ALORC-Bottle-Craft-512-Logbook（Ⅱ）

ＡよりＲへ。記録を継続する。（二冊目）

《頭蓋骨酒の大鍋/Skullmead Cauldron》／岡本倫『パラレルパラダイス』第２３話

感想





（前回の感想はこちら）　（感想記録モーメント）　（eヤングマガジンにて前回無料）

パラレルパラダイス(1): ヤンマガKCSP

パラレルパラダイス(1) 特装版: プレミアムKC　（10Pの描き下ろし漫画、設定資料などを収録した36ページの小冊子が付属）←電子版もあるでよ

異世界の救世主。 : 続・黒のノエル　／　パラレルパラダイス第一巻収録エピソード感想まとめ

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―――いくら彼女ら異世界の娘たちにとって崩月が当たり前の出来事であるとしても、近しい同僚の死を目の当たりにして何も感じないわけもなく、ちょうど男性がいることも相まって種の保存本能が云々……とするにもあんまり落差激しい。まあユウリが亡くなった直ぐ後にもミサキ、次いでモモが餌食になったものだが。ともあれ、

「もう この街を出るの？」
「ああ」

「リールって街に 【嫉妬深い神】の祠があるんだろ？　【嫉妬深い神】の情報を得るには　まずそこへ行くしかない」
「……　一人で？」
「そりゃそうだ　お前達はこの街を守らなくちゃいけないだろ　ただでさえ　クインテットが一人減ったんだ」

「危険な目に遭うのは　おれだけでいい」
「………」

「……おれがここで交尾しても　救える数なんてたかが知れてる この世界を異常たらしめてる 大元を絶たないとダメだ」
「……とても　危険だけどね」

「３千年もの間　誰も倒せず　その存在すら忘れ去られていた神を倒すなんて」
「そこはあんまり心配してない」

「この世界には３千年も男がいなかった　だから男の存在に対処が出来てないんだ
　男にとってはこの世界は　相当都合良く出来てる
　お前たちの天敵のカルもおれからは逃げ出すし　女の子は触れるだけで発情するしな」

「だから　おれが行かなくちゃいけないんだ　【嫉妬深い神】もサクッと倒して戻ってくるよ」
「………そう 簡単にいけばいいけど……」

　陽太が完全な一人旅に出るというのは割と予想外だった。死期を悟ったハルが命の使い道として同行するとか、ルーミかリリアあたりが我慢できずついてくるとかいう予想はあったし、後者の可能性はまだあるが。あと「歩きで三日の距離」をそのまま徒歩で行くつもりなのも*1。おハルさんが世話してたユニコーンとかの資料集素材ががが。第２巻も特装版アリで当日ダッシュ必至なんだけど、前巻で提示された分の情報も拾い切れないくらいなのに何が来るんだろう（ボブ訝

……資料といえば、ミースにある図書室にだって大量の蔵書があるのに、そこんとこを調べずにいくのか。住人が本の文字を読めないとはいえ（そういえばシーザー語の書き取りはどうなってんだろう）、街で一番物知りで然るべきクインテット（実質的長老衆）が知らないなら調べてもしょうがないと思ったか……いやジーニアスが南の祠という手掛かりを提示したからそっちを優先させただけかな。いずれはあの書物群を掘り下げてほしいと思うが。
―――というより、早速「一回休み」（ダブルミーニング）なのはおいといても予定通りに事が運ぶなら、陽太は「神殺し」を成し遂げるまでミースには戻ってこないことになるんだが。ヒロインの出番的な意味でも街の安全的な意味でも大丈夫かそれ。エロゲーとか場合によったら何十人と攻略ヒロインが居る場合もあるし、陽太視点で方々の街を巡って情報を探しながらあちこちの少女達をニュルニュルにしていくのもそれはそれでアリかと思うが。いやさ今回あと前回の物言いからするに、よほど崩月が近づいてる娘とか物理的に敵対されている状況でもない限り、陽太の方から積極的に発情させ交尾しようとすることはないかもしれない……あくまで「かもしれない」。ここまでのTHE SUNは一部のぞき言行が不一致というか人格性格が変容気味なとこあるから。

