ALORC-Bottle-Craft-512-Logbook(Ⅱ)

AよりRへ。記録を継続する。(二冊目)

《感染性の恐怖/Infectious Horror》/『極黒のブリュンヒルデ』第40話

(前回感想はこちら)
(第1〜3話の無料閲覧はこちら)

ワタシハ....ナニカサレタヨウダ

「小五郎は・・・あの時の記憶を失ってないんだろ?」
「そうだな 認めよう
どこかから逃げ出した実験台の少女が抹殺されていると」

「しかし・・・目の前で人が死ぬというのは 何度経験してもイヤなものだ」
「それがまして・・・人の悪意によるものなら なおさらだ」


……はたして今回は、前回の学校パートと天文台パートの合間の出来事。まるまる、良太と小五郎のサシで話し合いである。ようやく魔女の存在を認めるに至った叔父と鎮死剤に関する手がかりを改めて確認する様子は、前回もそうであったように第3章の導入に近しい。それでいて奈波のイジェクト死を目撃した小五郎が、彼女が「殺された」ことに憤りを見せた辺り、引き籠りMADのみならぬ彼の人情面を仄かに……だったんだけどなー……(後の展開に不安を感じてならない)

 現状における手がかりは3つ。寧子が脱走時に茜女史から託された端末、および教会跡のドイツ語。ドレスデン製薬はただそうと冠するだけでなくドイツの会社であったらしい。第二に、奈波の「遺言」……彼女が得た機密情報を含む人格情報。良太の完全記憶とは相性抜群だと思っていたのだが、予想したほど自由に情報を引き出せるようではない模様。「見たものを忘れず引き出せる」事と「見た覚えが無いのに記憶しているものを“思い出す”」のには、狭くて深い溝があったということか。
 ともあれ、ついに明らかになった研究所の名前。通称魔女の宮殿(ヴィンガルフ)。また上部組織の存在をも二人に認識せしむ。逆に言えばそれ以外の詳細は「今のところ」紐解かれぬまま、リアル情報を慎重に調べても出てこなかった。「また出てくるから」と言い遺した奈波の人格が再登場する際に教えてくれるかも、というのは小五郎視点では些か頼りなかっただろうな……。


「その組織は名前さえわからないけども・・・ただその組織の最終的な目的はわかっている」

「『神を滅ぼす』ことだ」

「……意味がわからんね」「そうでもない」
「あの宇宙人の受精卵だ」

「神様イコール宇宙人というのはよくある史観だろ?
なら彼らの目的・・・「神の滅亡」とは宇宙人を滅ぼすということじゃないのかって」
「どちらにしろ意味がわからんね
それだと 既に滅ぼさねばならないほど沢山宇宙人がいることになる
もしくは 宇宙人の再生を阻止しようとしているのか・・・」


 比喩的な意味だかなんだか、「神殺し」が大願とはある意味古式ゆかしい……具体的に何をどうするかはさっぱり、というより、方針そのものがこれまで感想界隈で積み重ねられた推測の真逆なのではあるまいか。「地球は疾うに宇宙人に侵略されている」というクロネコの言葉に噛みつつ、他ならぬ研究所が行っている(高千穂が行わせている)筈の宇宙人再生を阻止というのは……それこそ神父生存の蓋然性が高まった抵抗組織やら、いずれヴァルキュリアを倒そうとするかもしれない寧子の側の目標ではないのか?*1 それに(一貫して無表情ながら)高千穂の含むところがありそうに見えなくもないイチジク所長の立ち位置もわからないし……。


「全く・・・まるでホラー映画だな」
「ホラー映画なら 今張り付かれたことで何かのウィルスに感染して
今日の夜辺りにゾンビ化すると思うけど」
「イヤなことを言うな」
「しかし・・・自分がいかに狭い世界で生きていて 自分の理屈に合わないことを頭ごなしに否定してきたか・・・自分の矮小さを思い知らされる」


「だがこれは チャンスでもある」「えっ?」
「いや なんでもない」


 閑話休題。最後の手がかり、というか遺留物。前々回では描写されなかったが、良太が回収していたらしい奈波のハーネストの中の人。魔法瓶の中に入れられていた、もう死んでる筈のそれを小五郎が確認しようとした途端、ビュッと飛び出して彼の顔に! 反射的に振り落とされて蠢くソイツの眼と、眼が……!!*2 直後に良太が沙織の時と同じく踏み潰したが、なんとも不安な伏線*3が残ったものだ。



「鎮死剤への手がかりは もうこれしか残っていない・・・
もしこのパスワードじゃなかったら・・・完全にお手上げだ」ピッ

ピ―――ッ

拒絶(abgelehnt)・・・そのパスワードではないということだ」「えっ!?」
「そんな・・・他にもう・・・」

「どうやら間違えた回数と時間をカウントしているようだな」
「はぁ!?」
「あと1回・・・1分以内に入力しないと この端末のデータは消去される」
「ちょっ・・・」
ピッピッピッピッ........



―――そして次回休載である。良太カズミの遠出(デート)再びをキャンセルしやがった電波暗室第12話に話題に出て以来ずいぶんと時間が経ったものだが、ついに端末を安全に調べ……られなかったかー……(DEATHヨネー)。
 入力したのは確認できる分で「beruhmten(有名な)〜」という感じだが、さっくり正解となることをやはり何処かで期待してたというか、もう他に手がかりが無い以上これが当たり“になるだろう”と……岡本倫ドSはそんなに甘くなかったか。更に倍ドン。あと1分以内1回だけて。警告文はカズミでも読めたかも知れんが、極めて冷静に読み上げる小五郎の方が暗室込みで良かった……かもしれん。繰り返すが、今回の話は前回の学校パートと天文台パートの合間の出来事である。

 つまり来週の期末試験に向けて勉強するぞと言い出した良太、お前らは死なせない、薬さえあれば済む話だと言った良太はこれを何とか乗り切った、はず、だよな……? 多分、メイビー。

*1:「逆」に考えて……『鉄腕バーディー(EVOLUTION)』やら『ブレイクブレイド』やら『人類は衰退しました』やらを参考にして妄想を巡らすに……高千穂の歴々にとって、「現人類」ホモサピエンスの方が「宇宙人」という線はどうか。即ち彼らは旧人類であり、かつての隆盛を取り戻すために「人類を何度も滅ぼす程度の能力」を持つヴァルキュリアを使って……しかし自分達を駆逐して繁栄しただろう現人類が「神」というのは何かおかしくないか? ギリシャでも北欧でも人類以前の旧人類の神話はあるし……遺跡で発見されて後、何らかの手段(今回の小五郎から推量するに……)で人類社会に潜り込み研究所を設立して種族規模の下剋上の機を窺ってたなら判り易い?のだが。

*2:こいつは、他ならぬAAA【操憶】魔女・奈波のハーネスト中の人である。その想像が正しければ、魔女の魔法は寄生生物の性質にうより決定される、もしくは魔女が手に入れた魔法性質を寄生生物もまた獲得するということになる?

*3:黒服の指揮下にある奈波が小五郎と遭遇した場合、彼の身が危うくなるかもという想像が極めて予想外の変形で実現したように思う。「チャンス」という言葉が真に小五郎の本心から出た言葉だとしても、むしろその場合こそ危険かもと。なにしろMADであるし。「いつ回収されるか判らない」フラグが「また」増えて、もう幾つになるやら……。