ALORC-Bottle-Craft-512-Logbook(Ⅱ)

AよりRへ。記録を継続する。(二冊目)

《思い起こし/Call to Mind》/『極黒のブリュンヒルデ』第67話

(前回感想はこちら)
(第1〜3話の無料閲覧はこちら)


きよと言えど、は思うにならざりけり


前回の粗筋

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      < ̄つ:.:.l::::/:l:.:l:.:.ヽ:::::l、l:.:lヽ、:::、、:::::::::::l\/:.l;:l \l:l     ×掛け値なしの最強パワー/同属レーダー能力
      / `ヽュ:l:l/l:l:.:.l:ト:::::::ヽ:::lヽヽ,.-‐--、ヽ、:ヽ::::://ll===〃
    ,-┴ニつ:.l:.:l:.l:人、、\、::ヽ:l /' l;;;;;!  lヽ,フ -::l:::l::l        ×何を犠牲にしてもお構いなしのパパ
    \-,┘;;l:.::l:.l:l:.:l:l /´i`ヽヽ\l  !;''';;;''';;l/////:::/:l
     ヽ. \-l:::ll:l:::i::l l l::;;;-;i  ヽ ゙  -‐‐ '- //イ::::/:::l        -, __
      ヽ  ヽlヽ:::、l.! ヽ i_::l        〃´//::::l       / l/, )      = 最 凶
       l   ヽ、\::ヽ、´   丶__ ,    /,,:::,://       l  l .!、,l `l、
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―――だがしかし、今回は出番が無い。いいや、早く登場(襲撃)してほしいわけでもないが、どう考えても味方ではなく(かといって向こうが「敵視」しているかはわからない。それだけの相手だと認識されているか否かも)、狙いはどうあれ1107番こと小鳥を攫おうとすることは確実で、その気になれば何時でも真子を送り込めるのに……というのは如何にも生殺し、生かさず殺さず俎上の鯛の気分。
 しかし同日の朝にイチジクと真子が合流して根城が割れており、朝→終業式→天文台と(瞬間移動魔法に所長を伴えず徒歩だとしても)充分な時間が経過しているのに、未だ天文台は平穏が保たれ、今少し……最大1週間前後、少なくてもニ三日と続きそうでさえある。これは如何なる意図によるものであろうか。高千穂の意向に沿うや沿わぬやに関わらず、小鳥を捕まえ何かをしようとしているのは確かだが……何かを待っている、待たせている? 良太が鎮死剤の「存在」に気付くのを? それとも魔女狩りの介入を? あるいは小鳥の「中の人」が「孵卵」するのを? 魔女狩りも研究所も管理外でそうなる事は阻止しようという意向のようだが、イチジクの考えはまた別の方向……「孵卵」までは放っておき、その瞬間に真子を嗾ける積もりであるとか? いや「中の人」は魔女には反応しないはずだから、彼自身が自分からナニカサレに逝く……だがそれなら孵卵を待つまでも無く小鳥を殺して中の人を引き摺り出せばよいし、孵卵を待つなら崩落を防ぐ為にも即刻捕縛して真子が奪った薬を与えても良い……何某か、そうできない理由でもあるのか? 彼自身にか、条件的にか。

 だがそんなことより今回は恋愛模様に全力投球だ!(目逸らし


「ほんとの気持ち」

「村上くん・・・」「えっ?」バッ「黒羽!? ちょっと待て黒羽!!」

「黒羽!! ……あれ? 黒羽は?」
「えっ? ついさっき出かけましたけど・・・すれ違いませんでしたか?」
「……しまった・・・天文台に向かったんじゃなかったのか・・・ちょっと探しに行ってくる」「……」
「ねぇ 村上くん」
「ん?」

「君が好きなのは寧子なの? それともカズミなの?」「はぁ?」

「急に何聞くんだよ…… 別におれはどっちも・・・」
「ってことは・・・ひょっとしておっぱいだけの一点突破でこの牛が好きとか?」
「ちょ!? 変なこと聞かないでください!!」
「ほらほら このおっぱいで色んな事が出来るよ〜?」モミモミ
「やっ・・・やめてくだされ!!」ビクッ
「それに・・・佳奈なんかもいいんじゃない?」
佳奈『はぁ? あんたバカじゃないの?』「ほら」パシッ!?
初菜「キーボードがなかったら佳奈なんて無抵抗なただのお人形さん キスしようがおっぱい揉もうが君の好きなことやりたい放題よ?」プニプニピクッ
「もちろんそれ以上のことだって・・・ねぇ? お下の世話も必要だからこの女子中学生と変態プレイだって出来ちゃうのよ?」「いい加減にしろ!!」

