ALORC-Bottle-Craft-512-Logbook(Ⅱ)

AよりRへ。記録を継続する。(二冊目)

《ウィザードの模造品/Wizard Replica》/『極黒のブリュンヒルデ』第3話

(前回の感想はこちら)

 検索とリンク伝いに蔵間マリコさんのブログ公式HPが公開してる事を知ってプロローグを確認し、謎は深まった……あの影は、誰だ? クローン? 本物? クロネコ

 第1話において、手術と薬で魔法使いになったというヒロインに「お前 それ 魔法じゃねえよ!!」とは主人公と読者が全力で一致するツッコミであったろう。私も魔法使いとは彼女が「そうありたいと思う」者の名前でしかないと予想していた。

―――しかし、はたして科学的な文脈に基づく「魔法使い」とは本当に不可能か? 実際の所は知らん。故にSS脳はSS脳らしく先人の智慧を拝借するのであった。以下、設定面への妄想過多。


 かのアーサー・C・クラーク*1曰く、「高度に発展した科学は、魔法と区別が付かない」。科学的また機械的アプローチによる魔法的超常現象の再現は多分に創作の類に限らず実際に行われてきたもので、創作の方へアイデアを提供してもいる。
 『鷲見ヶ原うぐいすの論証』の導入においては科学的に説明可能な魔術と悪魔召喚の理論が語られ、メガテンこと『女神転生』シリーズでは悪魔*2召喚の儀式を自動化したプログラムがしばしば基幹となる。『とある魔術の禁書目録』は魔術師と対となる超能力者*3達を元からの能力者「原石」以外は人体実験の産物としており、彼らが無意識に発生させる力場から「天界」と「天使」を構築するという計画が存在。他方でアニメ『魔法少女リリカルなのは』シリーズにおける「魔法」は魔術的神秘要素が介在せず、力の源こそ「魔力」であるものの、その行使方法テンプレートは実にプログラム的である。
 かくも描き方、解釈の仕方によって実に多義多様なるもの、魔法使い……Sorcerer、Witch、Druid、Magician、Magus……Wizard。ウィザード。“ウィザード”……? あ。

  • 魔術師。魔法使いを参照。主に男性の魔術師を指すことが多い。
  • コンピュータで、ユーザーに必要な情報を適宜示しながら対話形式で簡便に操作できるよう工夫されたソフトウエアの機能。⇒ウィザード (ソフトウェア)
  • ハッカーの俗語(ジャーゴン / ハッカー文化参照)で、
    • 優れたハッキング能力をもつ人。クラッカーとは全く異なる。
    • あるいは一般に、コンピュータシステムに関わる高い問題解決能力を有する人。さらに伝説的、指導的な功績を残すと、グルなどとも呼ぶ。
    • より広義の意味で、ある分野を極めたエキスパート、熟練者をウィザードとも言う。もっともこれは、やはりコンピュータ関連の人達が使う言葉であり、一般では意味こそ通じるだろうが余り使われていない。


 そんな訳で仮説一つ。「パソコンが得意な友達(=“ウィザード”)」=「魔法使い」という繋がりでヒロインも魔法使いを名乗っている説。まあ外れているだろうし、直ぐ違うとわかりそうな推量であったわけだが――今回の内容で的を外れていたと確定。念動といい予知といい、どちらかというと超能力の如き「魔法」を使う「魔女」*4というのが研究者側がつけた通称コード名であるらしい。推定宇宙人に抗うべく改造された魔法少女……シュールだ。そして彼女たちの目下最大の脅威は、人間である。


