ALORC-Bottle-Craft-512-Logbook(Ⅱ)

AよりRへ。記録を継続する。(二冊目)

山田玲司『美大受験戦記 アリエネ』第27話――《精神爆弾/Mind Bomb》


夢「でもね・・・なんか・・・すっごく楽しい・・・」

(第26話の感想はこちら)
 第27話「絵の順位?」(5月14日発売ビッグコミックスピリッツ掲載)、巻頭カラーの扉絵は大型折込。個人授業の成果が早速出るかと思ったら、そんなことはなかった。まだまだ序の口の試練は、これから。ただ雑念を捨て、集中できるようにはなった模様。


 このコンクールに予備校に残るか否かが懸かる夢は、しかし固くなって10位。人の心配してる余裕など無いのに、想い人の事ばかり気にしている有も低位で動かず。
 休憩中にモデルの人が前回質問した好きな漫画家を教えてくれたが、いつぞやの再現を試みようにも……

 A:矢沢あい椎名軽穂種村有菜高橋留美子ポケモンミッフィー


(――って何だ、この果てしないメジャー感は!!
普通すぎて逆にわからんぞ!!)


 懊悩する彼に弥生のツッコミ助言。プロのアトリエじゃなくて受験予備校なんだから、モデルの内面表現なんて要らない。黙って「上手く見える絵」を描くしかない……有を心配しての事でも、こういう発言が出る辺り、彼女も予備校と言う環境に順応してきたのか。まずは形を掴むことだ、と去り際に、

「ここで諦めたら・・・許さないからね・・・」

……何度目だか、もう彼女がヒロインでいいんじゃないかな。どうあっても夢への眩しさ憧憬が先立つのだけれど。女神的信望とまではいかぬが。


 はてさて、青木先生が一時抜けて、明日の講評まで出番無いかと思われていた毒舌3トップの二人が登場。おネエ口調の狩野大五郎(30)に、まんまるっちい俵屋香恋(40)。
 そして始まる“恐怖のメンタル爆撃コーナー”―――!!

 現役予備校生が次々言葉責め批評に遭い、夢も「うわべだけ上手く見せようと」「腰が引けて」「モデルが見えてない」……胸を刺される。

「自分に才能が無いってことを、」「知るのが怖いの・・・」

 隣でそれを見ていた有は、原始人呼ばわりで絵の具を拭き取られ、やり直しに。ハードコアの暴風過ぎて静まり返った教室で――今までのカリキュラムは怯えがちな生徒が優しくこの世界に入れるように作られたスィートタイムだったことに気づく。もう優しい時間は終わってしまったのだ。
 ハードパンチに目が覚めて、久しぶりに完全に「絵を描くだけの世界」に入って……いつのまにやら夢が居ない。描いた絵も拭き取っている。水菜もおらず、まさか諦めて帰ってしまったのかと走り……

 見つけた姿は、いつかのように屋上のコンテナ上。お互い絵の具塗れの顔を笑い、絵の上手い下手に順位つけて競う事を笑い、それでも「楽しい」と彼女は言う。

「色々あるけど・・・好きなことを全力でやってるからかな・・・」

 葛飾夢の折れぬ在り様に歌川有は憧れ、また多分に歌川有の自信と勢いに葛飾夢は力づけられる。作劇上、きっとそんな補完関係、だったらいいね主人公。

「負けるもんか・・・」
「うん・・・負けるもんか・・・」


 未だ姿を見せない東山光河に勝つとか、3位以内に入るとか、それ以前の状況ではあったがはたして、迷いは晴れた。だからと言ってどうにかなるものでもないが(特に有は)、不安に惑わずただ全力突っ込めば……?

(後日付記:28話感想はこちら)