ALORC-Bottle-Craft-512-Logbook(Ⅱ)

AよりRへ。記録を継続する。(二冊目)

《不明の卵/Dingus Egg》/『極黒のブリュンヒルデ』第11話

(前回感想はこちら)
(第1〜3話の無料閲覧はこちら)

「こいつに海を見せることが出来て…本当に良かった…」
そして訪れた平穏な日常。しかし、長くは続かない…ドコロジャナイ!

―――短くも濃密に、駆け足急展開。それが安定の『極黒』クオリティ。個人的には、

  • 前回合宿なんて行っちゃったけど、佳奈嬢の世話は大丈夫か。そもそも学校に居る間とか
  • 完全記憶能力があってもNASA志望の良太は専門外かもだが、鎮死剤の成分分析とか
  • むしろそこから女医系の新キャラが出ても良いんじゃよ、と考えてたら……(落涙)
  • だからそのエキセントリック天然ボケなところが見たいんだよッ!(握り拳)


 そんな疑問とか感慨とか嗜好()はさておき。何故か魔女狩りの気配が欠片も無い所為で、命数の限りが知っていながらも日々を謳歌する二人の時間……を極度に緊迫させる爆弾が投下されました。


―――宇宙人の赤ちゃん。受精卵。兆しは前々回以来、単語としては第1話以来。


「他のことは忘れてもいい…でもこれだけは忘れるな……
この世を破滅から救えるのは…お前しかいないんだ…」


 過去に起きた脱走事件。Aクラス未満、B〜BBBランクの魔女達を処分する護送車……襲撃か、事故か。人為的なものか、偶然によるものか。はたしてその渦中で、致命傷を負ったと思しき女性……長袖の白衣からして研究員、言動からして比較的寧子たちに好意的だったろう茜さん。彼女が託したもの。
 読者視点では、間接的にか直接的にか第1話冒頭のビジョンを齎す可能性のある寧子……他ならぬ彼女に託された希望。また魔女のハーネストに潜むと思われる謎の寄生生物の正体もわかっていない所に、同根か別口か宇宙人ときた。受精、つまり有性生殖なのか? 「彼女」に対する「彼」とは? 無性でも受精はしたっけか? 地球を侵略……繁殖の為に人間を利用する必要……駄目だ。昔読んだ宇宙的グロ漫画を思い出して、気持ち悪さに想像力が限界。


 閑話休題。存外に、むしろ不自然なくらいにあっさりと学校生活に順応した寧子。記憶は飛ぶが、頭は悪くない*1そして待ち望んだボケ&フォローは良太のモノローグひとつで流されたのだった……。
 記憶、そう記憶。先日の作戦前に佳奈が良太に注意した言葉から、時間を置く事で事実に辿り着けた良太。だがその先の真実は……「脇の下にホクロが無かった」という観測に基づく「黒羽寧子≠クロネコ」という認識の霧に覆われてしまっているようだ。今後は宇宙人云々でそっち方面を考える余裕が無くなる*2かもしれないし……そもそも良太が寧子のホクロに気づく場面、というのが戦闘的なものになるか日常的なものか、後者であればラッキー助平的偶然か……極めて残酷な錯誤を突きつけられる瞬間か。
岡本倫はやはりドSなのか、妄想過剰な私がドMに調教されているのか。


「誰も死ななくて本当に良かった」


 透明で無垢な喜びの笑顔。「世界と私を繋ぐもの」。魔法使いとしての在り方。それは茜さんに影響を受けての事だったのかもしれない。しかしそれだけで命を切り売りまでして人助けに邁進できるものか。佳奈と居る限り、否応無しに見捨てるかどうかの選択を強いられ続ける事に耐えられるだろうか。今の黒羽寧子を形作る彼女の芯、彼女の信念。そうすることで、自分の命に意味を持たせる。自分が忘れてしまっても、人に知られることが無くても……。境遇や寿命、何がそうさせたとしても、彼女がそうと決めてしまった道。そして彼女の信用を得て、得体の知れないモノに触れた村上良太の道は、如何に、何処へ往き、導かれるのか。

 やはり疑問ばかりが尽きせず、魔法使いと人間の果ての知れない物語り。始まりは終わりか、終わりが始まりか。

*1:県下一の進学校の授業内容を一度習えば問題なくなるという意味では、良過ぎるとすら言える。

*2:射程内なら何でも斬り裂ける沙織の前で動けない窮地にあった寧子の、服の破れた胸元を注視した事を鑑みると、無くてもそっちに眼が行く可能性はあるが。