ALORC-Bottle-Craft-512-Logbook(Ⅱ)

AよりRへ。記録を継続する。(二冊目)

《爆発する境界/Exploding Borders》/『極黒のブリュンヒルデ』第59話

(前回感想はこちら)
(第1〜3話の無料閲覧はこちら)


The Jabberwock, with eyes of flame(両の眼を炯々と燃やしたるジャバウォック)

【 リ ア 充 が 爆 発 し た 】
【「!?」「何・・・」「ちょっ・・・」「山が爆発した・・・?」】
天文台の入り口も爆発した。戦乙女からは逃げられない】


 三行でまとめると大体こんなところ。一見どうあがいても絶望的。三つ巴とか四つ巴とか、あても無く寧子小鳥を探して時間を喰ってくれるかとか、とんだ希望的観測だった……佳奈の予知(レッドアラート)が発動する暇も無く*1、実に迅速で効率的。未だに全貌明らかならざるとはいえ、そりゃあ「必ず回収できる」と壮語もできるというもの。制御統括できていればな。いや明らかにイチジク所長は暴走暴発上等で送り出したとしか思えないが。


TILTOWAIT

「1人2日分の鎮死剤 7人で14日分 そして・・・寧子と一緒に脱走した連中を殺せば
私の鎮死剤はもっと増える・・・」

「あっ!! 村上さん!!」「どうやった!? 端末の相手は出たんか?」
「……出た でも味方じゃなかった 真っ先にお前達を殺せと言われた」

「まぁ・・・端末の画面にはそう書いてあったからな 前にもぬか喜びしたし 別に期待もせんかったわ」
『鎮死剤を・・・もらうどころの話じゃないわね・・・』
「電話に出た相手はおれを「茜」という人と間違えていたんだ 恐らくそいつはヘクセンヤクトの仲間だろう 心当たりはあるか?」
「……茜さん・・・私にあの手紙を渡してくれた人・・・」
「研究所の研究者や たぶん・・・私達が脱走した事故を引き起こした張本人やと思う 本人もその事故のあおりで死んでもたけどな」
「それじゃ その茜さんがへクセンヤクトの仲間で・・・へクセンヤクトはまだ彼女が死んだことを知らないってことか・・・けどその茜さんは事故を起こしてお前達を助けたんじゃないのか? だったらどうしてヘクセンヤクトは・・・」

『鎮死剤は外の世界で魔女が長く生存できなくするためのセーフティネットなのよ!!』

(そうか つまり魔法使いを助けるために事故を起こしたわけなじゃなく 事故の目的は別にあって・・・本当は 魔法使いたちを鎮死剤切れでそのままのたれ死にさせようとしたわけか)

「それと電話の相手が話していたことがもう一つ・・・
ヴァルキュリアが動き出したと言っていた」
えっ!?

ヴァルキュリア・・・?」『なんですって?』「そんな・・・ありえへん・・・」
「前にお前達が言っていたよな ヴァルキュリアは人類を何度も滅ぼすほどの力を持つって」
「詳しいことはわからん ただ・・・研究所の人間でさえ ヴァルキュリアを恐れていた・・・」

ヴァルキュリアは究極のハイブリッドよ 8つの魔法が使える』
「……8つ?」

『そしてとにかく命を軽く扱う 人でも魔法使いでも虫のように殺すから・・・ずっと研究所の奥深くで眠らされていた』
「村上の聞き間違いや・・・そんなもん外に出すわけあらへん・・・」
(8つの魔法・・・もし本当にそんなヤツが襲ってきたら・・・もう作戦とかでどうにかなる話じゃない・・・)

「一体どういうことだ?」
ヴァルキュリアを眠らせている間に 9個目と10個目の魔力が発現したようです」
「……」


「ふぅ・・・いい景色・・・ この素敵な眺め・・・今私が独り占めしてる!!」
ワー! キレイ! ステキナナガメネー ダロ? コノケシキヲキミニプレゼントスルヨ アハハバカジャナイノ? ボ ン ッ
「全く・・・私だけの景色だって言ったそばから・・・ 失礼しちゃうわね・・・」


