ALORC-Bottle-Craft-512-Logbook(Ⅱ)

AよりRへ。記録を継続する。(二冊目)

《魂の消耗/Consume Spirit》/『極黒のブリュンヒルデ』第4話

(前回感想はこちら)
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―――アジナーをミチミチと「イジェクト」された傍からドロっとした液がドバドバ出て、ジュワワッと蒸発。こんな死に方をする人間がありえるだろうか。人の姿をしていながら、体の組成から違う存在……蔵間マリコ氏の意見によれば珪素生物”。直ぐ連想されたのは漫画『ARMS』だが、彼女たち「魔女」は予想よりも遥かに脆弱で、儚いという現実を主人公は突きつけられるのだった……。

―――前回感想の折、自衛隊や研究者たちはまだ「魔女」を見つけるための探知機を開発用意できていないものと判断したが、それが補強されたように思う。今回はっきりと命数が短いことを見せつけたとはいえ、前回の(たぶん)翌日に良太が隠れ家へ来れたり、以後ヒロインが学校に来たり来なかったりという日々*1を送ることができた*2のは「捕まったら死ぬ」という事実に比して平和に過ぎた。
 しかしながら、その実感に欠けている主人公の前に国家権力の暴威が現れるよりも、ヒロインの限界の方が早かった……。「数」が、「足りない」。答え合わせは推定次回として、おそらくは「薬」の事だろう。イジェクト一発で形を失ってしまう不安定な肉体を、彼女たちの「命」を支えるための「薬」。
 主人公に誘われた海に「行けない」というのはそういうことで、ゴスロリ予知能力者こと佳奈嬢の言葉の意味は、残り少ない二人分のそれを一人で使えば、海へ行く来週末まで「保つ」……っておい。


 今すぐ誘えよ。今すぐ二人で、三人でもいいから海を見に行けよおまえぇーーーっ!! そんなに猶予が余ってる訳あるかっ!


―――失礼、取り乱した。せめて次回は(ヒロインの体調が許せば)そういう展開になってほしい。掛け値なしに。予知可能性か確定未来かわからん例のビジョンが実現する前にヒロインが死にそうだ。「たぶん私は3人目だと思うから」とか言う台詞は聞きたくない……それはむしろプロローグ以後か?
 これから急転直下で世界が滅亡せんばかりの展開になる打ち切り一直線という事態を除外すれば、本当にヒロインが今すぐ死ぬ事は無い、筈だ。しかし助かるとしたら、何が必要だ? とにかくまずは「薬」だ。二人の内一人が動けず一人が倒れたら、まだ薬が残っていても分けることもできない。主人公に飲ませる役が回ってくるかも。そしてもし薬がもう残ってないとしたら、一体どうすればいい……。黒羽寧子は海に行くために学校に来ていたが、佳奈嬢の「命」を使う事を拒んだ。下手をすると佳奈嬢にだけ薬を飲ませて、来週末までギリギリ薬を保たせようとか命懸けの賭けに出ていた可能性を憶測する。ああ、なんという無茶苦茶で……重い*3話をやろうとしているのだ岡本倫
 「なんであんなことを言ってしまったのか」と悔やむ主人公……自分の常識に囚われた為にヒロインの“必死”を見過ごしてしまっていた彼は、これから何を為すのだろうか。


 研究所脱走後、まともな食事をせずに野草を採っていたらしい魔女二人。佳奈嬢の分はジューサーで絞るだろうから……毎日青汁三昧か……しかも寧子に“食べられる野草”の知識があるとは思えないし……良太よ、次回の差し入れはヨーグルトかムースにするんだ!

 またふと思うのは、脱走した「魔女」たちは自分たちが造られた理由、為すべきとされた使命について明確に知っている訳ではないのかもしれないということ。ただ生きるだけのことが危うい存在である「魔女」……もし寧子の大怪我が敵性存在、自衛隊だか宇宙人だかと戦ってできたものでない場合、彼女達がやろうとしている「彼女達だけにできること」というのは宇宙人に対抗するとかいうものではなく、もっと純粋な善意であり意志にして遺志なのかもしれないと。もしくは単純に機会がやってきてない、敵性の宇宙人が悪事を働くなんて事が起きてないだけか。
 あとは脱走の時点自暴自棄になった「魔女」の存在を知っていれば、同様に命の期限の近い彼女たちを止め立てする事も寧子の行動様式に沿うように思う。同胞を倒し、薬を奪えば命を繋げられる……そんなエグい展開にはなるかな、ならないかな……まったく嫌な事を思いついてしまった。


「SKY OVER」オリジナル長編小説
茶店(http://www.deli-deli.com/)→小説作品→「SKY OVER」
※地球外から密やかにやってきた珪素生物は一人の少年の身体を乗っ取り、人類を滅ぼし地球を自分たちに適した灼熱の星へ変える為に暗躍する……筈がなんだかラブコメに。


 さて最後に、前回に続くメディアミックス可能性をもう一つ。『JINKI EXTEND Re:VISION』の例に倣っての……エロゲー化! バッドエンドもプレイヤー次第で回避可能。作者が『時の国のエルフェンリート』に携わっていた……のは直接関係なくとも、夢はある。まあ本編次第では救いの無さを思い知るだけという話も。『舞-HiME』だったか、ある意味全部バッドエンド√という剛毅なゲーム版は。
 かくしてそんな風に妄想を巡らし、次回を待つ。

*1:この期間中、ヒロインがどういった学校生活を過ごし、その大ボケのフォローに主人公が奔走し、また周囲はそんな二人をどんな風に見ていたか……そういう面が描写されなかった事が大変惜しまれる。もう無いものと思っていたらそんなことはなかったのに、中身をスルーとは……。

*2:この事から推量されるのは、彼女の転入手続きをした「パソコンの得意な友達」とは前回ラストで処分されたかなで嬢ではなかったという事だ。イジェクトによる死亡消滅と仲間を秤にかけて、行方を吐かずに逝ったとしたら相当な覚悟と仲間思いだけども。

*3:GS美神』のヒロインが一柱、魔族ルシオラは「一年のみ生きられる寿命」にして「男と結ばれると消滅」と造物主にプログラミングされた存在であったが、横島忠夫に惚れて「やったら消滅」を男に知らせず結ばれようとした。出生境遇の異なる男女の意識差の好例……であるわけがないが。