「別におれは・・・そういう恋愛感情でこいつらと一緒にいるんじゃない ただ死なせたくないっていう一心だけだ」
「ふーん・・・ だったら私と付き合ってくれてもいいんじゃないの?」「は?」
「私・・・君のことが好きだもの 君は私のこと嫌い?」
「……昨日会ったばかりで 好きも嫌いもあるか」「よく言うよ」

「何ヶ月も一緒に居る女の子が好きかどうかもわからないくせに」「!?」

「私たちには待ってる時間が無いこと知ってるでしょ? 寧子もカズミも私にも グズグズしてたら全員死んじゃうよ」「……」
「黒羽を 探してくる」
「あ」
「……逃げたわね」

『初菜…… あんたよくも私を辱めてくれたわね・・・』ゴゴゴゴゴ
「ああ ごめんごめん」

「だいたいここの人間関係把握できたから 村上くん あのくらい発破かけないと動かないでしょ?」

命短し恋せよ乙女 みんながんばらないとね」


「君が好きなのは寧子なの? それともカズミなの?」

(おれには恋愛経験なんてないからわからない ただ 今まで好きになったのは・・・クロネコだけだ)

(幼い頃の思い出をいつまで引きずるのかと笑う奴は笑えばいい でもおれはどうしてもクロネコのことを忘れられない
黒羽がクロネコに似てるから・・・黒羽に思い出をかぶせていたことはあった でも 黒羽はクロネコじゃない
おれは・・・)
「あっ・・・」

「カズミ・・・」「ははは」
「なんや こんなところで会うなんて気まずいな こっそり天文台に戻ろうと思ってたのに・・・
さっきはその・・・不意打ちでキスしたりしてすまんな・・・」

(なんだろう・・・カズミと一緒にいると気持ちが和む・・・ 気心が知れてるし・・・なにより裏表がないからなのか・・・)

「だって しゃーないわな 鎮死剤 あと何錠残ってるか知ってるやろ?
初菜が持ってたのと併せて42錠 5人であと8日分や」
「……」

「うちらはどうがんばってもあと1週間で死んでまうし だからひとつでも心残りは減らしたいやんか
ファーストキスとか・・・そういう一生の思い出を 昨日みたいな崖の下の茂みとか
ロマンチックのかけらもない場所で残したくなかったんや」

(おれは バカだ・・・前もそうだったじゃないか カズミの元気はいつもカラ元気だ
ずっと・・・死ぬ恐怖に怯えて生きていて・・・ ただそれを・・・押し殺しているだけなのに・・・
裏表がないなんて・・・おれが勝手にそう思いたいだけじゃないか・・・)

ラ・・・ ラララララ・・・ ラララララ・・・
(鼻歌まで歌って・・・ そんなに強がる必要なんてないのに・・・)

「ラララ・・・ラブホ行かんか!?」「は?」
「これから!! 今すぐに!!」「……」

「あ〜〜〜!! 結局言うてもた!!」
「おいおい…… 歌ってたんじゃなくてドモってただけかよ・・・」

「やっぱりおれには お前のことがよくわからないよ」
「はぁ? 当たり前や 私はそんなに底の浅い女とちゃうで」
「だいたいラブホテルに行く金なんてない」「せやったらそこの茂みでもええから!!」
「お前・・・ついさっきロマンチックのかけらもない場所で思い出を作りたくないとか言ったばかりだろ・・・」

「鎮死剤? そんなもの あなたたちは もう手に入れてますよ?」

(今はもう・・・カズミから聞いたその言葉だけが一縷の望みだ
残り1週間・・・何としてでも薬を見つけ出してやる)


「そうか 村上くんとカズミちゃんは好き同士なんだ」

「 良 か っ た 」

「みんなが幸せになるのはいいことだ おめでとう 良かった・・・」ポロ
「…… あれっ?」ポロポロ

「どうして・・・いいことなのに・・・ 私やっぱり病気だ・・・涙が 止まらない・・・」


Relations

 寧子さん嫉妬暴走とか無かった。かえってその方が哀しい。そして主にカズミちゃん様が迂闊かわいかった。迂闊と言えば保存食さんの領分の筈が、恋心と迫り来る寿命が耳年増乙女を駆り立て、大体しくじらせる。だがそれもいい。また此処に至るまでの天文台メンバーの在り方をば、端的に分析し焚付ける初菜の図。良太と小鳥以外にとっては旧知、かつ新参というポジションが今回のような話には実に上手く噛み合う次第―――皆何某かの不如意、不随意、不自由を抱えている。以下猛烈にとっ散らかり、異論は認める。

