ALORC-Bottle-Craft-512-Logbook(Ⅱ)

AよりRへ。記録を継続する。(二冊目)

《ヒルの祝福/Blessing of Leeches》/『極黒のブリュンヒルデ』第73話

(前回感想はこちら)
(第1〜3話の無料閲覧はこちら)


―――守る者の痛み、守られた者の苦しみ


前回の粗筋

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―――残念ながらアニメ続報なし。まあ発表自体早いんじゃあと思わなくもないタイミングゆえ、毎週新報進捗をとは行くまい、な? 同日発売の第6巻にしてからがものごっつ加筆修正で史上最大との、おまけに少し前まで『きみだら』前後編もあったし、ご多忙だったかと。いやまYJ編集部が載せる載せないアニメ制作側が発表するしないと関係あるかは知らねども。

 それにしても、思い返せば土屋女史以来の真っ当に台詞のある成人新キャラ♀。どこか黒服のうっかりフラグ臭を受け継ぎ、物言いはトゲこそあれど若干愛嬌が感じられなくもない。格好と年齢に関してはそっとしておこう。少なくともイチジク所長よりかは人間味がある……「人間らしさ」とは何なのか、最近の極黒読んだりyoutube東映特撮視てると若干解釈迷わなくもないけれど。


Devotion

「それじゃ 1107番はこちらに渡してもらいましょうか (いちじく)所長」

*1パ ン ビシュ「ちょっ!?」

!?

「えっ・・・消えた!? ……瞬間移動!? そんなこと出来るなんて聞いてないわよ!?」
1107 ist auch weg!!
「は!? しまった!! 1107番もいない!!」「……小鳥!?」

「……くそっ!! やられた・・・ ったくあんた マジで使えないわねぇ!!」「うるさい!!」
「かすっただけだが撃たれて隙が出来た それでも攻撃は中和したが・・・瞬間移動のことは聞いていない お前のリサーチ不足だ」

「ちょっと人のせいにしないでくれる この無能!!」

「村上君!!」「村上!! しっかりせぇ!!」
「村上君! 村上君!! 起きて・・・!! 村上君! 眼を覚まして!!」「村上ぃ!!」

「ちょっとどいて」「なんやお前!?」

「残念 もう死んでる」

「……うそや!!」「だったら自分で心臓の音聞いて見なさいよ」

「なんやこれ…… こんなん全然意味あれへん・・・ 村上がおらへんのに・・・私が生きててもしゃあないやろ・・・!!
こんなん・・・なんも意味あらへん!!」

「村上君・・・ 私が忘れても・・・私のこと覚えていてくれるって言ったのに・・・ 村上君・・・村上君・・・イヤだよ・・・
私が死んでも・・・村上君が生きていてくれるならそれで良かったのに・・・」

「大丈夫 まだいける」

「まだ心臓が止まっただけでしょ? だったら治せる」「初菜ちゃん・・・」
『初菜 あんた他人は治せないって言ってなかった?』
「そりゃもう 言っとかないと いちいち私を頼られても面倒じゃない」
「……他人を治療できる?  それはもうAクラス相当の魔法よ?」
「この能力に気付いたのは結構最近なの 研究所を逃げ出した後よ 車に轢かれて死んだ猫を治せるかどうか試してみたの」
「治せたんか!?」「んーん 途中でやめた」『なんで?』
「私の体が溶け始めたからよ つまり村上君を生き返らせるには 私の命を使う必要があるってこと」
!?
「……どうして欲しい?」

「早く決めないと 村上君を生き返らせられなくなるよ」
「……そんな・・・ そんなこと・・・」

「バカね どっちにしろ村上君がいないと 私たち全滅するんだからさ」「えっ?」
「彼がいないとヴァルキュリアにも対抗できないし 鎮死剤も手に入らない それに彼には・・・電波塔での借りもあるから・・・」

「やってみる」ズン
「……」「あっ!?」
ビュルビュルビュル「……村上の傷口が・・・ふさがり始めた・・・」
ビュルビュル「えっ!? 初菜ちゃん!!」シュウウウ
「はぁ・・・やっぱり厳しいな・・・ 傷はほとんど治したのに・・・心臓が・・・動かないや・・・」

