ALORC-Bottle-Craft-512-Logbook(Ⅱ)

AよりRへ。記録を継続する。(二冊目)

《最上位/Alpha Status》/『極黒のブリュンヒルデ』第61話

(前回感想はこちら)
(第1〜3話の無料閲覧はこちら)


and shun The frumious Bandersnatch!(そして努 燻り狂えるバンダースナッチの傍に寄るべからず)

前回の粗筋

                                       / ̄ ̄ ̄\             trー;ァ
                                         |.    ‐┐ |      ,, - ― - 、ノツ′
                    , -- 、                   |   ,エエZ,´ |     /     :.ヾy
                    /: : : : ヽ、                  |  ,|ノLニ`|...|     / . : : : .   .:.:ノシ!
             ,r'"⌒丶、(: : : : : : l ヽ 、               |  ノ又__ |    ,lt、_, , : : : . :.:./彡l
             /: : : : : :,/ヽ ヽ: : : : l j i tゝ-- 、.         | └‐    .|    l `゚チ,ミz。=ゥ':.:.゙}ミメ、
             (: : : : : : { f rヽ.}: : : :l { l }/: : : : ヽ        |.    |‐   . |     ト,,,〈 ぅ``゙´ ,,:,シ))`
             ヽ: : : : :.ヽt jノ l: : : :ヾてノ: : : : :,ノヽ、       |   (ナヽ  |    l ヾ竺'ァ、. :.:.ノ-f
 _,,..,,_         _,): : : : : `'ー:く,, : : : : :ヾ、: : : /〃ハ、、     \___/    _,ゞ;:ニ-― '''^''"^ヽ
'´    ` ̄ヽ.  ,r ''"´: : : : : : : : : : : / ̄`ヽ、:ヾ、{ l i {ン、ヽ`` '' −- 、、     ,, - ''"´   ` ̄ ̄ :.:.:.:.:.:.:.ヽ
 ヽ    /  ヾム、: : : : : : : : : : : :,/⌒〉 ,ィ:.:.:.\: :`ヾミ__ヽt、丶―- 、、 ヽ、-‐<、ゝ          :.:.:.:.:.:.:.:.゙i,
  ヽ;zェへ: : : : `):========ヾニ".ノミrjiァz、ヽ,: : : :::`ヽ i 、丶、__`ヽ、 `ヒ==-``''丶、   ,!   :.:.:.:.:.:.:.:丶
   }=ニ二.`−''"__,;__;,,;_,、_ィ,,_,、_,,;,_ ,;; .ニ'-−''``)t,: : : ::ノノハ) ` ` ヽ、、丶、  : : : : : : : : . . . リ: . . ,,ノ:.:.:.:.:.:.:.:.:.ヽ
  ハ`゙゙` ー`~− -------------− ― :.''' "" ´(l! ヽ,:ィ"シィf : : : : : : : ヽ、,,`` ー-- 、、 : : :/ .:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.゙i
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.:.:.:/:{,:il{!トill〉lN,fi!f{ rwリ/N fU/イ:ィ:リイリ::/ィ:ノレ;/;/;;リ   `ト、y = ソ,     ,,   ,.    / ,/'"/.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:..:.:.:.,!l!
,,ノ ゙iトil;;;;;;;;l:l;;;;;;}!;l:i;;;;;;{l;;;;;lj;;;;l!;;;lル';;;;;;;;;ツ;;;;;;;;;;;;;;;;;r'′  .:.:.:.:ヾ ン ィ }: :  .:/  ,r'" . . :./,ィ彡" .:. .:. .:. .:. .:. .:. .:. ./イ!
"  :l ゙N;;;;;;゙';;;;;;;`;;゙';;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/'"   .:.:.:.:.:,ノツ ,':  .:.:.:.:/ .:/.:.:.:.:.:/,ィシ"   :. :. :. :. :. :. :. :. :.//:ll
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 .:.:.,!:.ノ:-‐へ、;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;/   ..:.:.{ { r ノィ .:.:.:.:.:,,:ィ",ィ斗=z'、^'===三、, -‐ ''": : : : : : : :/: : : :l
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      , - 、 , ..、 ゙'ー--r'^ヽ.-‐z,__,, .. 彡シ´;;;;;;;;;;/彡'7rシ^`丶- 、;;;;;;;;;;;;;;;;;;と;; . . : : : : : : : : : : : : :/{: :  : : : :l
    / /^) /^!    ゙'‐-`二..,,.. -‐ '' "´ `` ーi'7 /'´       `` '' ー--、`ヽ::・.:: : : : : : : : : : / .l: :  : : : :l、
   ,/,,.  `ヲ' 丶ム                  / //         ,r:.:./:.:.:.:.:.了フ`7`ヾ: : : : : : ,ィ;7  l: :  : : :l:l,
.  /´  :::./ :::...,l{ |      ,, - ―===−-- 、 t, /        /.:/:.:.:.:.:.:/:/:.:.:.l . `~`ー-(_ノ'i  l: :  : : :l:ll
 /    /  ::/`j    ,r'"´       `` 丶ァ‐三ゝミt、,,___,, ィ"_ィく_,,, ィニム-r'′ ・  :    リ l  l: :  : : :l::l,
:'^  、、ノ   /`'ソ   ,イ        , ィ''"´ィッ'イ´ハ、,_``ー===   --−一''ニフ下丶、     ,l :.l  l: :  : : :l:.ト、
  ゙ ''/ ..::.../ /)  /ヽ`丶、   -‐'" ,ィシ'".:.:l l:.:.:. ` ` '' − ― -- -三二ニ=イl l:.:.:.:ヽ    ,l :l   l: :  : : l:.:ヾ
  /   :::,/ /..j  ,ハ `丶、  .:.:.:.:.:''"   :.:l l:.:.:.:.      :.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.l l:l l:.:.:.:}    ,! :l   l: :  : : l : :ヽ
ヽィ}    /.:::ソ /   {::i, :.:.   : : . .       :.ヽ ヽ:.:.:.:.      :.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.//:.l l:.:.:/    f、, tト, 、ミゝ、 、:.:.:.:::::丶
:::ヾ'  /  / /   ヾヽ :.:.:..           ::ヽ 丶:.:.:.:..     :.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.://:.:.l l:.:/     l = ミlシ= z ミ ニ ヘf:::::丶
::::::ヽ/   ,/ /     `トミ 丶:.:..           丶、丶:.:.     .:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.`:.:.:.:リ:ノ      ヾニノ"フヽrチ^iヽィ"⌒'′
::::::::リ7  ,/ /       ゙{彡、:.:.`ヾ:.:.:.: . .         `丶   . . :.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:./            `"ノヲ/シ';ノ
::::::::Y / /        `ー-``ー-ミ:.:.:.:.:.:.:....   .:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:..:.:.:.:.:.:/:.:,,r'":.:.:./            "てニテ"
::::::::::レ'゙ /                ` ` ー -- ミ , ,,__,, =ヒ二´ィニ". :-‐ '"