 良太は恋愛感情をクロネコの想い出の中に留め/囚われ、現在の感情に対してフィルターをかけてしまっている。些か以上に老成枯れて父性極まるところもあれど年相応の欲求が無いわけではなく、主にカズミの努力と、最近の初菜の煽り・発破をして若干前進……ただ短期的には逆方向に働いているようにも。まこと残り短い命をまっとうしようとする考えと、何がなんでも死なせまいとする思いとで喰い違い擦れ違い、が生じる前に最凶コンビが襲い来るかと思ったらそんなことも無く……薬の問題にせよ敵にせよ、外的要因に否応無しの選択を強いられる状況を仮に打破できた先には、自分の気持ちに向き合う事が叶うだろうか。いや余裕が出来るとかえって駄目かもしれないし、そもそも「何の被害も犠牲も無く」一息つける未来が非常に想像し難い。要は岡本倫ドSだという話。
 寧子を特別気に懸けている事は傍目にも明らかだが、それがクロネコを重ねてのものか別人として見た上でのものなのか……感情的にも論理的にも別人だと理解してはいても内心奥では納得し切れておらず、かつ読者視点でさえ「一度明らかになった筈の真実」を測りかねている。それは高千穂ヴィンガルフひいては古代宇宙人ソーサリアンの技術が何処までを為し得るかという意味で、ギリギリの佳境まで線引きが難しい難題である。「同一人物だと気付いて」も「別人だと思い切って」も、それが本当かどうかが確証できない量子状態。第1話のアレへの経緯も含め、彼是と乖離隔絶が潜在しており、頼もしさと不安定感が同居する主人公殿。有言は基本的に実行する男なのだが。

 寧子は記憶が磨耗し不安定な己に善意良識でもって枷を嵌め型に嵌め……それは彼女に「魔法使い」の在り方を提示した誰かの影響であるのか、それとも過去【ヴァルキュリア】であった過去から反動であるのか、良い子が過ぎて……記憶云々から来る幼さという域を超えて自分自身の感情に自覚的になれていない。まして今回「だから俺が守らないと」と思う良太が理由の半分で、もう半分ことカズミから宣戦布告を受けた意味を正しく受け取れていない。嫉妬ひとつでハングするほど破壊魔法を制御出来ないのに、仲間・友達と男を取り合う(奪う)という発想が無いのか……「良太とカズミが両想い」だと思い込み、かつ目撃直後に廃村の隠れ家に駆け込んで泣く/幸せを言祝ぐという転倒ぶりは自己犠牲で譲るとかいう以前の……やはり記憶磨耗により情緒経験値が十年前から成長しない、どころかそれ以前に退行して、という程酷かったら相当ヤバイか? もしくは良太がクロネコを喪ったPTSDに苛まれているように、寧子にも「良太」を喪った痛み……代償の所為か仕組まれてのものか、二人の思い出から良太の顔が塗り潰されていた事が彼女の内心に我知らず干渉している、良太がカラオケを忘却した寧子を思わず抱き締めてしまったように……仮に当人が当人同士*1だったとして、お互いをお互いだと認識出来ないままに求め合う影踏み鬼。

 佳奈は身体の不随が先か「動いたら寧子が死ぬ」理由が先か、ただ寧子のために自分の為すべきを確固として持っている(自分の不自由と秤にかけ寧子の命を選んだ)。しかし必然、自身一人では何も実行できない。だが良太が以前言ったように、彼女の予知が無ければ(初菜以外は)疾うに全滅している。彼女が仲間を信じて託さなければ始まらず、仲間が彼女を信じて行動しなければどうにもできない……ただ基本的に佳奈が詳らかにするのは予知情報と其処に付随する知識だけで、恩人である(からこそ)寧子にも対等な相談相手にして寧子を守る同志たる良太にも、他の皆にも秘する過去がある。だが今後、ことに【ヴァルキュリア】真子が関わる寧子の死を予知してしまった場合、もしくは真子ないしイチジクから寧子の過去を曝されてしまった場合はどうだろうか。願わくば良太への信頼が情報を秘匿する理由を上回って開陳となればよいが、それはそれで死亡フラグ臭がして難儀である。最高の予知能力者こと瑞花も自分の死期は視れなかったし、仲間の死を幾度も回避させてきた彼女が最初の*2犠牲者というのはありえそうで大変困る。
 また序盤、製薬メーカー襲撃の切欠になった失火の際、寧子に殺してくれと頼んだことがあった。これは佳奈の命が寧子に繋がっているのではなく寧子の命が佳奈に通じていると類推され……多分に動かなければ殺されると判っていても佳奈は最後まで「動かない」かもしれないが、逆に寧子が死んでしまった場合は? 1章末において二人の死の予知が最後まで変わらず(実現して巻き戻った)にいた時は、純粋に死に掛けで動けなかった(寧子の死を受け入れたくなかった)とも考えられようが―――真子の魔法に【転時】が含まれていない場合、過去編を除けば第2巻裏表紙の活発溌剌とした姿は幻に終わりそうで、何とも言えず。しかし初菜に人形扱いされ口に指突っ込まれてる顔はエロス。本来の性向とは真逆と思うと尚更に。