「飲まれて数が減る前に 脱走した連中の薬を奪いに行かなくっちゃ」『そこを動くな!』
『公園で大量の死体が発見された件*2で聞きたいことがある! 両手を頭の後ろで組んでしゃがめ!!』
「……はぁ? 人間とか・・・」
「でも せっかく集まってくれたんだから ちょっとリハビリを兼ねて・・・」コオォオォオオオオ ヒュウゥウゥウ

『なんだ・・・? 風があいつに集まって・・・一体なんだ・・・あの光は・・・』

反物質(アンチマター) 見たことないでしょ?」ヒュン ド ン
ゴォオオオオオオオオオオオ

「アハハハハ!! やり過ぎたやり過ぎた!!
ほんのちょっとのつもりだったのに!!
この感じ・・・ 外の世界は楽しいな!!」


―――正味見たまんまといって差し支えあるまい。謎の寄生生命体を埋め込まれた異能力者達、不透明な主人公の父母まわり等から想起する所が多かった例のアレ(ARMS)……単に選び取られた語句設定が似通っただけとも言えるが、実際問題として連想せずにはいれないわけで。8つ、いや10個か。多重能力、ハンプティ・ダンプティ……「神の卵」、しかも反物質砲搭載済みときた。あまつさえドラゴンも跨いで通る某魔導士が如く山を一撃で粉砕してなお本気でないとか、力の底が図れないにも程がある。沙織⇒キカコ⇒奈波⇒瑞花ときて出力だか規模だかがインフレにインフレ重ね、おまけに新能力追加……こちらは成長イベントなんて一度も無かったのに。鬼かとドSかと。閑話休題
 
 天文台で将棋打ってた魔女達の平和も一般市民の平穏も、まとめて吹き飛ばす号砲。イチジク所長が【ヴァルキュリア】に指図したとは到底思えないが……「彼女に自由を与えればまあそうなるだろうな」という予見くらいはできたんじゃあないかと。キカコが「んちゃ砲」*3で島を削り山を穿った件でさえ騒ぎにならないよう隠蔽してのけた高千穂ヴィンガルフの権力であるが……今回は流石に目撃者が多過ぎ証拠が大きすぎる。これをもって魔法、魔女の存在証明とするには突拍子も脈絡も無さ過ぎるけども……秘匿を旨とする“国営悪の秘密結社”にとって少なからぬ衝撃を与えうるのではないかと憶測する。
 かてて加えて、ただ「それだけ」のためにするには、やらかした事の重さは物理的に首が飛んでもおかしくなく……組織の天辺と直接対峙する状況にあって所長の態度は不遜というか不敵というか……要は話は「それだけ」では済まず、かつ自分の身の安全を図る算段*4も完了しているのではと―――つまりは何時からか予断されていた反旗翻る時は今ということなのか? まあ彼の思惑が何処にあろうとも、既に放たれた矢が良太達の咽喉に突き立って詰み同然なのは変わりが無いんだけどな! ヘクセンヤクトにしてもそうだが、「敵の敵」は全然味方じゃない!

Dynamic Entry

『もし本当にヴァルキュリアが外に出ているのなら・・・ 私達はすぐに見つかって殺される』
「……どうして? この場所はまだばれていないはずだ 見つかるはずがないだろう」
『それは・・・8つの魔法のうちの1つが 「魔法使いの探知能力」だから』「えっ!?」
ド ン「!?」

「……だ…………誰だ? まさか・・・」
「 お 薬 頂 戴 」


―――さて、ここで久々に問題だ。この状況から如何にすれば良太達は死なずに済むか?