今回の粗筋

      / . ' , ' : .|. : :.  : : :. :   :  ゙;  :   ヽ
  __,......../: .:  .: .: : | : :  : .: :  |   ゙;  ゙;  :  : ゙:、  _
 「 -.、./:  :  .: / .| | | :  :│.| :|   ゙、 . ゙;.  : :  i'´_,.-``i
  l  ./:  :  .: | | ./|. |. : : | :| .|゙、   l   l  .: :   |´   l
  .゙、 ./:   :  : .| /| | i |,. : :. |. ト、 | `、 ゙、 ヽ.|.  : :  .|   /
   `i | .i.:  : .ji/_」|.-'l"|. :. : |、.| ``ー:ミ___゙、 ゙|  : : │  ,:'
   |||  |:  : ,rl''",rll=ミ゙、 |. : : !゙、l ,シテー-、`lヽ|  : :  |,ィi´   ( こ
   .|' |  |:  : || ,ィ'◯.。 .l:、.|、 : l. ヾ i ◯o ゙iミ、|  : : / |    ゅ
    |. | ::|  : .|/.|o    | ゙:l.゙、: .i  {O  __|゙、| : : ./  |    ?
    ゙; : |:.: : |{,.!--、.○! ゙、 ゙、 l  ゞ. ,┴j!、i| : :. /:  |
     ゙、:|゙、:、 ||`ー一''"´  ゙:、 ヾ、   ̄`ー一'| .: : / l   |
     `| j.ト.|:|. ,',',',','       ヾ、 ,',',',',',' ;' : : /:. l :  |
     .;' l ゙、` iヽ.     、         /' : : /.: l  : .|
     ./ ./~)i|、 ': |\    ==     _, '´|:.;. :. ,,<:,,:. l  :  |
    .,'r'/´ .,!、゙、゙;゙i  ヽ、      _,. '´  ||;'.,イ:i L|l、| j :  : ゙;
   ,ri´ ;'  /-'i ゙、ヾ.: :| `ー-‐ '´    .|/.i ~|  | .ト'. :   ゙;
  .// ;'   l  |」_ヽ ヽj.|.          / .j  | .|  l ヽ :.   ゙;
  ;' l  ゙、  ゙、 ヽ. ゙ヽ.ヾ          //' ,/  l  l /ー 、._ ゙、
  人\ \ \ \.| ゙ヾ:、       / '  ,/ / ,.ノ /    `ヽ、
 l   `ヽ、 `  `  ヽ、 `      /     '´ ,.,.ィ'|       ヽ

