ALORC-Bottle-Craft-512-Logbook(Ⅱ)

AよりRへ。記録を継続する。(二冊目)

『美大受験戦記 アリエネ』第31話――《膨らむ勇気/Swell of Courage》


夢「ゴメンじゃないのだ、それでいーのだ」

(第30話の感想はこちら)
 第31話「補色の二人」(6月11日発売ビッグコミックスピリッツ掲載)。前回の補填的エピソードをもって、ようやく一日目終了。次回からコンクール最終日へ……。


(あらすじ)葛飾夢の伝えたいこと。すわ告白かといつもの妄想トワイライトゾーンにトリップする歌川有。実際は「補色混ぜるべからず」という話。並べば互いを引き立たせるが、混ぜるのはタブーなのだと。
他方、予備校アトリエに忘れ物をした戸谷隼人は月岡弥生が有の絵の具をひとつ持ち去るのを目撃。
また夢の言葉で自分の頑張りが皆に、夢に勇気を与えるという実感を得た有は、折れずに全力で進むと約束。その日は名前で呼び合い別れ、かくて最終日へと(あらすじ終了)


 補色とは「色環図」の反対同士。並ぶと一番目立って両方輝く最強コンビ。しかし混ぜると色がくすんで汚くなる。前回狩野先生が青木先生に言っていたように、知識の無い有は普通にそれを混ぜて使っていたのだった。夢はそれに気づき声をかけようとしたが、絵に没頭する有には聴こえなかった模様。有はそれを謝るが、夢はそれでいいのだと笑った……。

「ねえ・・・そのまま全力で進んでね」

 今回トップ3に入れなければ予備校に残れない夢を事ある毎に気にする有に、自分を抜いてしまうかもなんて考えないでほしいと彼女は言う。技術的にも知識的にも、断然彼女の方が上の筈であろうに、葛飾夢は歌川有に……自分がまだ持ってないものを見ているのかもしれなかった。

「抜かれたら悔しいけど・・・
でも・・・その時はあたしももっともっと……頑張れると思うから・・・」

 それで東山光河を抜いたりしたら、アトリエ全員が勇気を貰ってしまうよ、と。
 それは前回の青木先生の助言を、有にとって最も効果的に実感せしめる言葉。彼女のために自分ができる事を、彼女にそうしてほしいと望まれること。「よろしい、本懐である」(by銀英伝)。

 夢から見た有の姿。いつも有は有でイッパイイッパイかつ妄想まみれで頭一杯だけれど―――油画を何も知らないのに、本気で特待生に勝とうとガンガン消すしガンガン試すし一人で鬼講師にアドバイスを貰いに行くし……そんな姿が……

「とにかくがむしゃらで・・・かっこいいよ」

 いつか、自分は夢にちゃんとアプローチできているか? と疑問に思う事があった。そのままでは彼女が速水教授なり東山光河なり、自分以外の男のものになってしまうと焦り、告白を急いてこのコンクールの結果に賭けようとした。知識も技術も追いつかないのに無茶だと思われ……しかしその無茶に挑む様を、彼女はちゃんと見てくれていた。それがアピールになっていたのだ。
 まあ、速水教授より好感度稼げてるかといえば「無い」だろうが、何度となく飛躍した成就の妄想よりも、ずっと確かな一歩進展と言えよう。当方としては弥生押しだけれども。彼女は一体何をしようとしてるんだろうねえ……?


 ともあれかくまれ、期限二日間の初日終わり、次回からは二日目最終日となる。まず間違いなく、一日で全てを終わらせるべく東山光河はやってくると推測されるが……既に芸大レベルの彼に有は、そして夢はどれだけ食らいつけるか。他のライバルを押しのけてトップ3に入ることができるのか。
 芸術に答えなくとも、美大には試験あり、そこでは技術が問われる。その前哨、の前に篩いにかける。浪人生の居ない現役生のみの争い。
 その過程で得られるもの、そして結果が示すもの。いざやいざ、また次回以降。

(後日付記:32話感想はこちら)