「初菜・・・がんばってや・・・」ブシュウ「初菜ちゃん!!」

「うそ・・・私・・・ ハングアップなんて初めてした・・・ これじゃ私・・・無駄死にじゃない・・・」ジュワァアァ「初菜!!」

「そんな・・・そんな・・・村上生き返らん・・・!! 初菜も溶けてもた・・・!! 村上!!」

「……寧子・・・?」
『カズミ!! ボンヤリしてないであんたも心臓マッサージ!!』
「えっ!? あっ・・・わかってるわ!!」

「ガハッ!!」ゴポッゴホッゴホッ「村上!!」「村上君!!」
「うっ・・・」「良かった・・・!! 良かった・・・」「村上!!」

「……あれ? おれ・・・気を失ってたのか・・・」
「ちゃうわ あんたは死んでんやで 心臓も止まって」「は?」
「なっ……なんだこれ・・・傷がふさがってる・・・」

『初菜があんたを助けたのよ 自分の命を使ってね』
「……初菜・・・?」

「ちょっとお前・・・なんでそんなことしたんだよ・・・ ウソだろ・・・おれのことなんてどうでも良かったのに・・・」

「バカ……初菜・・・ 初菜!!」

「うるさいなぁ・・・ そんなに怒鳴らなくても聞こえてるよ・・・」
「えっ!? 初菜!! 生きてるのか!?」「たぶん・・・」
「ハングアップしてるから・・・今は治せないけど・・・ 収まったら戻れるかも・・・」

「あんた・・・人を治したら死ぬんちゃうんか・・・?」
「死ぬんじゃないかと思っただけよ 今まで誰も治したことないんだから わかるわけないでしょ?」

「……あれ? 小鳥は!?」
「……ヴァルキュリアに・・・ 連れて行かれた・・・」
「なっ・・・ ……そんな……」

「んじゃ 一段落ついたところで そろそろいいかしら 早速だけどあなたたちには・・・」

「ここで死んでもらうわ この魔女どもめ」


「どどどどど どこですかここは!? けけけけけ 研究所へ行くんじゃないんですか?」

「お前には・・・私の研究の実験台になってもらう」

「完全な宇宙人を復活させるためのな」


Dis / Communication

 かくして、ギリギリ主人公死亡の危機をやり過ごす事に成功せり。1・2巻の最序盤から危惧されていた相互自己犠牲精神の擦れ違いについては、「後で」たっぷりとっくりOHANASHIをしてほしいと、切に。魔女達の命運は未だ魔女狩り代表と思しきミニスカシスターさんの手に握られてはいるが……そこは復活を果たしたメイン交渉人殿になんとかしてもらおう、と。イチジク所長相手よりかはまだ言葉が通じる相手と思われるからして。問題は、「魔女狩り」の名の通りに魔女を皆殺しを方針として掲げている事だが……ところで其処の小僧のうなじを確認させていただいてもよろしいですかね? 「使えない」とか「無能」と罵りつつ、存外仲は悪くない気はするのだけれど。

 推量するに“イニシャライザー”による魔法の中和とは、まず懸念されたような射程範囲内全方位的に魔法の発動を無差別に押さえ込むような能力ではない。要は誰も呪文が挟めなくなる程の大声で詠唱する魔道士に似て非なり、特定(少なくとも同時に8種類?)の魔法を発動無効化だか演算妨害することで使用不可能にするものと。ややもすると未知の魔法すら発動阻害可能だったかもしれないが、イチジクの射撃が掠めたことで集中が途切れた為に瞬間移動*2による逃走を許す結果になった*3。というかだ、瞬間移動で自分以外を運べないからヘリで天文台に乗り付けたのではなかったなら、何故ヘリを使ったのだろう。結局ヘリに他の人員が乗ってた様子も無かった、無い事になるとしたら……ドラシルの回収保管用機材とか? 必要最低限の目標=1107番小鳥・グラーネを確保して逃げた場合には確かに必要の無いものだが。