 大体こんな感じだった(嘘)。ともあれそろそろ、次週休載で次々週掲載の直前に第5巻発売ということは……表紙はアレか。保存食さんの発育中バストがアップなやつか……しかしなんだな。第6巻までの険路は舗装されているとはいえ、5巻ラストは加筆無ければまず「小鳥ショック」の筈で、となると寧子(+佳奈)は何なんだって大混乱の答えは、此処に若干示されたわけで。つくづく振り回されてきて、今後も知恵熱出るくらいブン回されるんだろうなあと。

「……はぁ・・・ここじゃ臭くなるからいや お風呂に行って」
シャワワワーシャワワワー「……」
ん? 臭いから風呂じゃなくて・・・臭くなるから? ド シ ャ
「ベッドで殺したら 汚いし匂うでしょ? 今日はこの部屋で寝るのに」

「あー!! いっけない!! これじゃ私がシャワー浴びれないじゃない!!」

―――それにしても毎週血溜まりを作りながら放浪時代のルーシーの所業を想起させなくもなく、かつ変な所で抜けてアホ可愛い、なんて思ってない、思ってないんだからな……!


忘却/Missing Power

「私たち・・・このままここにいてもいいんでしょうか・・・もう 居場所がばれてしまいました・・・
このままじゃ研究所に捕まってしまいます・・・」

「どこへ逃げるっちゅうんや? ヴァルキュリアは魔法使いの居場所がわかるんやで?
どこに逃げても・・・確実に捕まってしまうんや・・・私達はもう終わりや・・・」

「全然 そんなことはない」は?
ヴァルキュリアは鎮死剤を欲しがっていただろ?
つまり あいつも逃げ出して研究所からのコントロールを離れていると言うことだ
だから脱走者としての立場はこっちと同じだ この場所がすぐ研究所に伝わることはないだろう」

「……」「……そう言われてみればそうやな・・・」
「それじゃ私達 まだここにいていいんですね?」「ああ」
「ちょっとおれ上の温泉入ってくるよ 今日1日で色んな事が起こったから考えをまとめたいんだ……しばらく来るなよ」

(安心させるためにさっきはああは言ったけど・・・事態はそんな単純でもない・・・
ヴァルキュリア・・・8つの魔法を使うハイブリッド・・・
どんな魔法を使うのかわからないけど・・・あいつに本気を出されたら一溜まりもないことはわかる・・・
それに ヴァルキュリアは黒羽と知り合いのようだったし・・・なにより顔がそっくりだ)

「簡単に人を殺す人は嫌い」
「ははっ! よくそんなこと言えたもんね 寧子あなた今まで・・・」
『 言 う な !! 』
「昔の仲間に免じて あんたの生意気を許してあげる」

「間違いない 黒羽は・・・」
「寧子がどうしたんや?」「カズミ!?」「よ」
「だからしばらく来るなっていっただろ!」
「ここ混浴なんやし あんたに仕切られる覚えはないわ」

