ALORC-Bottle-Craft-512-Logbook(Ⅱ)

AよりRへ。記録を継続する。(二冊目)

『美大受験戦記 アリエネ』第76話――《空虚自身/One with Nothing》

「いくら努力したって、お前みたいに上手くなれない人間だっているんだよ!!」
「お前はさ・・・その「俺」ってのが、でかすぎんだよ……」

(第75話の感想はこちら) ( cakesインタビュー記事 前編後編

 第76話「空洞です」(6月24日発売ビッグコミックスピリッツ掲載)。歌川有と東山光河。客観的に見て既に親友、互いに互いを羨む“梅干は背中についている”。

「会える所にいるのに・・・宇宙人と戦ってるわけじゃないのに・・・父はここにいない……」

「それから俺は……何も絵が描けなくなった・・・「自分」がなくなった……
それでも・・・俺には「絵」しかなかったから……真似たんだ………
毎日……上手い人の絵を……空っぽになった「自分」の中を・・・
「誰かの上手い絵」で埋めたんだ……」

 弥生に連れられてった先は光河のバイト先。アイデア有・作画光河・監督弥生の合作「神んぐアウトレット」コンペ勝利の打ち上げ。先輩方に褒められても男二人は自分の功績だと素直に受け取り難く、帰り道で謙遜し合いというより自己卑下の域。そして吐露される光河の原体験。有とは真逆、弥生とは若干似る家庭事情。成り行き形成の三人組は、この先どうなるやらね。
 序盤(1巻収録時)あたりでは合格以降に発露すべき表現欲求が燻っている様子であったり、コンクール前日に夢を誘った時の将来ビジョンといい、美大に入ってからやりたい事がもう固まっているかと思っていたのだが……この頃コンペに纏わる「自分」云々ときて、そうでもなかったという話。

「あんたの彼氏さ・・・他にも女いるんだって?
こういうのってダセーけど・・・知らないとかいわいそうだと思ってさ・・・
相手は 月岡弥生だってね・・・」

「歌川有ってさ・・・時々極端に絵が上手くなる時があると思わない? 陰のコーチがいるとは思わないの?
月岡弥生は……画家の娘(・・・・)だぜ……」

 一方喜多川は速攻で夢に浮気疑念の種を植え付け、しかも有の画箱から月岡英二郎氏から貰った面相筆を発見。毎日持ち帰るのも面倒だろうがアトリエに放置というのも、否そもそも他の予備校生が手下状態なのがイジメかってレベル。どうにも敵役としては技巧や手腕はともかく器が、てな按配? そして女の尻を追ってる間に推定元カノは「ペット」とより接近? ……小磯よ、ペット扱いを拒んだ筈が子犬みたいだぞー……。

 夢は夢で、経過上有の全部を知ってる訳じゃないという当たり前の事をどう受け止めていくやら、これから知るやら。