ALORC-Bottle-Craft-512-Logbook(Ⅱ)

AよりRへ。記録を継続する。(二冊目)

《サルカンの封印破り/Sarkhan's Unsealing》/岡本倫『パラレルパラダイス』第111・112話






(前回の感想はこちら) (感想記録モーメント2

迫り来る危機。: 続・黒のノエル

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―――立ち位置経過によって、同じものを見ても同じようには見えていないという話。ナクタのような近衛に教育されるまでもなく大多数の現生人類にとって男性≒カル(天敵)であるように、そうでなくても現在の王国秩序を乱す存在と見なされているように、既出ガーディアン中もっとも「過去」の情報を蓄えてきたサンドリオ組にとって遺跡の底で封印された少女は自分たちを呪う邪神にしか見えない(同時に陽太には生き別れの幼馴染にしか見えない)。ある意味まだガリアを倒す前、眠る仁科を陽太が目の当たりにした瞬間からこの擦れ違いは確定していたかもしれない。
 アマネの解呪やらリリア急報→ミース行きやらで慌ただしかったこともあるが、サンドリオ組は(またルーミも)あの時点で陽太に突っ込んだことを聞いたりしていない。彼女らがどれくらい意識していたかはわからないし、3人で合意したのはついさっきだとしても、陽太が警戒する……あるいは仁科を起こすこと自体を保留する可能性を減らそうとしていたとも見れる。それだけサンドリオ住人にとって積年の悲願は重い(ましてガリアに何代と謀られていた)……そして崩月への恐れが大きいということ。シーザー王国内の宗教観によれば「天国に行ける」らしいが、やはり本気で信じられてはいないしましてサンドリオでは。


 はたして一刀一閃にて首が撥ね飛ばされてしまった訳であるが、その結果どうなったかは既に刊行済みである。ただそれまでに当方が何を考えていたかというと、「陽太がカイ=ケートスに一度殺されてから復活した時、その過程を現場で誰も見てない」ってこと。人魚が呼んだ嵐で遭難船から投げ出されて漂着→発見された時点で死亡確認、の時は見た目大きな外傷は無かったように思うが……そもそもあの時サンドリオ組(当時は存命エリザ含む)は陽太(男)が死んでも一定回数復活できるなんて知らないだろうにどうして速攻監禁→目覚める前から交尾漬けコースだったんだろか。意識が戻る前から死んだはずなのに蘇生したのを確認したから解呪に使えるぜヒャッホイ、でもないと死体とでも交尾できるなら儲けもの程度の取扱に感じるが。

 閑話休題。つまり現在そこにある仁科の肉体は、「現代の陽太(復活する度重傷)と未来地球の陽太(もう蘇生できない)が別に存在する」ような状態にあるか否か。別の可能性としては「テルテル坊主リリアに陽太ともども投げ落とされた現代の肉体がコールドスリープされて三千年以上保存されていた」があるか―――これを逆に考えて、シーザー王国に現れた陽太とは別に、現代でボロボロになった陽太の肉体……普通とっくに死亡しているだろうけど、これも仁科同様に保存されていたら「太多陽太が二人存在している」こともありうるか?―――もし仁科の意識が陽太と同じようにシーザー王国で実体を得ているとすれば、それはサンドリオの遺跡で眠っていた(推定三千年前の何某かを経験している)〈嫉妬深い神〉と目されている方なのか……それともどこか別の場所に「もう一人の仁科」が居るのだろうか。カイとの戦い前後は陽太復活と時同じくして「異世界」のどこかに放り出されたのではと思っていたし。憶測に過ぎないにしろ、なんとも複雑でややこしい平常運転だったとさ。