第5話「最弱のヒーロー ディスチャージ 前編」/荻野純 『γ-ガンマ-』
◎ (第4話感想はこちら) / ジャンプSQ.[γ-ガンマ-]荻野純
―――全ての
同日発売の単行本第1巻は表紙から察しの通り、第4話まで収録。惜しむらくは本編後インタビューのオミットだが、こちらはこちらで各ヒーローのスペック、プロフィールを収録。あとは表紙裏の北鹿姉妹カット……ちっちゃ可愛い妹御の家の中と外での
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「あの・・・なんでそんなにヒーローになりたいの?」
「……もうすぐ・・・息子が生まれるんだ」「微々たるモノでも力が芽生えて嬉しかったんだ これで私も悪と戦えると思った
私は本当に悪が許せない 真面目に堅実に生きている者の生活を平気で奪う悪を・・・
この手で家族を守れるのなら守りたい その可能性が私にはあるかもしれないんだ」
「……今時珍しいくらい真っ直ぐでシンプルな正義っすね」「いろいろなヒーローの方々に会ってわかった 皆それぞれ全く違う存在だった
「強さ」は教えられるモノじゃない 自分で自分の「強さ」を見出すしかない」
「……そっか・・・そうかもね」
さてさてさて、大筋としては予想をそんなに外れなかった、と言っていいのかどうか。やはり例の採血白髪が暗躍し「最弱」*1と呼ばれたヒーローが急激にパワーアップ、しかしてそれは罠……来月後編はこれまでで一番エグい展開が予期される。その一方、ヒーローの年齢やら気構えやら、また誘われ方は随分予想外。挫折して良からぬ裏ワザに手を出してしまう、誘いに乗ってしまうような事の無い生真面目で堅い性分を逆手に取る手口詐術。力を持つ者はかくあるべき、かくあれかしという社会通念が浸透*2しているが為に、軍(公権力)の要請に応え人々の役に立てる(≒家族を守れる)と聞かされての事だろうか。
正味、いくらヒーロー不足でも、ライトブライト級の攻撃力機動力ならともかくあの程度の能力・実力で「ヒーローにならねば」なんて必要性は薄いどころか、それまで真面目に働いてた中年男性が急にヒーローに転向なんて、周りがどう思ったのか*3とさえ……まあその辺は、現実に怪人やらエイリアンやらが襲来しヒーローと防衛軍の頑張りを実感する社会なれば、ということなのか……だからこそ其処をつけこまれたのかね。
「何者だ?」
「地球防衛軍第八技術開発局の者です さがしましたよ」
「技術開発局? それが私に何の用だ?」
「実はですね・・・協力していただきたい事がありまして」
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モロにこんな感じでヤバイ臭いしかしない。3話から繋がる怪人事件(再生能力のテスト)に加えて、能力を付与した生体兵器*4らしき代物。能力奪取担当の白髪に、開発担当の“ジェイラス”。もしも技術開発局の身分が詐称じゃなかった場合、獅子身中の虫*5というか防衛軍自体がヤバ過ぎる*6。他方で軍関係の新キャラ、ヒゲ隊長の元部下で後任隊長マリーナ・レドネフ中佐に福岡美月補佐官もなんか読めない……ミユキ姉さん的懸念からして怪しい反面実務的には真っ当とユリに認識され、それがミスリードなのか裏の裏なのか。
「だいぶ体に馴染んできた気がする もう少しだ・・・本当のヒーローに・・・」
彼女らの信義真偽はさておき、ディスチャージのパワーアップは生体兵器の制御に利用するために仕掛けられた餌というか実験台……いずれ白髪がそれを奪い*7に来るのは必定。ユリの伝で様々なヒーローに弟子入りしようとして失敗、善意の皮を被った悪意により強化された代償と思しき苦痛に耐え……結局その果実を刈り取られる。否さまだ確定はしていないが……その真実に直面した時、その先に彼が「自分で見出す」答えはどういうモノになるのか―――そこが本エピソードの後味を左右する分岐点と見た。弟子入りエピソードのコメディ調を呑み込んで余りある大筋シリアスの行く先や如何に。
◎ 「東方でっていう」 / 「ブーラブラー」 (移転) ⇒ AA長編
ミト、 /::::::::≧ト、__ ,、_ __,、 /:::::::::彡:!l イ /:/ \ `ト、. {:、::::::::::::::::::>≦ ̄三三- 卞ミト<:::::_ノ:! , ─ ´ ::彡 / ミト、` `┴ ミ:::::/ / / / / \ \彡イ __ / `ヽ \ `::ト、 .:::`/ / /.:,::' / ' ,\ ::彡イ / . `\ヽ `ミト/ / / :/ ,' ! ヽ \:: / \ミ ::ミ,.' :,' / .::! | ヽ/ /:::::::`ト、::/! i ,'/ :! ,' ::: ::: !:::: i i ', ヽ:::::::i / l :! li j! | :: ::::: ::: /:|::! l |、 \ `ー! i :! l |l─:!