ALORC-Bottle-Craft-512-Logbook(Ⅱ)

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『美大受験戦記 アリエネ』第71話――《焚きつけ/Kindle》

「俺の描く絵はもう・・・ 全部ダメだよ」

(第70話の感想はこちら)

 第71話「100作の絶望」(5月20日発売ビッグコミックスピリッツ掲載)。燃えよペン/いや燃やすなよ/もっと熱くなれよ!

「こんなのひどいよ、あたし、ずっと・・・」
「ずっと……ってお前・・・()が目的で美大に入ろうとしてんのか?」
「えっ・・・ ちっ ちが・・・」
「だったら・・・彼女にしてやるから・・・俺の側にいろ……「してやる」とか上から言える立場じゃねぇか……ははっ」
「せ・・・先生・・・お酒の匂いする、飲んでたの?」
「アーティストにはつきものだろ? 酒と女と絶望が・・・」
「ちょ・・・センセー だめだよ・・・」

「………あたし・・・センセーのこと……ずっと好きだった・・・」
「………わかってたよ……でも・・・俺には昔から彼女がいてね……」「………………どんな(ひと)?」
「いわゆる「芸術の女神(ミューズ)」ってタイプで・・・あいつは……俺の人生のすべてを満たしてくれたよ・・・俺の絵はあいつと出会ってから・・・どんどん良くなっていって・・・」「………」
「それで俺は・・・あいつを失うことが・・・怖くなったんだ……食えない絵描きのまあまじゃ、彼女に捨てられると思い込んで・・・バカ(・・)をやってね・・・
早い話が「金になる仕事」ばかりに入れ込んでったんだ……でっち上げの「ビジネスアート」とか、教授になるためのレースとか・・・
それで気がついたら、本当は何が描きたいか、わからなくなっててね・・・見失ったんだよ……「自分の絵」をね……」

「あんた……バカだよ…… 100枚描いてもダメだっていうなら・・・
もう100枚、描けばいいだろっ!!」

―――不調で迷走して個展を開いたり、彼女に捨てられたりのくんだりが、『絶望に効くクスリ』第1巻第1話における作者自身のエピソードを想起させる。そういやグサグサと毒を吐く脳内ミューズさんも居たなと、久々に読み返したくなった……。
 過去の向こう見ずだった情熱そのもの、というほど速水と有は≒ではない。経緯からすればむしろ東山光河の方が近そうではある。まあ違うからこそ今其処に間に合い、恋敵と寄り添う彼女に目もくれずドラム缶を蹴倒し燃える絵を消火できたのだろうけども。一声でそれを手伝う夢に、速水自身もまた火を踏み消して……さてどう決着するやら。青木先生の異動、担任変更と同時に起きた本件が解決したからって状況全部が円満とはいくまいが……いつだって目の前のことに全力疾走が主人公の「個」にして「力」なるかな。