第8話「最初のヒーロー Mr.ロストマン」/荻野純 『γ-ガンマ-』
◎ (第7話感想はこちら) / ジャンプSQ.[γ-ガンマ-]荻野純
誰もやらないなら 僕がやる―――
かくして推定2巻収録分了。一部清涼剤にサービスカットこそあれど、全体的に1巻より血飛沫が濃くて暗澹としてきた……はたして3巻以降の展開はどういうテンションで続くやら、と合掌。作者の分身、特撮愛の化身が如き方に。
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61年前。2014年8月10日。
その日、地球に最初のエイリアンが来た。
力を正義の為に使おうとする者は意外にも、現れなかった。いくら待っても。
犯罪に使うか 力を隠して普通の人間を装うかだった。
―――第8話にしてようやく、世界設定の根源的な話。現行世界に繋がる歴史。宇宙人同士の戦争で地球に降り注いだエネルギーにより変異した怪獣・怪人。やはり予想したような善悪同源、しかし善側のヒーローが誕生するまでは今よりずっと如何ともし難い荒廃状態が続いてた模様。その故にこそ最初に起った者と、それに続いた者の意義は大きい……はず、なのだが。白髪ェ……付け加えるならば、今回の話で説明できるのは事情の半分以下だろう。単発的な怪獣被害怪人犯罪者以外にも地球を襲う勢力は数多く、明らかに元人間でない存在も多く含まれる。またヒーロー側でも、謎のアイテムに触れて力を得たライトブライトや古代兵器の合体ロボを扱うバンドレンジャーなど、経緯的に単なる覚醒超能力者とは異なる者も居る。その辺のグランゾン特異点じみた理屈付け……はさしあたり現在進行中の事態に関与しなさそうで、仮にあと2〜4話以内に一応のケリがついて尚、本作が続いていたならば? いや別に解決前に説明したり白髪野郎の動機にそこいらの事情が関わってても一向に構わないが。
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「ヒーローは フィクションの中の物が初まりなんだよ」
「! じゃあ・・・総隊長がヒーローになったのって・・・」
「そう これらの作品への憧れからだ
超能力に目覚める人間が出てきても 誰もその力を正義の為に使おうとはしなかった
私はそれが不思議でならなかった あの力があればヒーローになれるのに・・・と」「だから自分に力が芽生えた時 私は迷わずヒーローになった 子供の頃の夢が叶ったんだ」
「そっか・・・昔はヒーローは夢の中だけのモノだったのか・・・」
「私達の世代では想像がつきません 最初のエイリアンが来る前は人間に敵は居なかったのですか?」
「人間同士の争いはあったが とくにこの日本は平和だったよ」
「“平和”・・・平和ってどんなだろう・・・」
「………」
……これまで表面上そうと意識する所の少なかった、現行世界の歪んだ側面。ヒーローと敵が入り乱れて戦ってるというのも大概真っ当な状態ではないが、何十年とそれを続けている世界と其処に生まれ育った者の意識。巨大隕石が降った大災厄により文明が停滞技術開発が軍事目的に結集した為に町並みも生活もほぼ変化していない(辻褄合わせ)ことや、本当の意味での「平和」を知らない子供。当時平凡なサラリーマン(特撮マニア)だったシプリアン・ラファラン・ブラウニング25歳、「最初のヒーロー」Mr.ロストマン、現地球防衛軍総隊長*1の目にそれはどう映るのか。かつてあった世界を知る者として、今ある世界を形作った一人として。ユリにエイリアン来訪以前に製作された特撮コレクション*2を貸したのは、元最強のヒーローであり今はヒーローを助ける立場に就く(また榊境弼に疑念を抱いた)彼女に「この世界を守るヒーロー」のルーツを示す意義と同じくらい、その辺の感傷とか言葉になりきらないものを伝えたかった、ような……しかして、見終えたらまた次を貸すという約束は果たされる事無く。事実は小説よりも、否さ虚構の如き現実におけるお約束の残酷さといったら、なかった。
「あの・・・Mr.ロストマンですよね?」
「? 誰? 君」
「突然すみません 弟子にしていだだけませんでしょうか?
僕も力に目覚めてしまって・・・ ならばあなたの様になりたいな・・・と・・・」
「? ヒーローになりたいって事?」
「はい!」
「ディスチャージの件・・・お前の仕業だな・・・」
「はい そうです」
「あの様な人体実験の技術は お前しか持ち合わせていない」
「バレバレですね そもそもあんまり隠してないけど
それを知っててなぜ一人で来たんです? 軍にはまだ僕が犯人だと知らせてない様ですが」
「証拠が無い 余計な混乱を招きたくない」
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「私はまだ力を失ってはいない 簡単には勝てんぞ」
「でしょうね 全盛期は今のミカちゃんほどの力があった
衰えたとはいえ 今でもトップレベルに強い」「お前の目的は何だ」
「ヒーロー狩り」
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さようなら Mr.ロストマン 「失われた時代に一人立ち上がった男」
「少なくとも魔法少女ミカとか、現宇宙最強クラスが出張れば速攻解決とか容易くいかせてはくれない気がしてならず。能力も頭脳も立ち位置も厄介だが、単純な力の大小で測れない脅威度」……という予断が尚、甘かった。驚異的タフネス、という範疇に収まらぬ再生能力ひいては不死性。おまけに殴らせて付着させた血液を浸透させ、内部から破壊するカウンターは暗闘に限れば犠牲者を量産し続ける無慈悲な初見殺し。あまつさえ「最初のヒーローの弟子」の素の戦闘力が低いわけが無く、実際非ヒーローとして一線で活躍する経歴をも。これはもう避ける隙間も無い広域攻撃で細胞の一片も残さず消滅させるしかないんじゃないかな、と。しかし証拠というか確信握ってた人物が誰にも話さないままで殺されてしまい、振り出しよりなお悪い気ががが。ユリやレドネフ隊長が確信を得るまで、影に日向に何をしでかすかと。
そういえば白髪こと榊境弼が56年前から何一つ変わらない姿だってのもノストラフェトゥじみた話だが、ブラウニング総隊長にしたって力を失ってなかったというのも不思議な話だ。第1話の時点で、ヒーローの力の寿命は「長くて5年短くて1年」と言ってたのに……もしかして「未知のエネルギー」とやらの影響力が薄れてきてる? 強制的な変異促進へ適応したというか、抗体ができたというか。力に目覚める事そのものが一過性の病気みたいな状態……それなら採血で能力を盗む白髪の所業にも得心がいく……かな? んんん?