 若干脱線した。ミニスカシスターさんは、また上下関係は不確定ながらイニシャライザー少年及び神父2名は、死に掛けた(心臓が止まった)村上に縋りつく寧子達を問答無用で射殺してもよかったし、初菜の【再生】治療を無効化してもよかった。魔女狩りの組織命題において魔女に関わっただけの(というには色々疑わしいが)一般人をどう扱うかは定かでないが、少なくとも前者、初菜が良太を蘇生できる可能性を提示する前に魔女三名を殺す事は容易だったしそうしない合理的な理由は見当たらなかった。しかし実際は良太が息を吹き返すまで彼女達が手を出すことはなかった。逆に言えば良太(人間)が助かったなら魔女はもう殺していい、という風にも見えるが……その辺りの情と理、殊に教会襲撃の件もあり人材人手が払底しているだろう魔女狩りが目の前で1107番こと小鳥を掻っ攫われた状況をして、取引相互協力を取り付けられはしないかと。
 ただ、ヘクセンヤクトなる組織が何故に魔女を殺さねばならぬのか、ひいては仮定に仮定を重ね協力し小鳥を奪還できたとしてその後はどうなるのか。其処が明らかではないのに下手な取引は持ちかけられない。魔女と寄生するドラシルを現状の器のまま生かしておけば人類そのものに災いを為す、という一事を提示されるだけで大体反論できない。小鳥奪還奪取にあたり非常手段として一時休戦を取り付けられたとしても、先送りでいずれ再び対立するのは必定。どう切り出したものやら。


―――そしてそして、当の小鳥(転位防止にアイマスク装着)と攫ったイチジク。私的な隠れ家だか真子との愛の巣()だか、ともかく研究所の施設には見えない。実験云々というからには別の部屋に設備は用意されてるかも判らんが……真子の解放までは無能が如き失敗続いて見せて、解放以降は素直に仕事をするフリをして……此処に来て漸く、彼自身の何かしら思惑を顕にしてきやがったと。
 宇宙人の再生。つまりは5巻ぶりに話題に昇ったソーサリアンのことである。土屋女史が見せられた初期のそれではなく、現在の技術による最新のものでもなく……いやさ、今これから生み出すのが最も新しい、且つ完成形たるソーサリアンということになるのか。だからどうなるのかという事も、高千穂の大願「神を滅ぼす」との関連もさっぱりだが。そもそも魔女⇔ドラシル/グラーネ⇔ソーサリアンの関係性自体が放置プレイにも程があった。「なんか宇宙人らしき肉の塊と接触させられる実験」くらいか。あと受精卵……これも3巻末で小五郎に本物認定されてから保存されたままだな。魔女のドラシルが「孵卵」するという事とも関係があるやなしや―――つまるところ、魔女狩り接触した良太視点と、イチジクの実験台寸前の小鳥視点が上手いことザッピング情報開示してくれればスーパーネタバレタイムなのではないかという話(何か違

 あと憶測ながら、小鳥が特別なグラーネの器にしては「弱い」魔女である事は意図的な気がしており、小鳥を小鳥のまま器を換えることなく(外部で新たに魔女を生み出す設備は流石に無い、よな?)実験を行う理由の一部であり、故に実験内容と救出にかかる時間次第ではあるが、助け得るや否や……そもそも救出作戦に移れるかどうかという状況ではあるけれども。助けに行けるなら迷うことなくor迷っても往く、が「これまで」だがさて……命と天秤と献身と犠牲とについて、ちゃんとOHANASHIできるかな?

*1:まさかの、所謂「スリーブガン」が飛び出て抜き撃ち。実用性から仕込んでおいたのか鉄面皮に似合わず映画趣味なのか、いずれにしても何者だという、何故習熟しているという話。

*2:イニシャライザー少年とシスターの会話からするにこれは新たに発現した9番目か10番目の魔法であると思われる。

*3:また前々回ラストから物陰に隠れズンバラリンされた体を接合癒着してたと思しき初菜が再生できないなんて事も幸いにして無かった。今回の描写からするに単純に再生を止めただけでは死なないようだったが、再生できなかったら村上の治癒を提案する以前ではあったろう。