ALORC-Bottle-Craft-512-Logbook(Ⅱ)

AよりRへ。記録を継続する。(二冊目)

《極楽鳥/Birds of Paradise》/佐藤明機『パラダイスバード』

―――時の流れは早いもので、『楽園通信社綺譚』『ビブリオテーク・リヴ』の復刊、私が佐藤明機先生に出会って6年も経とうとしているのか。その間に幾つもの漫画ラノベ動画アニメと行き交ったけれど、この独特なるもの、抜けるような空と景観、世界観。奇天烈な人妖機械達のスチャラカSF連作短編。ただ2冊の単行本が私の中で色褪せることは無かった。そして6年弱を以て昨日、今日。
 何処に売ってるか判らない掲載誌ごと終わったかと思ったら別誌で再開。『トライガン』や『影技』、近頃では『爆麗音』に『ドラゴンステーキ』と似たような数奇を辿るも完結、しかも旧掲載誌の連載分もまとめて単行本化という幸い。おまけに初収録の中短編をも加え、巻末に書き下ろし「其の終るところを知らず」……すべてがひと繋がりとなったような感覚で、堪能した。前2作の舞台とも何処かで接してるんじゃないかね。「月の出」だし、あの広大な空と雲と砂漠の遥か先に、はたまた迷宮古書店の何気ない扉の奥に、ニコ・アージェントやメイウルフが屯する愉快な図書館が在るのかもしれない。夢ですわ。

 はたして本編は、“次元連結式亜空間妖怪長屋”とでも言うべき混沌ぶり。あの多層複層空間に魔法的関わりが明言されてないのが信じられないくらい。主人公の美野(よしの)さん、みっちゃんが水先案内したとはいえ順応早いなあと思ってたら幼少期から資質は十分でした。そして猫好きが昂じて猫手になるわ人間並の猫に戻してもらうわ、挙句に猫化と人化を完全制御て……これまでも猫盛り沢山で妖怪猫に猫人も居たけれど、まさか人間辞めて猫暮らしとは……羨ましいような羨ましくないような!


「センスがどうだの親のコネだの実力だのはどうでもいいのだわ
 私は物を作って人に見せるのが好きなの」
「私の作った物を見て 誰かが微妙な気持ちになったり 癒されそうで癒されなかったり
 がっかりしたり失笑したり・・・」
「なんか変なの、と思ってくれる それが私の落款」


 みっちゃん蓋し箴言なる哉。けど腹までリアルな「ただの虫」のぬいぐるみは勘弁な!
 本作も結構そんな按配で、微妙で変な漫画にゃ違いない。でもそんな自由さを私は楽しめて、何より、また会えて嬉しい。と私信で以てどっとはらい