ALORC-Bottle-Craft-512-Logbook(Ⅱ)

AよりRへ。記録を継続する。(二冊目)

第9話「一日一発ヒーロー キャノンボール」/荻野純 『γ-ガンマ-』

◎ (第8話感想はこちら) / ジャンプSQ.[γ-ガンマ-]荻野純

星が紡ぎ 少女には語られない それは“平穏”という記憶―――


 本日は第10話掲載誌の発売日……ともあれ1巻が「超人なれど人間的な悩みがある」という方向性であるのに対し、「人の心と人間離れしていく体と力」なのが2巻かなと。異論は認める。そして3巻初め、連作より長編的な繋ぎエピソードの感が強し。そしてフル装備でメット被ったユリ嬢ちっちゃ可愛い。


「とりあえず第一段階は完了・・・」

「簡単だったな」

「あんたさ・・・ 今 何やってんの?」
「…………気に入らねぇ野郎がいる そいつを叩き潰してぇだけだ」
「誰の事?」
「ガキには関係無ぇよ」

「ガキって・・・ タメだろチクショウ・・・」

「ユリさん」「はい?」
「レドネフ中佐の事 どう思ってます?」
「えっ・・・どうって・・・」
「怖いですか?」
「別に そういうわけじゃ・・・」
「安心してください」「?」
「中佐は あなたにとってマイナスになる事は 絶対にしませんから」「……」

「あ・・・ あの・・・男・・・ あいつが・・・」

「私の・・・親友を・・・ 宮子を・・・殺した……」

―――ディスチャージの折は彼が活躍し答えを見出してメデタシとはならなかったものの彼が話の中心であり、Mr.ロストマン総長もまたそう。しかして本件は彼是と新キャラが顔見せ、「キャノンボールと名付けられた新人ヒーロー・遠藤一義少年の話」だったとは明言し難いほど錯綜しスッキリしない結末。いや1巻ラストから単に「解決」という体から遠ざかりつつあったが……たとえば『血界戦線』などが一応エピソード内で収めているのとは異なり。また「力」に目覚めたばかりの人間がヒーローを志した上での導入、という兼ねてより待ち望んだパターンになりそうでならなかったのが少し残念でもあり。まあ新人が直ぐ活躍できるほど甘くもない(まして相手が悪過ぎた)というリアルさか、どころか下手をすれば速攻死亡退場なんて可能性も低くなかった以上は運が良かったとさえ。

「いいか!! ここが最終防衛ラインだ!!
サカキ隊長も総隊長も不在の今!! 我々の手で!! なんとしても この街を守らねばならない!!
ここを通す事は即ち!! この街の敗北を」「前河大佐!!」
「何だ!? 話の途中に!!」
「それが・・・連絡が入りまして・・・「第一防衛ラインの手前で・・・怪人の反応が消えた」と・・・」

「は? 「消えた」?」「はい・・・」
「何で?」「さぁ?」

「大掛かりな防衛線を引いたのに・・・ まぁ良かったのか・・・」

◎ 「【ガジェット】やらない夫は5人の軍隊を率いるようです【トライアル】」

 現代社会においては避難指示命令が「無事」不発に終わったら文句が出るので慎重になるなんて話もあり、怪獣怪人の危機が身近な世界に生きてる軍人が謹厳かつ変におおらかなのに和む。本当のところは推定ラスボス三人組が揃って悪巧み、「蛮事静かに芽吹き根を張る」なんて状況なので実に良からぬ良からぬ。後々のことを思えば知らない内が幸い、に見えないのだが。

「誰のお墓?」
「私の 親友だった人 なんだって・・・」
「「なんだって」って・・・ 何よ・・・それ・・・」
「……」

 あと、2巻の書き下ろしについても少し言及。ヒーロー紹介に加え人物紹介(ユリ・ミユキ・ヒカリ)、更には巻末墓参り話(ラフ画)と後書き。超絶シスコンのミユキ姉さんがそればかりでなく、ユリの亡き仲間と思われる「ミドリ」嬢と深く関わっていた、そして何故かその記憶を失っているらしいとの示唆。過去、リリィキュアル現役時代に何が起きたのか、またこの事実が親友の仇と遭遇したライトブライト嬢とどう繋がり描かれるやら。
 加えて総隊長の項目に記される「暮らしていた街がエイリアンの攻撃を受けた際に大量のλ(ラムダ)エネルギーを浴び、強靭な肉体と凄まじい身体能力を得た」「エネルギーと肉体の適合率も非常に高かった為、57年もの間、力を持ち続けた」という記述。前回気になった部分を期せず消化してくれているようで、しかし疑問が残らないではない。「直接大量に」浴びて「馴染んだ」が故に長く強い、とは逆に「馴染まなかった」から現在のヒーロー達は力を失っていくのか、宇宙戦争後の残留物から「間接的に(それでいて生まれる前から恒常的に?)」影響を受ける「量が少ない(減少している)」からか。異能に目覚めなくても健康に影響が出るとかいう話でないのは幸いというか、むしろ目覚める事の方が病気じみている……多分に榊境弼・ジェイラス・棗の三人は総隊長に近いかそれ以上の適合率だか「被曝」量じゃないかと思うのだが……となると「史上最強の力を持ったヒーロー」が最初のエイリアンから約六十年後に活躍し、力を失ったというのはどういう因果なのだろうか。


―――さておき表紙裏。“イチャイチャタイムとは夜9時を過ぎた頃ユリが眠くなってくるとなぜか甘えん坊になるという現象が起こる時間の事を言う。ミユキにとって天国をも越える幸せな時間なのだ!”

……色々あるけど、お嬢さん方もうずっとそうしてれば皆ハッピーなんじゃなかろか。普段外ではつっけんどんな妹も妹で、ああもぶっ飛んだ姉に並々ならぬ憧れを抱いているようであるし。