り上がりと合わせ技で完全ハマって「モーニング」読み出したクチである。おかげで『BILLY BAT』『宇宙兄弟』に『グラゼニ』、『デラシネマ』『僕はビートルズ』など、それまで知らなかった面白い作品に出会えたりして諸々のスタッフGJと感謝が絶えない。
 ところで先週の掲載分で、GM後藤が藤澤記者にETU躍進の原動力を尋ねられ、監督の達海とスカウトの笠野、その二人の力が大きいと答えている。同時に、一時ETUが二部降格した原因を作ったと言われていると枠外には記されており、気になるの話の先は合併号につき来週に持ち越しだが……私は上の記事群を追いつつこの事を考えていた。はたして『ジャイキリ』は、リアルのデータ化傾向に逆行する物語であるのかと。

 いやさ、物語*1における勝負事――スポーツやらカードゲームやらにおいてデータ重視の戦略戦術というのは凡そ主人公側のそれではなく、彼らを苦戦させはしても「何故か」データ以上の実力を発揮されるなどして負けてしまうものである(ごく主観的な物言い)。
 『コードギアス』のルルーシュランペルージ(ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア)など逆傾向の主人公*2が居なくもないが、彼でさえ不利な盤面を引っ繰り返すのが精々で、白兜に戦術的敗北を喫する定めにある。
 MTG「マナカーブ」理論を体現した「スライ」デッキが証明したように、確率や数字を正しく用いた戦術は基本的に強い。だのにデータ派閥が主人公達に勝てないのは……そりゃあ主人公が主人公だから、などと言っちゃあおしめえよ。でも実際に既存データにない能力を発揮したり、デッキに入ってないカードを引いたりするので仕方ない。うん? 後者って反則じゃなかろうか。


 閑話休題。ETUの話に戻ろう。弱小だったETUを一部リーグの台風の目となさしめた達海の戦術(+選手の頑張り)と笠野の人材調達。これは上の記事で紹介された『マネーボール』的データ戦略「セイバーメトリクス」……”必要なのは、百戦錬磨の監督でも生き馬の目を抜くスカウトでもない、統計学者だ”という考えに反したものであるか。
――私が安易に出した答えは今のところ是でも非でもない、だ。
 まあ反していると決まった所で『ジャイキリ』の面白さに変わりはないと言ってしまうと仕様が(本記事の意義も)無いが、もう少し徒然と続けてみる事にする。

 そもそも監督やスカウトが統計データを使えば良い話ではないか、という安直な考えであるのだが、達海もデータから考えて選手を選んでいる場面がある。他ならぬアニメ第2話、30m走を繰り返して最初と最後のタイム差が少ない――スピードがあってスタミナがある選手(若手ばっかり)を指揮して紅白戦を行い、キャプテン含めベテランばかりのチームに圧勝する。文字通り「ジャイアントキリング」を象徴する場面のひとつである。
 他にもクラブハウスに泊り込んで対戦相手を研究し、戦術を組み立てていく様子も多々描写される*3。笠野がどういう手法で選手を探し出しているのかは、情報が足りないので保留。はたして『ジャイキリ』劇中で確率がどう、数字統計がどうという話はさして出てきもせず、ビリー・ビーンやダミアン・コモッリ、ファルハン・ザイディのような人物が登場してもいない。
 そもそも日本スポーツ界でデータ革命とやらはどう扱われているのかも私は知らないのだが……ううむ触れるには知識不足が過ぎる話題であったか?


 ともあれ数字とは、統計とはただの羅列でありつつ、一個の「力」となりうる。その枠内で収まり切らない、計り知れないものを人間が、また世界が抱えていることも事実。そう言うと可能性無限大のようでいて、人間一人の力など小さなものだけれど。集団でこそ生きる、仲間の支えあってこそ輝く資質なんてのも、それらが組み合わさった「強さ」なんてのも侮れない。
 奇しくも我らが受けた教育は集団の中でないと、単独では生きていけない者になるものだったらしい。まあその意図に従ってやる義理も無いのだが、はてさて「私」単独が何をなしうるやら。とりあえずブログを書いて、「『GIANT KILLING』は面白いぞー」って声を大にすることくらいかね。


 今日もクラブワールドカップが生中継。リアルのサッカーも漫画のサッカーも、もっと面白くなあれっ!

*1:※基本的には少年向けに限る。福本伸行などの苛烈なギャンブル賭博系になるとその限りではない。

*2:後で思いついたのは、『アイシールド21』の「蛭魔妖一」のような主人公側のリーダーにして軍師を兼ねる(ある意味ルルーシュと同じ類の)人物。少年漫画的主人公は「小早川瀬那」としても彼が活躍する為には不可欠な智謀。

*3:そのお陰で練習時に眠たげだったり試合中本当に眠ってしまったりもする。