 閑話休題。前回の最後から2頁3頁目の辺りを見直すと、「クラクションが聞こえてきた」のは主人公の後方のようでいて、ガードレールの位置からして「装甲車が去っていった」方向は主人公の進行方向とは逆に見えたのだった。
 その為に「拠点に居たヒロインと相方をふん縛って帰還する途中で主人公と擦れ違った」のか、「別の“魔法使い”を載せた装甲車が主人公を追い抜いてヒロイン達を捕縛しようとしている」のかわからなかったのだが……答えはいずれでもなく、「ヒロインと一緒に逃げ出した魔女・かなで及び友人(一般人)・真希を捕まえて去っていく」図であった模様。
 現状から憶測するに、『エルフェンリート』3大グロ*5が1つ“生体探知機”のようなレーダーや、魔法を使った反応の検知システム、もしくは“アジナー”に発信機のひとつも付いてる*6という事はないらしい。ごく近所で自衛隊が動いていて間一髪なのに洗濯とか呑気に過ぎる。或いは、今はまだ捕まらないと予知で判っていたのか? 仲間が一人喪われる事も、それを止めようがない事も。

 そう、今回初お目見えの予知能力者。名前はまだ出てない、ゴスロリの人形の如き彼女。強大な能力の代償に全身不随となり、会話はキーボード*7。見目に反して口(文体)は悪く、ギャップが『コードギアス』のC.C.を想起させる。ただ能力の関係上、かつ境遇上、真直な性格になる筈も無い以上これでも元気なものだとも言える。彼女が「パソコンが得意な友達」なのか、今回捕まったかなで嬢がそうだったのかは不明。ただ「魔女」達がどういう能力を備えているにせよ、ゴスロリの彼女が脱走に重要な役割を果たしたことは想像に難くない。何の為に逃げ出したのか、その辺りはまだわからないが……。

 また前回から補足するに、アジナーを“イジェクト”されることは文字通り身体を引き裂く苦痛を与えるようだ。装甲車で拘束された彼女が色々垂れ流していたのはそういう経緯か。加えて「もうすぐ死ぬ」、「薬」というのは……ヒロインは未だ否定されてないクローンの可能性、そして全ての魔女に関わる生命線の短さと危うさを示唆している。かつ、それを繋ぐ術はおそらく研究者たちに握られている。イジェクトされると即死なのか、するにも段階があるのか……無茶苦茶怯えてたかなでがそれを知っているのは、体験からか、犠牲者を見た事があったからか。ともあれ南無。岡本倫に容赦の二文字無し。
 そんな状況で、ヒロインは「するべきことをしよう」と。「見殺しに出来ない」という以上に、何が彼女らをそこまで突き動かすのか、その理由は後々明らかになるだろうと信じているが……残り少ない寿命に自棄になって暴れる「魔女」が表社会に現れる可能性があるかもとは思った。


 それにしても……暗澹たる雰囲気と展開と対照的に、奇跡的なまでに女の子(知識は6才児だが)しているヒロインの素ボケとまだ危機感の薄い主人公のツッコミが本当に清涼剤やでぇ……。本作がアニメ化(気が早い)した暁には例の謎テーマソングを是非とも挿入歌、むしろOPに! オープニング詐欺? 聞こえんなあ。

*1:2008年没。南無。

*2:「敢えて神を悪魔と呼ぶ」の原理に従い、一神教の天使であれ多神教の善側の神であれ、妖怪魔物であれ十把一絡げに「悪魔」と呼ばれる。

*3:主舞台たる学園都市在住の学生にして被験者。全体の6割は能力が実用に達しない「レベル0」状態。

*4:読みかじった所によれば男でもWitch、魔女と呼ばれうるらしいが、さすがに無いか。ルーシーの弟みたいなのが急に出てくる可能性は捨てきれないが。

*5:他には“不完全なマリコクローンの群れ”、“ベクタークラフト”など。

*6:もしそれが予知でわかるとしたら逃亡後真っ先に破壊されるだろうが、アジナーを引っこ抜いて機械を弄る事は彼女らにとり致命的であろう以上は幸いにしてそれがなかったということか。

*7:私は番組を実際に見てはいないのだが、森達也の著書で紹介されていた「奇跡の詩人」の事が思い出された。