ALORC-Bottle-Craft-512-Logbook(Ⅱ)

AよりRへ。記録を継続する。(二冊目)

山田玲司『美大受験戦記 アリエネ』第26話――《立つか転ぶか/Stand or Fall》


有「好きな漫画家を5人教えてください!!」

(第25話の感想はこちら)
 第26話「モデルが美人すぎます」(5月7日発売ビッグコミックスピリッツ掲載)。二週間ぶりで何気に扉絵が例の“名画オマージュシリーズ”じゃなかったり、歌川有が実に歌川有()だったり。個人授業の成果が早速出るかと思ったら、そんなことはなかった。


 当日まで何を描かされるかわからないもの、という美大受験に即して行われることになったコンクール。青木先生がどこぞから連れてきたモデルさんを描く人物画。ポーズと休憩を繰り返し、昼までに構図を決めて形を取る、ということで石膏デッサン同様に各人ポジションを早々に……しかしその中に東山光河の姿は無い。
 夢に気を遣った? そりゃあないな。勝負を受けると彼は言った。ならば、「普通に描けば1位確実」の特待生が自ら己に枷を嵌めたか。期間は二日だのに、一日で全部描き上げるつもりか。受験を想定した状況に自分を追い込んで。まだ、想像に過ぎないが。

 美人モデル目当ての小磯が近くに陣取ろうとして神田川地雷(フラグ)を踏む一方で、有の隣に夢がイーゼルを立てる。切り替えて自分の世界に入った彼女に負けないように……あの夜教わったことを活かそうと……モデルを正面からガン見して上の台詞が飛び出し、弥生が吹いた。確かに彼女に教わった事ではあるが、技巧的でない所から入るのが実にらしいというか、短期間で変わる訳が無いというか。
 モデルに話しかけるのは基本タブーとのことで、小磯に引っ張られて青木先生にもナンパ扱い。そしてさらっと、

「今回のコンクールの順位でお前達は……分別(・・)されるからな…」


 結果を出さないときついことになるという宣告。場合によっては基礎クラス行きか別の進路を薦められ、あるいは多浪……有には選べない選択肢。ただ一度脱落したように見えても、「基礎クラス」というのは悪くないというか有に必要じゃないかと思われるのだが。
 現時点で上位を前回名の挙がった強敵たちが占める一方、有は15位以下。浪人生抜きの講習の中でさえ上位に入れないなら、とても合格なんてできないという厳しい現実への直面。想い人を心配してる余裕など本当は無く、この状況をどう凌ぐか。本当に凌げるのか。凌げなければどうなるのか……今この場に居なくとも、光河に勝つなど話にもならない……奇跡だの閃きだので引っ繰り返せない、完全な敗北を喫する時が迫っているのだろうか。そこからどうすべきかを、本当によく考える為に。


 はたして次回、巻頭カラー。見せ場、魅せ場? 一体、誰の?

(後日付記:27話感想はこちら)