ALORC-Bottle-Craft-512-Logbook(Ⅱ)

AよりRへ。記録を継続する。(二冊目)

《総帥の願望/Patriarch's Desire》/『極黒のブリュンヒルデ』第24話

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(第2巻は8月17日発売予定)

喜び、悲しみ。近づく寿命、迫る危機

―――悲喜、こもごも。かつてなくテンションが上下するカズミちゃん様。何故泣かせたし、何故泣かせるし。そして推定第3章は研究所サイドが出ないかと思ったら、そんなことも無かった。日常フェイズが隠然と終わり、状況は風雲急を告げるレッドアラーム。


『つまり・・・1ヶ月で合成するのはもう100%不可能だ』

(でも このくらいであきらめてたまるか!!)
(たとえ わずかな可能性でも 必ず 他に何か方法を 見つけてみせる・・・)


 おお村上良太。流石あの土壇場「まだ大丈夫だ」と閃いて躊躇なく実行する主人公。そして絶望的宣告がされても魔女4人の命を諦めまいとするその視線の先には、「例の端末」……ようやくかっ!!
 他方で調査依頼した「宇宙人の受精卵」には確かに受精卵らしき細胞が入っていて、シリンダー容器の窒素が切れかけだったから保管器に保存したとのこと。現状でアレが何に役立つことも謎が解明されることもないだろうが、小五郎の直ぐ傍にそれが置かれている事がのちのち伏線になるだろう。


「その部品 売ってる物なら買ってきてや「連れてってくれんのか!?」
「いやおれが買ってきてや「やったぁ!! いっぺん行ってみたかったんよ!! めちゃめちゃ嬉しいわ!!」
「すっごい楽しみ!!」
「……まぁいいか・・・」


「そ・・・ そらまぁそうやろな」
「そっかー・・・ やっぱあかんかー・・・」


 嗚呼畜生―――如何に良太がまだ諦めてはいないとはいえ、具体的方策は未だ無い以上、僅かなりとも抱いた希望が手を擦り抜けていった感情は計り知れない。佳奈が問うて、良太が苦々しく口にした答え。如何ともし難い空気の中で、誰より早く諦念を口にしたカズミ。小鳥も佳奈も寧子も、誰も良太を責めたりしなかった。寧子は「これから逃げ出す魔法使いには役立つかもしれないから」と鎮死剤作成を継続してほしいとさえ。良太はどんな思いでそれを聞いただろうか。
 前半の内水着祭と、壊れたPCの部品を求め秋葉原デート計画*1に有頂天になったカズミの喜色満面を完全に透明化する岡本倫ドSめが! よくもカズミちゃん様を泣かせたな……っ!!
 涼みに行くと一人天文台を出たカズミ。この構図は……第10話か……! あの日、朝焼けに照らされスキップ笑顔で下りた階段で、溢れ出した涙。ちくせう。何故一人で泣かなければならないのか、何故傍に涙を拭く者が居ないのか……ッ。


「もう そう長くはかからん」
「遺跡の発見から1世紀・・・我々の大願が成就する日も近い」


 はたして久々の研究所サイド。脱走者サイドと時を同じくしてか、それ以前かは判然としない。イチジク所長が高千穂に報告を上げるのが遅かったか、高千穂の面子が会合の日取りを合わせてから所長が呼び出されたか。今回の件からするに高千穂のメンバーは正体はさておき公的には人間の筈で、各々の社会的地位も関係があるのやも。
 ともあれ報告内容だが、密告情報から派遣した実験体5010番*2が3人分のハーネストと「ドラシル」を回収し、その途上1107番を目撃したとの由。つまり寧子のことである。高千穂の面々はこれを僥倖とし、彼女の生死は問わず「グラーネ」の回収を最優先とイチジク所長に命じた。刺客到来の危機。
 なんとはなしに推量するに、「ハーネスト」という「巣」に宿る「中の人」が「ドラシル」であり「グラーネ」。そして後者は前者より貴重ないし上位の物である。それはおそらく寧子が“随一の力”を持つと言われた事や世界を救うと言い遺された由縁に関わり、引いては高千穂が根本的に何をやっているか、研究所にやらせているかに繋がると思われるのだが……要は【新情報が出ても謎が逆に深まる法則】!!


「ありますよ 宇宙人・・・ その・・・」


 同じ頃や否や、良太はある意味ようやく魔女達の持つ情報を取り纏め出した。下級の魔法使いは何も知らされないと前置きした小鳥はしかし、良太の琴線にかかる噂を提示。研究所を作った者達が百年前に「宇宙人の遺跡」*3を見つけたという―――かくして本当にようやく、彼女の「宇宙人に会ったことある」発言を追及するに至り……まあ2代目アホの娘の事なので微妙に期待薄だったり、反面自分の魔法の威力に無自覚な彼女の事だからあっさり重要情報を漏らすかもしれない。どっちなんだか、そして次回に明らかになるのか沙織の【転時】みたくここぞという時に回想されるのか。

 さあてさて、状況は色々難題揃いであるが、次回は良太とカズミの翌日秋葉原デート……そして寧子が茜女史から預けられた情報端末に遂に手をつける……THE 見てのお楽しみ成分!! カラー扉もな!

*1:多分に「例の端末」の電源を入れるのに、人の多い街中という条件を満たす為。ただ此処においても良太一人で行き、一人で中を確かめる気だった模様。小五郎の協力でも間に合わないけれど、まだ諦めないという意志を表明しない良太の親馬鹿過保護、悪く言えばスタンドプレー志向は次回以降で是非カズミに修正されるべき。

*2:前章の敵役であったキカコのこと。実験の所為か歯といい目元といい爬虫人類的な変異を起こしていたが、「尋問」で薬を絞られたか血まみれ全裸で倒れる背中にはそういった特徴は見られない。

*3:エルフェンリート』における“レーベンスボルン”的位置か。本当に日本の高千穂に在って天孫降臨に関わっているとまでは思わないが、確かに「地球はとっくに侵略されている」な。後に種族としては絶滅したかもしれないが。あるいは形を変えて人類補完計画された「旧人類」は現人類を操り苗床にして復活を果たそうとしている、とか?