ALORC-Bottle-Craft-512-Logbook(Ⅱ)

AよりRへ。記録を継続する。(二冊目)

山田玲司『美大受験戦記 アリエネ』第11話――《凶運の彫像/Jinxed Idol》、その背中が語るもの

有「先生…そういうわけで今日は泊まります。ブルータスの気持ちになりたいんで!!」

(第10話の感想はこちら)

※以下の文章は実際のキャラクターと性格・口調が一致しない可能性が多々含まれています。

「はい皆さん、『美大受験戦記 アリエネ』第11話「ブルータス、お前は?」(12月19日発売ビッグコミックスピリッツ掲載)の感想を始めたいと思います。なお、合併号につき来週はお休み、次号は年明けを挟んで新年の第一水曜日(1月4日)発売となります」
「そして今回から始まる奮闘編のナレーターは私、個性全開の月岡弥生と」
”普通が個性”の青木でお送りいたします」


「予備校の春季講習も三日目。昨日まではデスケルの基礎に取り組んでいた歌川君も、石膏デッサンに参加できるようになりました」
「抗議に行った私が居なくなったあとも二人で何か話してたみたいだけど、その時に先生が伝えたのかしら」

「講習開始時に特筆すべきことは無し。アトリエに揃った顔の中には特待生(東山光河)も居るけど、彼は今回この1コマだけだったわ」
「モチーフはブルータス。『ブルータス、お前もか』で知られていますね。この手のデッサンではよく使われている代表的なものです。当然多くの先達が積み重ねてきたよく見える、描くべき構図というものがあるんですが……」
「そんなことは関係ないとばかりに私は像の真後ろの壁に陣取ります」
「掟破りで型破りな月岡さんの位置取りに、生徒のみんなが困惑してしまいました」
「おまけに先生の注意にイラっときた私が「背中がその人を語ることもある」って返した時の周りの反応といったらなかったわね。つまんない奴らばっかり。何の為に美大を目指してるのかしら
「まあまあ、月岡さんもそう言わずに我慢しましょうよ。これは練習なんですから、美大に入る為には、描きたいものを描く為には必要なことなんですよ」
「……それは私もわかってはいるとは思うのよ。美大受験の為に予備校に入ったんだから。でも才能を活かす為に絵を学んでるのに、その予備校で学校と同じようにしてたら本末転倒じゃないの?」
「耳が痛い話ですねえ……私が見た目「普通」なのも、きっと何か意図があると思うんですが」


「ともあれ午前午後夜間と8時間ばかりをデッサンに費やしたわけですが、歌川君はいまいち上手くいかず何度も描き直している様子」
「頭と体のバランスが取れてないのね。ポイントはアゴアゴ
「ディテールを描き込む前にフォルムをしっかり、という僕の説明ではよく通じてない様子でした。思えば歌川君は美術の基礎知識もあまり無いんですよね……もっと教え方を考えるべきでしょうか」

「他の人たちが一通り描き終えて帰っていく中、バスキア君は学術的でつまんない絵を練習するべくアトリエに居残り。でも残っていたのは一人じゃなかった」
「月岡さんは結局位置を変えず自分を曲げず、後ろからブルータスを描き切っていたのでした。顔の部分は想像で。その絵に歌川君は凄い上手いだけじゃなく、何かが伝わってくると感じます」
カエサル謀殺の事ばかりが知られているけど、彼の父はクーデターの失敗で処刑されていて、彼もまた権力争いで命を落としてるの。哲学が好きで人のいい、優しい人物だったって話よ」
「そんな人を正面から描けない、という月岡さんの感性を、歌川君は格好いいねと率直に口にします。そして君みたいに上手く描くにはどうしたらいいかとアドバイスを求めるのでした」
「それに応じたのは、まあ私も悪い気持ちじゃあなかったんでしょうよ。それにしても初日の時といい……言うに事欠いて「月岡さんがいてくれてよかった……」だなんて、軽々しく言うんじゃないわよ。みんな競争相手なの忘れてるんじゃないかしら」
「今回の月岡さんに対する周りの反応で、少しは予備校という環境をわかった*1ようですが……そういう素直な所は美点だと思いますけどね」
「ふんっ。どうせ私は素直じゃないわよ」

「とはいえ泊まりたいとか言い出して、面倒くさい生徒には違いないんですよ……他の生徒も居るしかかりきりにもなれませんし、方向性の違う二人のもんだ、いや個性的な生徒の相手は難しいものがありますねえ」
それって私も入ってるのかしら。心外だわ」
「あははははは(誤魔化し笑い)。さて、第11話はいかがだったでしょうか。次回はまたしても歌川君に試練が訪れるそうです」
「今回合併号で、次も合併号だから、コミックス第1巻が発売されるまであと4話くらいね。その頃にはもう2巻が終わるくらいの量は出来てるんじゃないかしら?」
「それでは少し早いですが、また来年お会いしましょう! 皆さんがよい年末を過ごしますようっ」
「え、もしかしてこの形式続けるつもりなの!?」

(〜幕〜)

(後日付記;第12話感想はこちら)

*1:自分以外の受験生たちの想い、迷いや不安を感じ取り、「苦しいのは、無謀な挑戦を始めた僕だけじゃなくて……みんな同じなのかな…」とモノローグ。