ALORC-Bottle-Craft-512-Logbook(Ⅱ)

AよりRへ。記録を継続する。(二冊目)

《現実のストロボ/Reality Strobe》/『極黒のブリュンヒルデ』第39話

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―――君を守るために 僕は夢を見ない。

……ケーキに囲まれ幸せそうな魔眼殺しの眼鏡(サングラス)っ娘をニヨニヨ見守ってたのは夢だった(重症)。
 一人の刺客が斃れ、天文台第5の魔法使いがその存在を唯一人の脳裏に移しても、どれほど悲しみ惑いに襲われようと、“それでも明日はやってくる”。“何も無かった頃から同じように”―――




  1. 御母堂*1と朝食、ツンデレ結花と一緒に登校
  2. 寧子の人助けの手助け。学校生活パート
  3. 小五郎との面談*2天文台で皆と食事
  4. 研究所・高千穂パート。新たなる危機

 第3章の序盤中盤を圧縮したような構成は、まさしく奈波の一件の後も表面上は何も変わっていないかのようで。事件そのものが無かったように澱みなく時間が流れているようで。しかし無かった事にはならない。他ならぬ良太と、研究所の上層部にとって……その故に良太は寧子達を死なせまいとする決意を強くし、高千穂の丸眼鏡は更なる強敵を遣わすことをイチジク所長に許可するのだった……奈波が合流できるなら相応に困難も増すだろうと考えていたが、彼女の力が借りれないのに危険度が上昇した。やはり岡本倫ドS


「君が此処に居た事を」

「ずいぶん朝早いな 中学なんてすぐそこだろ」
「えっ? いいでしょ別に・・・今日は吹奏楽部の朝練なんだよ」「……そうか」
「……良太はなんでも額面通りに受け取るよね」「えっ?」
「なんでもないバス停まで一緒に歩こ」「……」

「どうしたんだ? お前の学校はバスじゃなくて この先歩いたところだろ?」
「……だってすぐ着いちゃった・・・ 短いもん・・・」
「は? 何言ってんだ? お前・・・」
「もういい!! 死ね! バカ良太!!」「……なんなんだよ」


「……ありがとう」
「……ああ」

(そこがこいつのいいところだけど・・・ でもきっと こいつはそれで身を滅ぼす……だから おれが守らないと・・・)

(……やっぱり みんなの記憶に 奈波はいない)
(でも それが奈波の望んだことだから……たとえ無理にでも・・・みんなと一緒に日常を過ごそう)*3


 第3章始めにはあと1ヶ月も無いと切られていた寿命は残り3週間。そんな状況でも、あるいはだからこそ寧子達に「普通」を体験させることに良太は拘る。それは奈波のイジェクトを防げなかった事でより強くなったかもしれず、組織に敵対意識を抱いた、と感じさせた前回の懸念は今の所気にしなくていいようだ*4
 はたして来週の期末試験に向けて毎日勉強をしようという提案に、カズミをはじめ積極的ではない。勉強し良い点を取って何になる。それは奇しくも、家庭教師してた際に結花が言っていたことと近いが、内実として大きく違う。結花は「皆と同じようにして」相対的に無価値になる事を厭うが、魔女達は後に続かない人生で無意義に終わる行為より、人助けとか子作りとか子作りとか直接的に意味を持つことをしたがる。


「お前たちは 高校生活を送ってみたいから高校へ来たんじゃないのか?」
「制服着て学校へ行くだけなんて そんなの高校生活じゃない
ただのコスプレまがいだ 勉強してこその高校生だろ」

「せやけど・・・」
「それに・・・ お前らは死なせない 薬さえ手に入れば済む話だ」
『……薬さえね・・・』

「どっちにしろ なんか見返りがないとやる気出んわ
私がクラスで2番になったら 私の言うことを何でも一つ聞いてもらおか」「はぁ?」
「なんで2番なんだよ?」

「一番はどうせあんたやろが 見たもんんを何でも覚えるようなインチキ男に勝てるかいな」
「……それで その見返りって何だよ?」
「それは私が2位になったときのお楽しみや」
『どうせHな事でしょ?』
「やっ・・・やかましいわ!! だったらなんやっちゅうねん!!」

「ホントにそうなのかよ・・・」
「……それでやる気になるなら・・・まあいいけど・・・」
「……」
「私はケーキバイキングがいいです!!」
「は!? なんでお前らに褒美を与えなくちゃいけないんだ!!」