 カズミは何を思い何がしたいのか明確である一方、いざ実践となると心身が従わない事が幾度か。誰しもがよくある話だろうが、こと良太に関わることで彼女の思い通りになった試しはあんまり無い。例外は秋葉原デートくらいか。また「子供が欲しい」という夢は元からであるらしいが、天文台合流以降「良太の子供が欲しい」となって以降の変質が最も著しい人物であるかもしれない。セクハラ役から貧乳disられ役へ弄り役から弄られ役へという意味でも。あれ、元から良太には貧乳扱い悪かったか。ドツキ(夫婦)漫才。
 ムードメーカー役でありながら日頃から怯えを抱えている、怯えを押し殺してムードメーカーを務めているという告白が5巻でなされ、脱走魔女の多くが憧れたものであり良太が守ろうとしてきた平穏な学園生活があくまで仮初である事を今回更に強調し……結果としてカズミがアプローチしていた筈が恋愛とは逆方向に良太がやる気上昇したという。まあ薬のブレイクスルー抜きには本当に8日後以降の未来が繋がらないのだけども。上記のように迂闊成分が増し増して、ツッコミ役よりギャグキャラ属性が強まる不憫さよ。まあその補正が無かったら今頃単独ブッ千切りでゴール「してしまって」いたとさえ思うほどのイベント優遇(そして比例する失敗の数)ぶりだが……「和ませる」とは恋人より嫁向きな性質と言えるや否や。

 小鳥はメンバーの内で比較的、なにかに囚われている傾向が薄い。その反面、仲間以外の何かに特別な執着心や目的を持たないように見える※ただし甘味を除く。本人は見た目通りの裏表無さだが、ただ【グラーネ】なる彼女が知らない彼女自身の秘密が、その自由と命運を他の娘らより殊更に脅かしているのは事実。よかった、友達に人質に殺される娘は居なかったんだ(そもそも友達が出来なかった?)。しかし結局学校生活描写ほぼ皆無だったなこの娘……乞エロゲー化。
 かつては千絵姉さんの遺言を曲解して遵守した所為で刺客だと疑われたこともあったが……そういえば唯一人自分を信じてくれた寧子の為に身代わりになろうとした一方、話が下るとカズミとのスキンシップ(セクハラ被害)量の方が余程多い件。そもそも寧子は積極的に接触交流しようというタイプでもないが。また恋愛に憧れる気持ちはあり、ノートに漫画書いたりカズミから寧子への宣戦布告に大興奮したりという面こそあれ、身近な男性である良太をそういう対象と見る様子は寡聞にない。かといって嫌いな訳でもなくそれなりに親密度信頼度であり、良太を柱とする擬似家族において末っ娘扱い。現在進行形で発育は一番の牛だけどなっ。其処から大きく変化する為には何が必要か、未だにわからない。

 初菜は他の面子に比べて、何がしたいか明確で且つその通りに実践する事に躊躇が無い(即断即実行)。カズミのお株を奪うセクハラや良太へのアプローチといい、その過程に彼女自身の意向や趣味が含まれているのも事実だろうが……皆がより自由にあれるようにと気遣う所もあり、カズミと似て非なり、近く異なる存在感。良太への好意は吊り橋効果もあろうけども、初登場で庇った友達に化け物扱いで逃げられた事も含めて不信を抱いていた「人間」の中に信じるに値する者が居ると命懸けで示した事も大きかろう。良太が特別なのは確かで、人類一般に適用できた話でもないが。
 はたして良太に「付き合って」と自分の物にしようという意向、これに嘘は無いとしても全部ではないと存する。最初の告白キスから丸々演技とは思い難いが、マッサージ後に寧子が「逃げ出し」たのを良太が追っかけてった辺りから皆の態度を観察分析して「人間関係の把握」に努めて……自分もアプローチしつつ他の娘らの恋路も応援……結果結末はどうあろうと取り合い上等なのか、皆で「間口を広げさせる」積もりなのか? また彼女の視点では最凶コンビの襲撃可能性は観測できないが、短期決戦想定の前提である所の鎮死剤寿命問題が解決した場合は……まあ考えてはいないのだろうな。カズミとて子供が欲しいと思いつつも2学期が来る前に全滅だと諦め、心残りを減らす方に舵切っているし―――さあ良太よ、全身全霊でもってその絶望をぶち壊すんだ!

*1:黒羽寧子がクロネコか否かというのと別に、落下事故の以後の「村上良太」はそれ以前と同一人物かという話。

*2:「友達」になった直後にイジェクトされ良太の記憶に人格DLした奈波を勘定すれば二人目の。