ALORC-Bottle-Craft-512-Logbook(Ⅱ)

AよりRへ。記録を継続する。(二冊目)

《知恵の蛇の眼/Ophidian Eye》/『極黒のブリュンヒルデ』第22話

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「実に面白い」―――異才の引き籠り研究者。


 寧子たち脱走魔女の命綱である「鎮死剤」の供給問題を解決すべく、行動を開始した村上良太。前々回に名の挙がった「小五郎」に接触し相談を持ちかける。一方で良太に扶養されている魔女―――特に寧子とカズミの学校生活に明暗あり。学年の違う小鳥*1は一体どう過ごしてるのかね……?
 前回カラオケに誘った同級生柏木*2のスキンシップに戸惑いつつ友達が出来た事を喜ぶ寧子。対して良太以外の男子とは話さず、寧子を構う良太に寂しげなカズミ。朝の挨拶にとてもいい笑顔で鞄を一閃とは、「私にも構え」という新手のサインか。良太は気づいたかな……同級生男子の証言込みで朝の件を訝しんだ様子はあるが、その日の放課後は寧子を連れて「小五郎」に会いに行き、今暫く其方に傾注しそうだし……お父さん娘さんが寂しがってますよ!
 前回のモノローグ、「お前たちの時間をそんなことに使って欲しくないから」臨海学校の件で寧子に無理をさせた時の悔いと、彼女達に安らいだ時間を過ごさせたいからか、魔女達に学校生活を送らせつつ自分は薬の件を解決しようと―――信任は得ているとはいえ背負い込み過ぎというか、良太と魔女達の望みが擦れ違っているのではと。端的に言えばカズミは良太の力になりたいのだと思う。貸し借りとしても、心情としてもだ。その辺を主人公が慮るまで、逆にそこから事件問題が起こるまで、第1章末からカズミ萌えの私はヤキモキさせられそうである。ぐぬぬぬ、良太はよ!


「ずいぶん容色美麗になったじゃないか モテるだろう 男に」
「バカは休み休み言いたまえ ただ大学名による箔がないだけだ ぼくの名前が箔なんだから何の問題もない」


 はてさて、推定第3章の重要人物、地方大学の薬品製造に関わる研究者こと「小五郎」である。苗字不明。当然良太は知っているのだろうが、容姿的に村上母方の叔父にあたりそうな彼の姓≒母の旧姓を明らかにしないのは……イチジク所長が良太の親類かもというミスリードか伏線であろうか。
 整ってない黒髪に白衣、薄目で眼鏡……何故男だし()。性格に難ありというのは間違いなく、かなり出不精かつ尊大。この街から出たくない、歩いて行ける範囲しか行きたくないのでアメリカの承知には応じない。どうして自分が必要なら近所に研究所を建てろとまで言ってのける。このままでは埋もれてしまう等とは毛程も思っていない様子。『ARMS』で言えばアル・ボーエン(最終回)みたいな男か。色々と逆だが。

 はたして金でも情でも動かない彼に、下手をすれば殺される問題に関わるメリットとして良太が提示したもの。それはあらゆる超常現象に否定的な小五郎にとっても未知であろう「魔法」……彼の知的好奇心を満たすという報酬。そして建物の外に居る寧子にトランシーバーで指示して実演。破壊魔法が三度、本棚に床に父の形見のペンを破壊。外部からの狙撃でも爆発物の仕込みでもないと理解したか、彼は眼鏡を外して薄目を見開き、

「ハハハハハ」
ギ ギ ギ ギ ギ
「実に面白い!! 命を賭ける価値は十分にありそうじゃないか」

 在野の一般人が初登場時の沙織を超える眼光を放つとはどういうことだ……凄みではイチジク所長に匹敵するんじゃなかろか。あの御母堂の弟ならそれも納得……できるか?!
 あと現時点では無いと思うのだが、良太達の協力者として一定の成果を出した小五郎が魔女狩り研究所サイドから「より知的好奇心を満たせる」条件で引き抜きを受けたらヤバイな、とも。控え目に見てもMADな気質が見受けられるのに。「裏切る奴じゃない」と良太は話を持ち込んだ訳だが―――まあ何が起こるかわからない『極黒』の読者として、常に悪い方向に想像が巡って予防線を張っているだけだが。

「相談に乗ってやろう 話せ」

 さすが身内というか主人公というか、開眼した小五郎の常人ならざる雰囲気に気後れもせず話を続ける良太。頼みたいことは二つ……少なくとも1つは彼の所属からして「鎮死錠の成分解析および精製」だと思われるが、もう1つは一体何なのだろうか? そして薬の問題は小五郎の協力により解決し得るのか、またそれにはどれだけの期間が必要なのか……タイムリミットは一ヶ月未満。製薬の常識的尺度は知らぬが未知の薬を相手に足りる時間か、その常識を打ち破る程の才が小五郎にはあるのか。

 色々と不安は尽きない。が、あんな普通じゃない眼光の男を常識の尺度では計れまい。まして岡本倫ドSが描く天才、私の想像なんぞ軽々と超えていくに違いない……あ、私もう結構信用してるのか。

*1:ところで彼女の「宇宙人に会ったことあります」発言がどういうことなのかの追求がされていないな。研究所での魔女の暮らしやクロネコの過去とも関わる話だし、例の受精卵および端末も込みで、小五郎の好奇心を刺激しそうな話題でもあるのだが。

*2:第1話から良太に話しかけてる貴重な女子。普通にモブかと思っていたが、こうなってくると学校パートで重要な位置を担いそうでいて、何時来るとも知れぬ日常喪失ターンでは危険な役回り。飛躍した妄想においては、寧子の転入以前から「良太を」監視していた組織の潜入工作員で何らかの目的で寧子と親しくなっているとか裏を想像。