ALORC-Bottle-Craft-512-Logbook(Ⅱ)

AよりRへ。記録を継続する。(二冊目)

『美大受験戦記 アリエネ』第34話――《心盗み/Psychic Theft》


第3巻は7月30日発売!

(第33話の感想はこちら)
(ちょっと待て歌川有(じぶん)!! 早すぎだろがっ!!)


 第34話「告白のゆくえ」(7月9日発売ビッグコミックスピリッツ掲載)。サブタイが示す通り、気持ちの先走った告白の返答や如何にというところだったが……第1話から2週間しか経ってないのか……そっちの方が割と驚きだ。
 話数に比べ然程時間が経過してない事は前からわかってたが、改めて劇中で言われるとな。それで一目惚れして2週間の告白だが、

「…………いいよ・・・」

 告白直後に我に返った有は優しく振られるイメージに支配されるが、意外にも夢からOKが出た。まあ彼女にしても平静ではなかったようで、呆として「あたし……なんか有くんとつきあう事になった・・・」と親友の水菜を仰天させた。

「でも・・・有くんが東山くんに買ったの話だからねっ」
「だっ・・・だから今は・・・あたしなんか*1のことより・・・
自分の絵に集中してね・・・」

 有も自覚はあると思う。「どれくらい僕を好きかはわからないけれど」「君を好きにならずにいられない」……夢の返事は彼女が有を好きだからではなく、「あまりにまっすぐだから」「ごまかすのもあんまりで」という押しに負けた上で有の絵を気遣ってのもの。未だ告白も成就も振られもしてないが、葛飾夢は速水遼平が好きなのだから。
 これからの時間で引っくり返す可能性は無くもないが、コンクールの結果次第では二人に予備校での「これから」は存在しない。もしも有が東山光河に勝てたなら、夢が予備校を辞めても二人の時間は続くかもしれないが……勝てるか、本当に? あるのか、巨匠の奇跡?

「親なんか……俺にはカンケーないんで・・・」

 一方でモデルの娘さんにフラグを立てて()有と小磯に嫉妬の眼を向けられる光河。前回はそうと見えなかったが、やはり前々回登場時の顔の汚れは血が滲む怪我によるもの……映画監督である父親の仕事関係の、彼を連れて来いと言われてきた者と揉めて、殴られた模様。
 父の誘いに如何に悩んだかはともかく、予備校のコンクール(有との勝負/約束)に赴くつもりだった彼を無理にでも連れて行こうとした誰かの心理は……息子というだけで世界を舞台にする仕事を貰えるのに、それを蹴って予備校なんかに……というものかもしれない。まあ想像の範疇。望んでの事ではない、会いたいと望んだのは昔の事だのに、自分の道を歩もうと考えに考えて技術を磨いてきたのに―――降って沸いたような話でそれが無駄であるように思わせる父親の巨大な力。己と母を捨てた男への怒りと共に、そんな気まぐれ(?)への反発だか自分で未来を切り開こうとする意志だか。

 はたしてそんな東山光河の絵とは、ただの二時間で、たった二色しか使ってないモノトーンに近いのに、圧倒的存在感。深い海の中から美女が浮かび上がるみたいな絵のパワー……特待生の画力を見せつけられ、どうすれば勝てるかと考えた有は、漫画を描いてきた自分の経験に照らして一番得意な「黒」を用いコントラストを出そうとしたのだが―――肝心の絵の具が何故か無い。他にも何色か消えている。
 そして何が起こっているか把握する間も無く、最終日は午後の部へ突入してしまうのだった。残るは、3時間。

 黙々と筆を進める月岡弥生(実行犯)に、彼女を見つめる谷隼人(目撃者)。その真意は如何に?
 よもや妨害ではあるまい。技術的にも心情的にもそんな事をする必要は何処にもない筈なのだから。
 ならばならば、それは助力なのか。さっぱり忘れられている様子の、月岡英二郎氏のアドバイスに繋がり得るピースなのか。「面相筆」、「セルリアンブルー」、「ヴァーミリオン」?


 第3巻はコンクール一日目が終わる辺りまでが収録されると予想、すると第4巻収録分……絵が描き終わり、毒舌3人衆による講評・順位発表とその後まで……は今少し長く続くのでは、と若干メタメタしい考えが過ぎるのだった。

(後日付記:35話感想はこちら

*1:この辺に葛飾夢という少女の自分への自信の無さ、自分で自分を好きじゃない一面が出ているような気がする。そこがどうにかならぬ限り、速見助教授に告白も出来なければ有の気持ちに向き合うことも適うまいと憶測。故に主人公が頑張って彼女に自信を付けさせるという勝ち目があるのやも。