「さっき 殺されると思ってビビっっておしっこ漏らしてもたんや だから早よ風呂に入りたくてな」「えっ?」
「……冗談やからな」「わ・・・わかってるよ!」

「……カズミも知ってるんだろ?」「なにが?」
「寧子の 過去のこと」
「……なんで私が知ってると思うんや?」
「お前が前に話していたじゃないか」

「うちらの仲間にも Aクラス以上の奴がおるけどな」

「……ホンマに つまらんことまでよう覚えとるな・・・」
「あれは・・・黒羽のことだったんだな?」
「………そういう話や もちろんうちらには噂話しか伝わってけぇへん
せやけど・・・寧子も「ヴァルキュリア」と呼ばれる・・・Sクラスの魔法使いやったみたいなんや
さっきの真子よりも強かったらしいで」
「えっ!?」
「最強の破壊魔法を持ってたんや けど記憶と一緒に力も無くしてもうたけどな
それで他のBクラスと同じように処分されそうになって・・・」

「……さっきの真子ってやつと同じように 人を殺していたと言うことか?」
「さぁな……寧子が何をしてたかまでは知らん うちらとはクラスが違い過ぎるからな けど人殺しをしててもおかしくない
だから佳奈は 寧子がヴァルキュリアだったことを寧子には内緒にしてるし・・・私も口止めされたんや」

「黒羽は・・・違う」「は?」

「たとえ記憶を失っても 黒羽は黒羽だ 人間が変わるわけじゃない
あいつが人殺しなんて 絶対するわけがない」

「…… わたしも そう思うよ」「……ああ」

「それじゃ 先に上がってる」「なんや ずいぶん早いな」
「……出口の前にいられると出にくいんだけど・・・」「お気になさらずに」
「そのまま出てくださって構いませんよ」
「なんで急に標準語なんだよ・・・」

……ひとつ違えば全滅していた緊張から良太と離れたくなかったか、状況的に寧子(+佳奈)と同じ場所に居るのを避けたか、判断要素を求めるリーダーに情報提供にいったのか、はたまた単純にアプローチかけにいったか。思えば混浴は二度目で、一度目の時より色々な感情が育っている。しかして会話内容、頭の中は寧子のことで一杯ときた。不憫な……不安に思いつつ賛同した気遣いが優しい。最後は耳年増エロ娘成分でオチたが、深刻な空気を和らげたかったか……まあ直後(今週次週併せ)に良太の悩み所が増えてしまうわけだが。

 閑話休題。「小鳥ショック」を受けて混乱したメインヒロインの立ち位置、順当にそうだろうと思われていた「Aクラス以上の仲間」でもないかもと、あるいは佳奈がそうなのかもと……となると茜女史が端末と受精卵を託し「世界を救えるのはお前だけ」と言い遺したのは何故か……結局のところは、「順当」をそう外れていなかったという話。1107番の件は遠大なミスリードであったが、こちらはそれ込みで王道正道から逸れているように「見せかけていた」……なんとも読者に“読ませない”“読み切らせない”カモフラージュの巧みであることよ。そして佳奈の説明なり過去語りなりが入るかと思ったが、今回はカズミ……「普通のBクラス魔女」が知り得る範囲での情報開陳。

 思えば仲間内では【操網】も相俟って“佳奈と並んで”情報通と受け取れることは多かったが……比較対象が悪かったのだ。過去何者であったとしても記憶が磨耗している颯爽登場さん、背景が若干以上不透明とはいえ物識りから程遠い保存食さんと比べたら「普通」は随分上の事情通にもなるし、事によっては境遇上佳奈が知り得ずカズミが知ってる情報もあるかもしれない―――ただ「核心」については、ダントツでマスコットさんが近しい所に居ると見た。番外で故・黒服から機密を盗み視た良太の脳内彼女さんも居るが、多分に及ぶまい。おそらくは「セクションが違う」のだ……【グラーネ】と、【ヴァルキュリア】とでは? そういや土屋女史はどうしているだろうか。予備知識の足りない新人(外出不可期間中)が何かをどうにかできる状況では全くなさげだが。

「村上さん!! これ見てください!!」
霧ヶ峰で噴火、死者・行方不明者100人以上”*1
「……まさか・・・これがヴァルキュリアの仕業だって言うのか?」

『……間違いないわ』
「……キカコも・・・湖の上野の小島は破壊していたけれど・・・これは・・・レベルが違う・・・」
『それでもまだ 全然本気じゃないわ』
「……とても信じられない」『本当よ』
「そういう意味じゃない」『えっ?』
(黒羽は本当に・・・こいつよりも強い力を持っていたと言うのか?)

