ALORC-Bottle-Craft-512-Logbook(Ⅱ)

AよりRへ。記録を継続する。(二冊目)

《寄せ餌/Lure》/『極黒のブリュンヒルデ』第16話

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『さっき予知が変わったの 寧子は死なない
その代わり 小鳥に殺されるのは あんたよ』

「……は?」


……ええと、結局どういうことなんだ、とパート2。これはもうどうあっても戦闘は避けられない状況に至って尚、どう判断したものかわからない。村上良太、お前の灰色の脳細胞(ポアロ違う)が弾き出した答えとは、何だ……!? 次回を待て!
―――とはいかんので、多少なり情報は整理しておく。と二番煎じ。

 状況からするに、怪しさ大爆発だった鷹鳥小鳥は白だということになる。なってしまう。なにしろAランクの刺客が他に居て、カズミの手引きで学校に通っていた脱走魔女三人を襲っているからだ。天文部に現れた小鳥の首にハーネストが見えた時点で一旦棄却していたが、第12話で瀕死の魔女が薬と引き換えに密告するシーンがミスリードだった説が不意に顕在化したということである。
 その際には「カズミが生き残る為に同胞を囮にした」可能性を考えたが、実際には逆ないし裏となってしまった。「そんなんじゃ長生きできない」と言われた傍から寧子が寧子たる真髄を発揮したから。刺客にすれば獲物が勝手に増えて万々歳か、敢えて助けを呼ばせて一石二鳥……なのか? 既に二人イジェクト死させているとはいえ、想定外の戦力を相手に……物怖じしたり冷静に一時撤退するような相手には全く見えないが。


 まずもって天体観測から一夜明けて放課後……という時間経過がどうなんだ、とは思うがさて置こう。小鳥が刺客でないならば、不意打ちだのハングアップの回復だのという危惧は意味がない。なくなった。だからといって彼女が何の裏もないただの脱走魔女の一人とはどうしても思えないが。佳奈が予知したビジョンでもあの笑顔を浮かべていたという彼女が本当に何者かという疑問は、他に刺客が現れてしまったからこそより複雑怪奇とならざるを得ない。彼女のことを、誰も知らなさ過ぎる……鍵は変身か、変心か。
 思いつくところでは、“「受精卵」を狙う何処ぞの抵抗組織に所属”説。「宇宙人に会った」発言と、現在の所持者が寧子ではなく良太である事から殺害対象が変更されたのではという憶測妄想。
 あるいは容姿ネタ再考、“『時をかける少女未来人説”。こちらはより可能性が高まったのではないかと愚考する。なんとなれば、第1話冒頭(単行本においてはプロローグ)のアレが予知能力によるビジョンでない……少なくともそれを観測するのが佳奈ではないと判断する要素が増えた為だ。今回ようやく「語られた」彼女の予知能力の子細、発動条件・射程とは、

  • 人が死ぬ予知しかできない
  • 長くても二日先、短いと数秒先
  • 遠隔地も、全ての死も予知できない
  • 近くで非業の死を遂げる一部の人だけ


 二番目は現在進行形でそうであるし、また第1・2話で二日にかけて起こる死亡事故二件を防ぐために学校に寧子を送り込む為には時間的猶予がある予知をする事もなければならない。小鳥の件では当方、予知が来た時点で戦闘開始だと早合点していたしな。三番目は最低でも天文台からドレスデンの製薬工場まで。それなりの射程が見積もれるであろうが、その範囲内で起こる全ての死を観測できる訳でもないと。寧子に焦点を置いている為に優先順位を決めている可能性もあるが、だいたいにして町内市内の事故事件を無闇矢鱈に観測した所で寧子(+良太)で全てさばききれる訳がない。それは『絶チル』とか組織所属者の領分だろう。
 そして話を未来人に戻すと、例の「未来」を知っている者が魔法的手段で現在にやってきたとして、その原因かもしれない寧子*1、経緯は依然不明だがあの破滅的状況で彼女を刺す良太という二者に何らかの干渉をするために彼女がやってきたのではないか、と。極端な話どちらかが死ねばパラドックス云々はさておき未来は確実に変わる。どちらを殺すかという選択があったとして、寧子は良太を、良太は寧子を助けようとするだろう。だが今回、寧子は良太が死ぬかもしれないことを知らない。
―――まあ、現時点では妄想に過ぎぬし、実際どうなるか予測もつかんのだが。死亡時に寧子が縛られていた、というのもなんだか奇妙な話であるし、刺客を撃退してそれで話が終わらない悪寒。


 閑話休題。刺客に追われ助けを求める脱走魔女の一人・シノが逃げ込んだ湖近くの公園―――予知で寧子ないし良太がどてっ腹を抉り飛ばされて殺され、その傍らで小鳥が笑うことになる場所にやってきた二人が見た刺客。名をキカコ殺戮型AAランクと呼ばれた沙織の初登場時ともベクトルの違う得体の知れなさ。操網魔法で監視カメラを覗くカズミ*2が即撤退を進言する危険度。その手に握られた、既に殺された魔女のものと思われる二本のハーネスト*3……1頁のみの印象だが、恐るべき敵であるのは明白。どこぞの腋巫女ボーカロイドを思わせる袖が特徴だが、その戦闘方法は多分に『エルフェンリート』の誰をも超える苛烈さでもって行われると推量。岡本倫ドSを確信するがゆえに恐々。


 良太の気づいた佳奈の勘違いとは? シノの交信直後から姿が見えなくなった小鳥は何処に消えたか? はたして彼女の正体とは? キカコの能力とは? 寧子と良太はシノを助けられるのか、二人とも死なない方法を見つけることができるのか? シノは眼鏡っ娘だったりするのか?(しつこい) 謎が謎を呼び考察と妄想を呼ぶ。
 そんなこんなでまた来週。良太よ。寧子を助けて自分も助かりたかったら、お前が、お前がやるしかないんだ……ッ!

*1:まして「この世を破滅から救えるのはお前しかいない」とまで言われている。

*2:なにげに予備動作込みで魔法使うシーンは初めて。それ専用と目されるハーネストに回線つなぐあたり、現状誰より「それ魔法じゃねえよ!」なサイバーパンク。電子の妖精か。タダで云々言う辺りががめつくてもいい娘や……。

*3:この描写からするに、沙織も言っていた回収すべき「ハーネスト」とは魔女の首に備わった魔法作用を受けない装置全体ではなく、イジェクト時にミチミチブチブチ引き抜かれるシリンダー状の物体を指すようである。