ミ :l|:i:::: :::: .:::/l斗匕 i l、l ーl /::! l :/ハ::', i ,..L⊥ミ、トミ / ,ィ/'_」/:/ / /! \ ', . , ':/:| イ'ヽl∧ 《(爪::(ノ `',i::/,.イ爪リ 》 :,:' // ヾ , ' :/::::! ,' :! | ヽト、:.',  ̄:::: j/´ `ー' イ///!l . /::::,'::::::i: ,' i ! |!Yト \ ,.、 ____ ' ::/フ ィ´i ヽ でもそれは人の力じゃない。 /::::/::::::::! :| ,' .:i l \〈´::::::::::::リ イ:レ' l ∧ !:::::レ‐ミ,'.:/ ///:| l ! . >=≠ィ´iV!| :!i、::',. 鬼の力だ。鬼が作った道具から生まれた忌子だ。 !::/| ,':/ ///ノ! .:|\ /ミ:. \!| :il_ヽ:', V::i />‐<::::,' i | :.\_ :,'\ |i :l|( !:l. 鬼の勝負に他力はいらない! // < ___ :! :| | ┌i ! ∨ ! .::',!∨ ∠ ' __/ :::/ ! ! !\ / :! {. ∨ ∧ .:', 〕 / | | i /\ ',`. : . :.:ヘ{ \ :', . 7ゝ/ | :i/::|` ミヘー-. : .:.:.\ \ :ヽ / .:/ l | | !:::::::! ヽ \. :ヽ ∨ . // 」:! ! .:!:::::::i . : . : . : ', ヽ. :\l> ,
「大丈夫だよユリちゃん 人間が人間じゃなくなる事なんて無いんだよ
1ガンマ・・・100万分の1グラム・・・どんなに人間から遠ざかっても 「自分」であり続ける部分がゼロになる事は無い何時まで経っても私は私であり続ける どんなになっても根っこは人間のままだから」
「いつも悪いね」「いいんだよ」
「情けない」「そんな事ないってば」「ユリちゃんがどんなになったって お姉ちゃんにとってはいつまでもヒーローだよ」
……最後に、今回冒頭にユリが見た夢(過去)と第1話ラストの姉妹。多分に眼鏡の娘は件の「ミドリちゃん」、リリィキュアル時代の仲間かヒーローの先輩とかそんなんだと思われる。ディスチャージが人間からほんのちょびっともはみ出ない異能しか持たないのと対照的に、人間を逸脱しまくった巨大な力を持っていたのだろう。そしてユリの力はそれより更に強かった、が今は絞りカス程しか残っていない。それでも守り続けねばならないと呪縛に囚われている。
人間は何時まで何処までヒーローになれるか、ヒーローは何時まで何処まで人間でいられるか。今回ようやく意味づけが判明したタイトル『γ-ガンマ-』の、きっと物語全体の命題。答えはもう出ているようでいて、それを守り通せるのか、はたまた見失ってからまた見つけ直すのか―――そこはこの物語がどれくらい続いて、今後何人のヒーローと行き交い、助けたり助けられたりするか次第? ささやかながら応援しつつ。ちっちゃ可愛いは
*1:スタンガンより弱い、冬場のドアノブくらいの放電能力、のみ? 下手をしなくても単行本巻末に見る防衛軍制式装備(エイリアン技術転用・生命エネルギーを使用する銃に刀、強度衝撃吸収に優れた軍服、脚力跳躍力を増幅する靴)で武装した北鹿姉妹や一般兵士の方が強かったんじゃないかと。
*2:同時により強い反発から凶悪な能力犯罪者も発生しうる?
*3:【後日付記】ただライトブライトの例を鑑みるに、およそ能力に目覚めてヒーローを志したとしても、自他ともに安全上の問題から身内以外にそれを教える必要性は低い、か? そもそもヒーローへの組織的支援……「防衛軍所属の元ヒーロー」はいても「軍属の現役ヒーロー」は未出、在野ヒーローにもミユキがスーツを贈ったみたいな補助制度があるのかどうかとか、本作社会において「ヒーローを始める」にあたってのガイドラインが非常に気になる所。後々、覚醒直後ヒーローのエピソード期待。
*4:あれで元は「人間」なのかもしれない。今回明らかになったタイトルの意味から考えて。実に外道。
*5:ただ、あくまで規模として人間サイズ〜怪人クラスの範疇での「能力」を研究実践する輩と見た場合、(その暇があるかは別として)アルトゥロマンや現役最強・魔法少女ミカが出張ってきたらプチっと潰されて終わりなのではという見方もある。
*6:善人悪人区別なく諸共に逆鱗入ったミユキ姉さんに撃滅されそうな意味で?
*7:彼に「採血」された超人怪人はその能力を喪失するか否か。まあ後者の方がエグい。奪った血=能力を複数に撒くことが出来るなら持ち主に戻すことも出来そうに思えるがやりそうな性格には全く見えず、そもそも「採血」された者が生き残れるのか……アカン。