ALORC-Bottle-Craft-512-Logbook(Ⅱ)

AよりRへ。記録を継続する。(二冊目)

《結束/Solidarity》/『極黒のブリュンヒルデ』第28話

(前回感想はこちら)
(第1〜3話の無料閲覧はこちら)

「なんやのもう… おいしいとこ全部寧子に持っていかれたわ…」

―――思い出されるのは、『エルフェンリート』第1巻で坂東さんを含む特殊部隊SATをルーシーが圧倒する場面。破壊力でも経戦能力でも流石にルーシー程でないし相手も拳銃一丁装備の警官3人だが、「魔女」が持つ「魔法」という異能が(Bクラスとして処分される筈だった者でさえ)如何に尋常ならざるものかを改めて示した。
 まあ寧子が単なるBクラス魔女かというと疑わしいが……小五郎に魔法を信じさせた時もそうだったが、目眩ましと同時に良太の手錠を破壊したり、拳銃の一斉射を完全に防いだり*1随分精密かつ高速で破壊が行えるらしい。まあ銃を破壊した方が消耗も危険度も少ないのに(撤退を促す為かもしれんが)「撃てばいい」と挑発して防ぎ、多分にハングアップを早めたあたりは抜かったな。魔法が使えなければ寧子は二の腕プニプニの女の子に過ぎず、臆さず土煙を抜けてきた「課長さん」に裏拳一発だったし。


「銃が使えないなら・・・腕力で勝負するだけだ・・・
警察なめんなよ・・・」

「こんな事もあろうかと!! 自ら腕を木に縛り付け!!
林の中で待機していたのであります!!」

「わ・・・わかったからどいてくれ・・・」


 しかし「課長さん」……キカコと同じ様に馬乗りになった傍から【転位】で入れ替わり拘束状態。【破撃】も爆弾で攻撃とか解釈できる域を超えた現象を目撃させられ、部下共々に命運が心配される。彼自身に組織的裏はなさそうで、「首の後ろにリング付きと同行者は指名手配のテロリストで殺害命令」に従っただけと思われる。責任は自分が取ると撃ったあたり気合の入った中年……顔は角沢長官似だが。また彼と部下は良太の容姿を上に伝え得るので、刺客が介入してきて目撃者殲滅とかならなかった以上は彼らが消されるか否かに関わらず結構ヤバイとも。


「あなたが昨日・・・ 私たちと乳専楽勝って言ってくれたのは嬉しかった」
「一蓮托生だ」「……」
「そう言ったでしょ? でも・・・ 私たちだって一緒に頑張りたい」

「あなたは私の力になってくれる でも私たちだってあなたの力になれるわ
力を合わせた方が きっともっと強い」

「おれはおれなりにお前たちを心配してるんだ
追われてるお前たちを矢面に立たせるようなことはしたくない
でも本当に必要なことは・・・ お前たちを心配することじゃなく
信用することなのかもしれない」


 「魔法使いのお守りは本当に疲れる……」と言った第2章に続いて、第3章は魔女たちの保護者としての奔走し悩む良太の姿が主だった。そんな彼に仲間を頼れ! と思った事は何度もあったが、彼女らに平穏を謳歌してほしいと望む彼の意志は固かった。けれどそんな良太をのんびり待ってられないのが「魔法使い」。手がかり求め単身赴いた良太は両手が背中に回る目に遭い、寧子達に助けられなければどうなっていたか。前回、本章はカズミが良太を撃墜する為の序幕と考えたが、同時に改めて良太と魔女達が背中を預けあう「仲間」になる話とも。小鳥さん久々の活躍でドヤ顔ウザかわいい。


「大丈夫だ 手がかりはまだ少しだけ残っている」


 そして良太の口から「大丈夫だ」が出た―――! まあ壁面のドイツ語にしても、端末のパスワードにしても、か細い頼りには違いないが……希望はまだ生きている。その先はさっぱり想像できないが、今、少しだけ楽観的な気分だ。これで大丈夫じゃなかったら致命的かもしれんが、岡本倫ドSを承知で尚、何かを信じている。