 ヴィンガルフないし高千穂が計画・大願のために用意した決戦存在、その対抗存在。もう一人の、最強の【ヴァルキュリア】であった少女に希望を託す。仮に事故の段階で死ぬつもりは無かったとして、何も覚えていない寧子に諸々を預けてしまったのは他に手が無い次善であったのかもしれない。されど「研究所の計画を止める為にはヴァルキュリアを倒すしかない」「今の寧子には真子は殺せない」「ヴァルキュリアは人類を何度も滅ぼす程の力を持つ」*2……混ぜて交ぜて見えるような見えないような絵図は、非常に酷なものだと感じる。たとえそうする以外に、人類が生き残る道がないとしても?

 寧子の安穏幸福を第一とするゴス娘さんが、ロジックでなく寧子を信じたい良太に過去を話してくれるのは、もしくは良太から尋ねるのは何時になるやら。そして良太は、きっと優しくない真実を受け容れられるだろうか。「記憶を失っても黒羽は黒羽だ」、確かに奈波に記憶操作を受けても黒羽寧子という人格に変わりはなかったように見えた。けれど「記憶を失う前の黒羽寧子」は、彼が知る黒羽寧子ではないのかもしれない……そもそも黒羽寧子とは一体誰なのか、良太視点でも読者視点でも定かでないこの霧中、あるいは予防線。

「信じる事と結果は別のものです。 結果が思い通りにならなかったといって
それは 信じた人の裏切りでないでしょう?」

来訪者/Stray Survivor

「全く・・・なんでこの県には天文台が8つもあるんだ・・・
ここも関係ない展望台だったら・・・ちょっと厳しいなぁ・・・」

「うわぉ 間違いなくここな予感がする あの……すみません・・・」

―――友人だった娘を鎮死剤と引き換えに見捨てなかったあたり、悪い子ではないと(むしろサバイバーの割に生き汚くないとさえ)思う。けどなんとはなしに、非友好的な態度で薬を奪取しにくるのではと先入観があった……だからこそ一見そういう展開にならなさげな幕切りに、かえって次々週への不安が募る。否さ、極黒が始まって以来不安が無いことなんて無かった(こう書くのも何度目になるだろう?)し、攻撃的にこられたらこられたで困っただろうことは間違いないが。なんと表現したものだろうか、この気持ち。そう、多分予防線を張っておきたいのだ。奈波ときて、瑞花ときて、その所為もあるやも。

 初菜という魔女が「敵」であれば、魔女の不幸悲哀を一面象徴せんが如き少女が外道に堕ちていれば、その為に「身内」の命を削る事も、その性質上辿り易かろう経過・結末に心痛めることも無かろうと? 些か良くない傾向である。痛みに怯え、希望を信じ難く、新参他者を拒み、世界を狭めている。良太に関し、信じたい気持ちと現実を直視しないのとは別だなどと考えつつ、この様。
 嗚呼まったくもって考えるだに難儀な事でテンション変。岡本倫ドSが彼女らにも読者にもそう優しく易しく宜しくしてくれるわけも無いっていうのに。信じる事と結果は別、そりゃまあその通り。だからこれは、ただの願望―――どうか寧子たち「魔法使い」の無理が道理を蹴っ飛ばして、この捻じ曲がった思い込みの因果を破壊してくれることを。

*1:前々回、最早隠蔽不可能になるまでがイチジクの所長の狙いだとか書いてしまったが、普通に自然災害扱いで報道されてる件。よく考えてみれば、真子の所業の証拠や証言者は反物質炸裂で山ごと消し飛んだわけで、たといARMS的に核より危険な悪影響が出たとしてもそこから反物質ひいては魔女の存在に辿り着けるのは事情を知ってる者だけだろう。監視役の死体と中の人なども、結果的に証拠は隠滅されている。所長は一体何がしたかったのか、今現在どうなっているのか。はたまた現状は小五郎からみてどういうものなのか……?

*2:目に見えて危険な真子の反物質生成よりも尚、強力であるらしい寧子の「最強の破壊魔法」……世界を1話冒頭の荒廃に至らしめるのはいずれか。あるいはいずれが暴発しても手段過程が違うだけで人類は終わるのかもしれない? 良太に刺し殺される一人と、その背後に立つ一人は、ちょっとの拍子で入れ替わってしまうのか?