ALORC-Bottle-Craft-512-Logbook(Ⅱ)

AよりRへ。記録を継続する。(二冊目)

山田玲司『美大受験戦記 アリエネ』第22話――《現実の錨/Reality Anchor》


第2巻は4月27日発売予定!

(第21話の感想はこちら)
 第22話「ドブ色のダンス」(3月26日発売ビッグコミックスピリッツ掲載)。第3部のスタートといいますか、1話1話で時間が経過しない事もあり、実は物語が始まって1週間しか経ってないのでは? これぞ、時間経過などさせるものかダイス美大受験生に土日なんてなかったんや! 月月火水木金金


―――とまあ、安定の夢オチと目覚めに幼馴染♂稲葉君のドアップから油絵講習2日目は始まった。月岡弥生と距離が縮まった翌朝、登校する二人を見ていた夢と水菜、あと小磯……

 しかし技巧的問題は何一つ解決しておらんのでな! あと2日でラクル起こしてレベル4になって告白、などとは正に夢物語。前日教わった「4色以上が混ざってドブ色になる」状況に陥ってしまい、

「お前、何か幸せだろ?」

 昨日何があったかは知らずとも、何かあったことを青木先生に悟られる。小さな幸福を得たために、有の必死さ真剣さがどこか減衰していたことを? 
 彼が油絵初心者であることは厳然たる事実で、ライバル達との技量差は仮に埋められるとしても濃密な努力と時間をかける必要があるだろうに、目前のコンクール講評を……夢が他の誰かと付き合う可能性と混同して焦るばかり。気が急くにも程がある。惚れた店員の勤務時間内に弁当買わねば! という稲葉とどう違うのか。それ自体が悪いわけではないが……
―――真剣必死であることと、ただ焦燥に駆られることは違う。有り体に言って、今の目標設定は現実的ではない。美術芸術で現実性実現性うんぬんを問うのもアレだが……絵も、恋愛も「段階を踏む」事さえしないのは何かおかしい。なおかつ、他ならぬ夢に励まされた言葉*1を忘却してさえいる。

「どうしようもない自分を知ってから・・・
どうすればいいか考えるんだ・・・」

「まずは知るんだ・・・
何が・・・今の自分か・・・

何が・・・現実か……」


 一日を費やした結果、ドブ色に染まりきったリンゴのモチーフ。帰途に見出された二人連れ、葛飾夢と東山光河……まあ有が邪推するようなことは何一つ起こらないんじゃないかとは思うが、しかと現実を認識し、その上で何をどうするか……そのためには今一度、思い知る必要がある。「負けるもんか」……その意気は悪くない。しかしそれだけでは何ともならん、どころか真っ直ぐ進めもしない?

 成長の鍵は前回、月岡父から貰ったヒントかもしれないが……内的課題は第二部と全然変わってない第22話でありましたとさ。

(後日付記:第23話感想はこちら)

*1:ただ現在の有の焦りようの原因とは、ひとえにその言葉がかつての速水遼平葛飾夢を力づけたものであったことでもある。