  1. 天才な良太は突如逆転のアイデアがひらめく。
  2. 寧子が謎の力に覚醒して助けてくれる。
  3. 助けられない。現実は非情である。
  4. ええい、このスイッチだ。


……たとえば、小鳥(作戦目標)と寧子(個人目標)と薬を差し出せば、「もう用は無い」とあっさり全滅させられる気がするのだよね。万が一作戦など知らんと見逃して貰えても薬の製造法に辿り着けねば二日と保たない。かといって抵抗したところで全く勝ち目がある気もしない。

 今のところ確認されている能力は【カップル粉砕攻撃魔法】【反物質生成】に【魔女探知】*5があり、また【落下制御】もしくは【飛行】を持っていると推量され、それでもまだ半分以上不明て……たとい寧子が対人リミッターを振り切って攻撃しようが小鳥が一日一発の初見殺しを使おうが、はたまた「佳奈が動こう」が、開かれてる手札で十分対応できて後出しする余力すら有り余っている。

 降参は不可。抵抗は無理ゲー。逃走も探知と広域攻撃を考えると無駄。となると交渉しか残らないんじゃないかと思えてくるわけだが……奈波と違って「友達」になれそうな雰囲気では全くない御仁が相手である。寧子は昔友達「だった」「かもしれない」が、その記憶が無いと話しにならない。もしかするとヴァルキュリアが【操憶】を持っていて可能ならば記憶を戻してくれる(もしくは都合良く記憶を改竄して手駒にする)可能性もあるけども、不確定要素頼り。いや『極黒』感想記事という名の妄想羅列において不確定要素に頼らなかった事など無いのだが。

―――視点を変えよう。何の為にヴァルキュリアは鎮死剤を欲するか? そりゃあ魔女が命を繋ぐのに必須のそれは彼女でさえ例外ではなく、明らかに研究所の意向・制御から脱して自由行動……ビーコン付いてたら、もし彼女が計画なり大願なりに不可欠でなければ即イジェクト物。理性的、論理的な思考を信用しにくい魔女ぶりを見せ付けられた現状ながら、しかして単に寿命を延ばそうとするならそもそも監視を殺す必要が無い*6……現状彼女手持ちは自分の分と合わせ推定16日分。気まぐれで監視を殺し奔放に自由を愉しみ、ついでに小鳥(と寧子)を捕まえて帰って尚許されると考えているにしても、多過ぎないか。まして天文台の魔女達からも奪おうとなると。
……増やした薬を「元手」に、何かしようとしている? 鎮死剤は魔力の補給を兼ねると推測され、何日か分を摂取する*7事によって普段以上に強力な魔法を行使できるとか? その場合何に向けて何をするつもりなのか。もしくは薬を大量生産する方法また貯蔵場所にあてがあり、そこまでの繋ぎとか?

 いずれにしてもそれ以外にしても、交渉でWin-Winに持っていけるか否か……今、かつてなく主人公の口車に仲間と世界の命運がかかった錯覚。

*1:代わりにヘクセンヤクトからの情報漏れがあったが。予知が無い=死人が出ないなどと楽観的にはなれず、はたして最悪のタイミングで「全ての死を予知できる訳ではない」が実証される事になったか。

*2:七人の監視役魔女+二人。前者についてはハーネストの回収などもしていないので、テロリストとして銃殺許可も出ている件に応じて装備を整え現れたと思われる。

*3:話の流れとして「ブリューナクの槍」と改造再登場を改めて想像せずにはいれない。クローン量産砲撃部隊とか、白猫さんの登場で可能性若干増えた気もするし。

*4:もしくはこの場で殺されても構わない覚悟および自動計画の用意。

*5:エルフェンからの繋がりで、当初からグロい「探知装置」と共に危惧されつつ結局無かったと思わせ安心していたら、一番嫌なところに……つくづくドS。

*6:奈波の場合は自由を満喫しつつ任務を果たして戻るつもりはあった。

*7:ただしこれまでの描写からして一日に何錠飲んでも寿命は二日弱しか伸びない。「飲み溜め」できない。