「……くっくっくっ・・・
私は大変な物を手に入れたかもしれないぞ・・・」
「かつて無いほどに・・・ 私の知的好奇心が高まっている・・・」

「あの細胞・・・ 本当に宇宙人の受精卵だ・・・」


 一方で研究室の小五郎。誰ぞから連絡……多分に相手からすれば価値が不明確な情報だが、良太から手がかりを得た小五郎にとっては重要な……を受けて、確信に至る。比喩的な意味でなく、宇宙人。本当に、受精卵。その事実が意味するところは、何か?
 どうにも頭が回らないなあ……任せた天才!() 初見ではアル・ボーエン(成長後)を感じたが、キース・ホワイト(諸悪の根源)臭がしてきてちと不安だが。とりあえずその意気で鎮死剤生成を早めてくりゃれ!

ところで

 前回ラストの登場時、これまでの伏線から対抗組織所属クローンの疑いが立ち昇ったネコさんは本人だったし、小鳥すら例のバイザーを被っていた。カズミの勝負服といい廃村のコスプレ店には本当に色々残ってて、天文台に居を移すにあたり相当量を持ち出していたということか。つまりあのバイザーは市販品で、何時か何処かの特撮ヒーローの使うアイテムだったのかも。『ZETMAN』かい。『バンブーブレード』の『ブレードブレイバー』みたいな作中作とかスピンオフしないものかな……。

 今更ながら思うに、『極黒』で怪しい伏線はバンバン張られているが、それが顕在化するのはまだまだ先の話なのかもしれない。これまで当て推量が散々外れ倒した経験上。まあそれでも想像妄想を巡らせずにはいられないからこんなに感想記事を書き連ねているのだが。


 また今回、良太を救った佳奈の予知。一瞬『村上が死ぬ』とウソの予知を告げて寧子たちを送り出す、良太のことを心配(する寧子を心配)してか、天文台に残っては寧子を殺しにきた刺客に殺される可能性があるので逃がした……とか想像したのだけれど、「警官から逃げようとして撃たれ当たり所悪く死ぬ」と的確な予言なのでそれは無いと見た。
 当たり所は悪かったか即死ではなく、死ぬまでに予知射程内に運び込まれて死ぬ……それだと撃たれる場面が視れない。となると、だ。小鳥を疑っていた折に聞いた「そんなに遠くまでは予知できない」という条件の基準値が中軽井沢まで届くほど長い。あるいは研究所にはもっと遠く、もっと先の事まで予知できる同輩が居て彼女の中では「それほど遠く」まで視れないと思っているが、実は連峰を越えた向こうでも問題が無かった。もしくは今現在、天文台にはカズミだけが残っていて(アワワワ)佳奈も結構近くまで運ばれてきている。予知は良太を追って中軽井沢に来る途中で発動し、安全な場所に佳奈を置いて寧子小鳥が良太救出に赴いた―――ううむ、いまいち捉えきれない。
 ただ「範囲内全ての死を予知できる訳ではない」と言いつつ寧子に、良太に関わる予知を何度も視ている以上は、いつか考察したように「焦点を絞る」ことができるのは間違いないように思われる。その辺の制御ができず完全ランダム発動だと逆に不可解だし、佳奈も良太を助けたいと考えてくれたと思えばなんともほんわか。今回顔出す機会なかったしな。通信妨害だけのカズミも2コマあんのに……早く元気に動き回る姿が、見たい、見たい……? 見たいに決まってるだろうがっ! フラグが怖くて岡本倫が読めるか!(暴言)

*1:ずっと「物を壊す訓練」をしていたという研究所時代では、『エルフェン』過去編で描写されたような投げ込まれる鉄球をベクターで逸らす訓練に近いカリキュラムもあったのかもしれない。銃を恐れる様子もなかったし。