ALORC-Bottle-Craft-512-Logbook(Ⅱ)

AよりRへ。記録を継続する。(二冊目)

《最後の罰/Final Punishment》/『極黒のブリュンヒルデ』第54話

(前回感想はこちら)
(第1〜3話の無料閲覧はこちら)


――― 明暗 を 別かつ

………………(○´∀`)=зホッ(心底)


Survivors:Mission Completed

「良かった・・・ホンマに小鳥と寧子を殺してもたら・・・どうしようかと思ったわ・・・」
「大丈夫だよ 寧子と小鳥が手紙の書き足しに気付くように 少しだけ色の違うインクで字を書いたんだろ?
テーブルの上にわざわざ2本ペンが置いてあったから気がついたよ」

「……えっ?」「えっ?」
(あ あぶねぇ・・・こいつら 気付いてなかったのかよ・・・)

「手紙には 外へ出るなとは書いてありましたけど・・・前日の夜 村上さんと人間以外と入れ替われるかとか実験したのは きっとこのことだと思ったから・・・
だから 襲われたときに寧子さんと一緒に入れ替わったんです 外の犬と・・・」

「でも 首輪に繋がれている犬と入れ替わったから 小鳥ちゃんの首が締まっちゃって・・・」「あっ!!!」
「ご・・・ごめん!! そこまで気が回らなかった!!」

「大丈夫です・・・死ぬよりは・・・」

「寧子さんの手紙には なんて書いてあったんですか?」「えっ?」
「……あの・・・ベッドの下を見ろって書いてあって・・・見たら・・・ケーキとプリンが・・・」

「えー!! なんですか それは!!」
「予知の攪乱が目的だったから 何でも良かったんだよ・・・」
「酷いです!! えこひいきです!! 断じて許せません!!」
「わかったわかった!! あとでケーキ買ってくるから!!」
(こいつ甘いもののことだと ホント人が変わるな・・・)

「……今回は生き延びたけど・・・まだ これで終わりとちゃうやろ
結局 瑞花にまた予知された終わりや
この次はもう・・・こんなに上手く行かんわ・・・」

「それはもう心配ない 瑞花は 死んだよ」「は?」
『私が予知したのよ たぶんあんたと瑞花が会っていた時間に』「……」
『瑞花の本体が案外近くにいるのか それともカズミの前に現れた瑞花に反応したのかはわからない でも昨日死んだことは確かよ』
「だから その予知を聞いた直後に カズミから『風邪をひいた』の暗号を聞いたときホッとしたんだ 今回の襲撃さえ回避できれば もう予知で襲われることはないってことだから・・・」

「そして……今回はみんな生き延びた カズミの言うとおり これで終わりじゃないけど・・・今日はゆっくり休もう」


「そして 回復したら 試験勉強だ」
「え〜〜〜〜〜〜〜〜〜!?」


……大体見たまま読んだまま、という按配で穏当に収まって、幸い。うん、良かった。逃走劇のスルーはいつものこと*1

 犬良氏が予想していた犬との入れ替わりが「首輪が締まる」くんだりまで的中だったり寧子への手紙*2に関して保存食さんが本気で怒ったりと、割と踏んだり蹴ったり。今回天文台側では一番不憫……かな? 寧子は記憶が損耗している自覚が無いし、カズミは死の恐怖と重大な責任こそ負ったが最終的には総取りの感。佳奈は……良太にトイレの世話をされるという泣きイベントがあったか。さて、どっちが重いやら。

 そういえば佳奈の予知のことだが、今回新事実というか「できないとは言ってない」がこれまで無かったのでできないものと早合点していた「予知の複数発動」が可能と明らかに。カズミの予知期限が過ぎる前に瑞花の死を観測……まあ直ちに現実化した類だと思われる。時系列からして、瑞花が【予知夢】を発動させたのは

  1. 良太小五郎カズミの作戦会議
  2. カズミ、良太に告白(する演技?)
  3. カズミ、天文台の外で涙(する演技)
  4. カズミ、瑞花と接触
  5. 佳奈、瑞花の死を観測
  6. 瑞花、崩落死