（なんて素晴らしい……　三千年ぶりに現れた男を独占出来るなんて……
　こんなチャンス　もう数世紀はない……）

「全く……　男だってこと以外に取り柄のない こんな男のどこがいいのかしら」

「男に自我なんて必要ないのに　面倒なこと言わずに交尾だけしてればいいのよ」ｸﾞﾋﾞｸﾞﾋﾞ
「お前ホントに道具としておれを見てるな」

　よしんば本当にさっさと【嫉妬深い神】を倒して呪いを解くことが「できてしまった」として、その後に巻き起こるのは人間と人間の、「男」を巡っての争いではないのかという疑念が頭を掠める。今のところ出会ったばかりの頃の怪しさはなりを潜め、むしろメンバーの中で一番ツンデレっぽい気配を漂わせているように見えなくもないモモさんはその象徴的存在である（今回まだ発情してないけどきっと巻き込まれるよねえ）。世界の秘密、神の真実はおろか、傍にいる少女達のバックボーンについてすらも陽太はよく知らないのだ。まー今のTHE SUNにしてみれば「なによりも寿命の呪いを解くことが先決だ」、あるいは後々「生き続けなければ争うことだってできない」てな按配かもしれないけれど……って、そうだ。今のヨータさんはまがりなりにも「男であることを隠すために」女装して謎のアメで声も変えてるんだけど、一人旅なんかしたら「男の存在」があちこちの街に伝播する可能性がある。ミサキも初対面では「カルと同じ声」に反応したけど、他の街の娘らの中にはもっと剣呑に「男」≒カルへの嫌悪憎悪やモモ以上に彼を利用する企みを抱くものが居たっておかしくはない……まあ今そんなことを心配したところで、差し当たって直面してるのは5Pしっぽりで出発が遅れそうという話なんですが（だいたいそのような言い方で締められてしまう万能説



―――ところでところで、前回記事が「感想」の体をなしていない分もあれこれ思いついた事柄について書き記しておかねばならないのだった。

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「戦い方は知っているか？」
「戦い方ってなんだ？」

「モンスターにはそれぞれ弱点がある　ワーウルフなら喉仏だ」

「そこを貫けば一撃で消えるが肉が残らない　だから心臓か頭を狙え」

「カルに殺されると　地獄へ行くわ　体が消えることもない　でも崩月での死は体が消える
　死んでも天国へ行って　また生まれ変われるってことなのよ」

　前作『極黒のブリュンヒルデ』でおなじみ（というほど頻繁ではないけど要所要所であった）肉体が溶けて死ぬ女子。加えて本作の「モンスター」に特有の光に解けていくエフェクト。弱点云々へ言及された際も「人間にも【弱点】があるのか？」という疑問を感じたが、前回２２話の描写を見て正直こんがらかってきた。この異世界において「命」とは、「人間」とは何なのか？
　カルに毒殺されるのは「弱点を突かれた」ことにはならず、崩月による死は遺体が残らない。地獄と天国云々はこの過酷な現実を生き続けた女性達が心理的防衛のために考え出した教えのように思う（一方で「生まれ変わり」が本当にないのか、この謎ファンタジックを見た後だと言い切れなくなる）が……「成人を迎える前に崩月で死ぬ」のと「女の天敵であるカル」は“出所”が違うのではないかという考えが強まってきたように思う。「カルもまた王城から出てきているのではないか」というのは前々からクラスタ界隈でちらほら言われてた予想のひとつなのだが、今もってそこらを補強する情報は出てきてない。にも関わらずそうではないかという懸念が強まる。単に【嫉妬深い神】が寿命の呪いとカルの両面から少女達を死に至らしめようと―――仮に「苦しめて殺そう」とか「滅ぼそう」とかいう意図にしても迂遠じゃないか。まして三千年と続いても人類は存続しているし。いや本当どうやって存続してるんだか知らないが。これが『イコノクラスト！』なら討たれた神の最後の呪詛に基づき、半自動的に人々を敢えて苦しめ続けるためにとかいう話になるんだけども。同時に神の遺した厄災を打倒すればメデタシメデタシではなかったのだけども。さて本作は、どういう風になるやら。


　現状、世界はわからないことだらけである。今、其処に生きている娘達ですら（知識が伝承されておらず）知らないことばかりである。長生き？してるらしい地縛神ジーニアスですら全知全能とは言えない。ことによると嫉妬深い神すらもそうであろうし、王城もきっとそう。あとはサユリさんのような推定亜人種族……こっちは力や知恵の多寡に関係なく警戒すべきではないかと脳内で信号が。いやさ、世界を正すために呪いを解くなんて壮大な目的で旅立つ少年を害するに、必ずしも大げさな力や何やらは必要ない。誰しもが、どんな理由でだって、厄介事に繋がり得る。備えよう。

　そして改めて合掌せり。誇り高き女騎士に冥福あらんことを。あるいは、いつかまた、逢えますように。

*1:父親に言われて体を鍛えていたとはいえ、アウトドア長距離移動で体力戦闘力を不安視しないのは極黒の良太にはなかった要素だなとも。ただ逆に言うと若干脳筋の疑いもある。また現状で彼が得られる情報からすると無理もないが、ちと楽観的というかまだ甘く見ているというか……あえてそう振る舞ってるだけとも考えられるが。