ALORC-Bottle-Craft-512-Logbook(Ⅱ)

AよりRへ。記録を継続する。(二冊目)

《ドラゴンの息/Dragon Breath》/『極黒のブリュンヒルデ』第17話

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空を裂き、山を穿つ閃光の脅威―――

 一度放てば隠れた店舗を吹き飛ばした勢いそのまま湖の離島浮島を抉り削り、第二射は哀れシノ嬢の右半身を消し飛ばし、山を撃つ―――人間サイズのゴジララミエル、はたまたジェノザウラーかと言わんばかりの魔砲少女(キカコ)。ただし魔法は口から出る。その辺はガッシュ的。つくづく外界に出てきたのが解せない人間兵器である……。
 これでAA+なら、未だ見ぬAAAランクとはどれだけの怪物だというのか。寧子の「随一の力」設定は何処へ行ったのか。そもそもこれほどの力が何故、何に向ける必要があるというのか……?


 射程6m以内ならダイヤモンドでも切断し、時間をも巻き戻した亡きAAランク・沙織に比べても段違いの攻撃力。むしろ過剰なくらい。Bクラスの脱走魔女達を捕殺するだけが目的ならば。カズミは彼女を外に出すほど研究所が焦っていると判断したが、あのイチジク所長がそんなタマか?
 13話、“高千穂”と会合の際に彼は「Aランクの魔女を現場に投入」と言った。これは「Aクラス」の誤記であったのか? 研究所に残るのは皆Aクラスの筈だから。それとも刺客の選出・派遣は別の部下が行い、どう考えても秘匿に向かない*1が、一度放てば必殺たるキカコを焦りから投入したのか……。

 逆にイチジク所長が敢えてキカコを、対人より対物、対城対軍向きの能力者を表に出したとすれば、その真意は人間以外……それこそ宇宙人と戦う為の試験運用なのではと妄想する。まあ相手が何者で如何な力を持つか判らない以上、『スーパーロボット大戦OG』のように戦う相手を想定した人型機動兵器を開発、という風にはいかない。だいたいキカコの能力は基本キカコ一人のものだろう……クローンでも作るのか? マリコクローンならぬキカコクローン砲撃千人隊とか。にしてもゼーレ紛いの高千穂五幹部の耳目に届きそうな試験は面従腹背を悟られかねないのではと危惧されるが、憶測に過ぎぬ。


「……わかった でも・・・悔しい・・・」


……もしキカコがシノ嬢達三人を殺す為だけに投入され、彼女達を追い立てるのにAランク魔女が別途投入されていたとすれば面倒なことになる。ただ此処まで来ると、鷹取小鳥がそうであるとはどうも思えなくなってきたのが私見。確かに彼女は滅茶苦茶怪しいし裏に何かしらの背景がありそうなのだが、刺客ならば不可解な行動が多過ぎる上―――
即死したシノ嬢の遺体からメキメキゴリゴキハーネスト直掴み*2イジェクトなどという無闇にエグい岡本倫ドSぶりに飛び出しそうとして良太に説得された寧子を、再び戦場に向かわせるために緊迫感の無い顔でシノ嬢を呼びながら死地に現れる、などという迂遠な事をする必要はまったく無い、はずだ。

 逆になにかしらの目的の下の行動であるとすれば、味方でない不審な魔女≒滅殺対象と考えて何の不思議も無いキカコの長大な砲撃射程内で声を上げて回るという自殺行為*3をしてまで、寧子をキカコと対決させる……そう、佳奈の予知ビジョンでの寧子と良太の腹部をぶち抜かれた死に様は、キカコに撃たれたシノ嬢のそれに酷似しているのだ。これがミスリードだったらもうお手上げである。
 ともかく実行犯はキカコと仮定して、寧子か良太が撃たれて死ぬ、良太が死ぬ場合は寧子が縛られている……その状況を生み出すのに小鳥と、居るとすればもう一人Aランク魔女がどう関わり、小鳥の真意は何処にあるのか……やはり疑問符ばかりが尽きない『極黒のブリュンヒルデ』。


 「そうでもない
 出来れば戦わずやり過ごしたいと思っていただけで・・・
 本当はあんな奴 余裕で倒せる」


 そして、小鳥を助ける為にキカコの前に立ち塞がる寧子。彼女を送り出した良太を非難したカズミへの、思いもよらぬ返答。事前に寧子を止める為に後ろからハングアップスイッチを押して、彼女は魔法が使えない状態だのに。
 事前に寧子が、「皆で力を合わせなきゃ生きていけない」のだから、相手が強いからと諦めて見捨てる事なんて絶対できないと言っていたが、それとは完全に異なる発言。良太が魔女と魔法の存在を知ってから短くない時間が流れたが、初見でトンでもない砲撃を放つキカコを「余裕で倒せる」などと断言できる情報を、何時の間に彼は得ていたか? ともすれば、研究所に居る「魔女を扱う専門家」に比肩する程に……今更疑うものか、私はお前を信じる!*4
 だがそうすると、問題は、その後のことなのである。もしキカコを魔法も使わずあっさり倒せたとして……許せない仲間の仇でも、話し合いが通じないとしても彼女をイジェクトするなんて寧子はできないだろう。最低でも、沙織の時のようにハングアップさせた上で縛って動きを封じる……縛る?

 んんんん!!?

*1:そもそも放課後の公園に魔女と協力者しかいない(シノの隠れていた貸ボート屋にも人の気配が無かった?)状況は不自然。公権力か魔法を用いた人払いを行ったとして、ド派手な砲撃をした後に人が来てしまうのも無理も無いが不徹底。また今回カズミが警告した、「警察にハーネストを見られたら捕まる」「発砲許可も出てる」「うなじを隠してもチェックされる」というのは……魔法の秘匿と通常人員の運用バランス上、妥当なのか否か。混成部隊は在り得ず、確保後の輸送には部隊を使う事もある、の範疇か……本当にキカコだけ派遣なら裏の意図を疑う必要があるやも。

*2:前回シリンダー本体が「ハーネスト」なのではと考えたが、今回の描写からするにスイッチ等の有る基部を含めて遺体から抜き取っているので誤りだった模様。死体からはハーネストが回収し易い「仕様」なのか、キカコの素の腕力が強化されているのか。後者でない方が嬉しいが。

*3:彼女の魔法「転位」をもってすればこれを回避できる“かもしれない”が。そもそもキカコの砲撃はレーザーなのか荷電粒子砲なのか純粋に魔力とやらを照射しているのか判然とせず、撃たれる寸前で「入れ替わり」が可能なのか……?

*4:http://ffdic.wikiwiki.jp/?%A5%BB%A5%EA%A5%D5%2F%A1%DA%BA%A3%A4%B5%A4%E9%B5%BF%A4%A6%A4%E2%A4%CE%A4%AB%A1%AA%BB%E4%A4%CF%A4%AA%A4%DE%A4%A8%A4%F2%BF%AE%A4%B8%A4%EB%A1%AA%A1%AA%A1%DB