『私は落語のCDが欲しい』「お前は試験ないだろ!!」


……これはもう皆でケーキバイキングに行くしかあるまいな!(迫真) そして良太がケーキ喰った瞬間に奈波が沸いて出るのだ!(末期) 佳奈に関してはミキサーは持ち込めないしヨーグルト系統か。個室なら一番いいがバイキングでそんな店があるんだろうか。ともあれ安定のお父さん状態である。カズミがエロい動機でモチベーション上げつつ、了承した良太を寧子がジト目で。さりげない佳奈のカミングアウトは意外……というのもゴス服からの先入観だが。「いつ」「どこで」それを好きになったかというのも気になる点。そして、これまで皆無だった小鳥の学校生活がついに描写される時が近づいてる……?
 直後の敵側パートがかつてない危機の兆しを見せつつも、そういう面は全力で注視していきますよ!(意気込み) ある寓話に曰く、目的意識のみに生きるのみにあらず。過程楽しまずば瞬く間に老いて死せり。今を、満喫し謳歌せよ。


「君が居なくなった後」

「AAAをひとり組成するのに何百人の魔女を費やしていると思う?
グラーネの回収にどれだけのコストと時間を使うつもりだ?」

「構わん」

「いいだろう スカジ*5の使用を許可する」
「しかしそれは・・・」「しかし」
「しかし これが最後だ 意味はわかるな?」

「・・・ありがとうございます」


 奈波が隠していた【操憶】の真価は本当に上層部にバレてなかった*6模様で、死後AAA相当と認定。AA+が失敗すれば次はAAA以上が来るか、もしくは別種の特殊部隊*7を動かしてくるかと考えていたが、奈波がAAAということで更に上の者、高千穂の構成員でさえ危惧するような代物が出てくるらしい。また重要なのは、魔女達の脱走事故以来、下の失敗の責めを受け続けているイチジク所長に「最後」という宣告がされたということ。もし彼が推定寧子のハーネストの中身である「グラーネ」を回収成功させるつもりなら、なりふり構わず、周囲の物的人的被害をものともしない大惨事となるかもしれず―ー―逆に成功させるつもりが無ければ、反旗を翻す時は近いということになる。

 いずれにしても、この推定第4章は良太達にしても組織側にとっても安穏・安定がこれまでになく崩れ去る可能性……それこそ、極黒の物語に絶えず影を投げかけるアレに繋がる何歩目か。明日が、未来が当たり前に来ないかもしれない世界へ―――

*1:初登場時に化粧してたのか、また包丁ブッ刺しが無いせいか、今回のスッピンとは印象が少し違う。弟への物言いは変わらず厳しいが。

*2:御母堂が「学校が終わったら来い」との電話を受け、放課後会ってきた帰りに天文台を訪れたと思われる。次回以降待て回想。「一人じゃ整理できない」奈波から貰った情報の確認込みで、はよ。

*3:今回扉絵が小鳥なのは、辛さを笑顔で隠してた彼女と、奈波のことを忘れさせられた皆といつも通りに過ごす良太を重ね合わせてのことかな。当方は記憶を消された4人が何かの切欠で奈波を思い出してくれることを期待しているが、そうならぬまでも良太が無理している事に小鳥が先んじて気づいたりしたら胸熱。

*4:今はそちらに時間を思考を傾ける余裕が無い、というのは転じて寿命問題を解決した時に表出する可能性ともとれる。

*5:MTG的に異形の使い魔「スカージ/Skirge」あるいは災厄を意味する「スカージ/Scourge」を連想するが、北欧神話的に後者に連なる意味の女巨人「スカディ(skadi)」が由来と推定。巨人なだけにベクタークラフトじみた大型生体兵器なのか(そんな代物を表に出して揉み消せるのかという疑問はある。なグラーネを回収できれば全て問題無くなるという線もあるか)、Sランク魔女ヴァルキュリアに準ずる特別な魔女……あるいは詳細不明の「ソーサリアン」か。“狩猟の女神”という属性から探査と狙撃のハイブリッド能力、というのは予断に過ぎるか。もしそうなら、予知発動しない限り即死だろうけど。

*6:イチジク所長が意図して彼女が脱走できるように計らったという想像は、ひとえに彼が高千穂に好意的でないという予断および、少ない描写から何を考えているのか予想がつかないという点からなっていた。本当に知らずに背かれたのか、単に黒服がしくじった/奈波が逃げ損ねたかは判断がつかない。

*7:「魔女を扱うプロ」らしい戦術や、ハーネストの魔法不干渉物質を用いた装備・弾頭など。