―――1〜2番の間から、3番までくらいと見られる。小五郎が危惧し犬良氏も前回記事で言ってたが、会議前に予知が始まっていたらカズミの演技自体が諸バレで作戦が成立しないので。あとは瑞花の精神体に反応云々、というよりは「本体が案外近くにいた」を推したい。ただ彼女の「遠近感」には常識的尺度が当て嵌まらない可能性を留意。
 なんとなれば製薬メーカー襲撃(電車で移動)時といい良太救出作戦(中軽井沢・県境)時といい、「あまり遠くまで観測できない」等と説明されながら、これまで「射程距離」に問題があったことがない。あったら人死にを防げないのだが、相当な長距離広範囲内を「視界」に収めているのに違いなく……その圏内にヴィンガルフ本拠(といっても山中の広大敷地内一部か)が存在していると思われる。カズミが拷問後イジェクトされた場所/シノ達の居所を密告した脱走魔女の死に場所も研究所内施設だろうし。
 それでいて自己申告は「あまり遠くまで予知できない」なのか―――そんなの比較対象が【スカジ】こと瑞花だからに決まっていた(独断)。彼女の(汎用性も代償も)絶大な能力を前にしたら、生半可な予知魔女……佳奈が普通の魔女なのかという疑問*3はさておき、単純に予知能力者としての優劣は明らか。まあそんな「優劣」で未来は確定しないと力説し、証明して見せたのが本章だったわけだが。今回言及されるまで気づかなかったが、佳奈が瑞花死亡を確認しなければ安全宣言できず逃げるも逃げぬも無効化される危険を考慮し続けねばならず、収拾がつかない為に不可欠な幕引き役。

……ともあれかくまれ、一件落着。平常運転皆のお父さん保護者モードに戻った良太により休息と、受験勉強(学校生活)への回帰宣言。小鳥が豚のような悲鳴を上げてどっとはらい―――とは終わらないのだった。良くも、悪くも。


「蕩」

「カズミ ちょっといいか?」「ん?」
「瑞花が現れた時に・・・何か話はしたのか?」
「……少しだけな あんたの言うとおり 研究所の狙いは小鳥やった」
「……やっぱりか 最初の予知じゃお前は拷問されて死んだのに・・・小鳥と組み分けた後の予知じゃ拷問されずにいきなり殺されたみたいだからな
それはつまり 小鳥が敵の目的だったから お前を拷問する必要がなかったってことだろ」

「瑞花は 私が巻き添えで死なんでええように忠告しに来てくれたんや それに小鳥を捕まえる協力をすれば 天文台のことも黙っていてくれるって
ええ子やったのににな・・・死んでもうたんか・・・」

「小鳥が狙われていることは まだみんなには黙っていてくれないか」「……わかった」
「あと鎮死剤のことや うちらがもう手に入れてるって言ってたわ」

「は?」
「子供が・・・じゃなくて 1年は生きられるくらいの分を もう持ってるって・・・」「……」
(どういうことだ? 作る材料をおれたちが手に入れてるというのか? それとも既に手がかりを掴んでいるという意味か・・・)

「村上のことが 好きなんや」

(あの告白は・・・カズミの本心だったんだろうか・・・それとも・・・)

「誤解されんように 言うとくわ」「なにが?」

「こないだ帰り道で 村上のことが好きって言うたんも 全部芝居やからな」「!?」

「小五郎のおっさんの部屋で 今から芝居を始めるって宣言したのはあんたやろが 最初にあのくらい悲壮感を出した方が瑞花も信じやすいと思たんや
なんや あんた本気にしてたんか」
「……」
「違う あれが芝居だって事くらいわかってたよ」

「やっぱり あんた わかってへんわ」
「はぁ?」チ ュ ッ
「ちょ……お前 何を・・・」

「さ 私も 麻風呂入りにいこ」タッタッ
「……」


――

――――

――――――ふぅ……()。カズミ・シュリーレンツァウアー、蕩れ。以下略。

……いやもう、普通に良太「女の子」としてのカズミに惚れてなかろか。見蕩れる場面なぞリキ入りまくりというか良太視点で補正が入ってやしないか寡聞に見覚えない新画風なのだが。ほっぺチュー(もうお前ら爆発しろ)直後の笑顔も魂を持ってかれんばかりに、

                /: : : : ミヽノ从リレミ、
               /: : :/´ ̄`´ ̄`ヽ彡、
               /: : /         iヽ: :}
               !. . ,' ィ==、、ヽ ノィ==、、|: : |
              {  !  rtッ、 } r'ィtッ、 ヽ. .!
              ゝ |    ノ  !_    | ノ
               f∨   /ゝ‐ソ‐'ヽ  .! }    実に素晴しいッッ!!
              _ゝ|   {ィェェェェェ、 |  リ
              { ヽ、   |lェ⌒⌒ リ.! , '
              } _}ヘ  ゝゝ==ノ リ /
        ,--≦、 ̄` |/(__)ゝ\ ` ̄ ノ,イ|
       /    ≧、{r‐<ハ_>─</ヽ、
     / ≠≦ ̄ /7{   ̄_ } \ /^\  \`丶、
     / //  ̄/´|`ヽ{  ̄____}  ヽニ=}\|ヽ丶  丶___
     V/    /  |l、_ノ ゝ ´___ノ、   、l:::ハ  丶\   ヽヽ
     l  /l l   リゝ_二7´_j |  ヽ   、::l丶  ゝ ヽ   |ハ
     ∨|  、ゝ ノ \  ̄フノ    \   、_ 、  |リ  }   | !
      ヽ   \\   ̄ 彡'     ヽ ヽ ∨/ ノ   ! |

 みんなの人気者黒羽寧子=サンは……クロネコとは別人だと考えつつ、どうしたって重ねている。まあ同一人物の筈なんだけど不確定。アホの子さ加減に加えて記憶磨耗のこともあり、命の恩人にして心配してやまぬ「放っておけない」枠で固定……まではされてないかもしれんが、一人の女の子として意識させる事にかけてはカズミさんが大分リードを得たんじゃあるまいか(極めて私見)。
 これはもう期末でクラス2位を取った暁には、いや取らずとも海イベントの際には……ッ(眩暈)。嗚呼、蕩れ。


……なんて言ってると逆方向だか明後日だか最悪の斜め上とか不意打ちで来そうなんで、今此処にある笑顔に安らぎ、満足するしかねぇ\(`д´)ゝ


Death Scythe:Long Long Good-bye

「作戦失敗の原因は 脱走した予知能力者がまだ生きていたということです スカジの予知が外れた原因はそれしか考えられません
まだ崩落の確認は出来ていませんでしたが 自分で動くことも出来ない魔女など 鎮死剤があっても真っ先に死んでいると判断していました」

「まさか・・・あんな役立たずに鎮死剤を・・・自分の命を分け与え 面倒を見るお人好しがいたなど・・・」

「残念だ」
「お世話に なりました」


「みぃちゃんは死んだんですか?」
「死んだよ」
「……みぃちゃん・・・」
「今日は引き継ぎとお別れに来たんだ クビだよ 今回の任務に失敗してね」
「えっ?」
「スカジの予知が外れたんだ」「……」

「瑞花を 無駄に死なせてしまった」「……」

「土屋 ここでは個人的な感情は出さない方がいい 人間とは不思議なもので・・・大義さえあればどんな残酷なことも出来るようになる それに慣れることが ここで長生きする秘訣だ」

「……別に 殺されるわけじゃないですよね?」
「……もちろん」



ブ ロ ロ ロ ロ ロ ロ ロ ロ ロ

「案外・・・あっけなかったな この程度で済むわけがないと思ってたんだが・・・」

カ チ ャ

「……だよねー」

バ シ ュ


―――DEATHよねー、と明暗。結局姓名も前歴も明らかにならぬままに、あるいは過去編に登場……その折に瑞花との接触点なぞあれば、とは思わなくもないが、かくして一人の未来は閉じたり。何故わざわざ車内で撃ったし。
 他方、上はイチジク所長に下は土屋邑貴女史。まあ上司の責任追及は後日高千穂に呼び出されてからで、黒服に責任取らせたからって追及が済まされはしないだろう。いつしか期待は薄れていたが、反旗を翻したりするなら今しか無い、か否か? 処遇次第、代わりに据えられる人間の性質次第かと思ってたんだが……まず黒服の後任を土屋女史に「引継ぎ」したらしいのだよな。運転手に警備員に戦術室に「処刑人」にと人員が居ない訳でもないのにド新人の彼女をって、どんだけ人材不足……魔女やらソーサリアンに携われる「研究職」が不足しているのかね? 今少し説明役の先輩とか(読者視点的にも)必要だと思うんだが。


―――『深蒼の夜 上天に満月が掛かる時 翼の子は生まれ出でる』


 凍らせた心の裡に情を封じていては、魔女を「使っている」ようでは。少女達と心通わせた力に足を救われ、彼女が彼の二の轍を踏まぬようにと。いや、踏まずに運用成功されても困るのか……? 繰り返させまい、という意味では所長の主人公ループ説にも……うんんん(迷走)。

*1:根本的問題は、研究所側がSATに相手が何者で何故捕らえねばならぬか、を秘匿していた事にあるかと推定。かなで・真希嬢を捕まえた時はどうだったのやら。魔女を単独派遣するか官憲部隊を使うかしかしておらず、今回はその両方を合わせたと言えなくもないが、結局実働部隊に適切な命令や情報開示がされぬまま。重力魔女を一撃粉砕した所内などはともかく、外部で「魔女を扱うプロ」らしさがイマイチ発揮されないのがザル感の遠因のように思う。遺憾なく発揮されても困るのだけど。

*2:こちらは完全に擬装だった模様。またカズミは手紙を捨てず加筆に留めた模様。「ベッドの下」とは多分に廃村隠れ家のことを指すのだろうが……ミキサーの用意なんて当然してないだろうし天文台に持ち出したろうし、寧子さん両方とも喰ったのか?

*3:所謂「小鳥ショック」により寧子が1107番でないことが明らかになった為に、寧子また佳奈の存在が世界の破滅ビジョンの因たる事に疑問符こそ出たものの、「脱走魔女内のAランク以上」が寧子ないし佳奈である可能性自体は消えていない。「世界を救えるのはお前しかいないんだ」という遺言なんかもあったか。