ALORC-Bottle-Craft-512-Logbook(Ⅱ)

AよりRへ。記録を継続する。(二冊目)

《踏み潰し/Crush Underfoot》/『極黒のブリュンヒルデ』第42話

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―――踏み入れさせられた外道。其は暗き墓穴。

……新年初『極黒』、眼鏡っ娘腐女史・土屋邑貴がヴィンガルフの新人としてその内幕をゆるりと見せてくれるだろう、という予想は二重、いや三重の意味で違えられた。流石は岡本倫のドS、見事な斜め上である。かくのごとき急転の上、今号のヤンジャンが合併号でなければ尚良かったのだが。


開幕ラブコメ/命短し恋せよ乙女

 冒頭は天文台で試験勉強に励む良太と魔女達(同席しつつも佳奈だけ日向ぼっこ状態)の図。途切れかけた鎮死剤の手がかり、「魔女狩り」を意味するへクセンヤクトに端末から電話をかけるか否か……その判断は良太の中で保留されていると見受けられる。多分に、相談・協力要請するにしても期末試験を終えるまで切り出しはしないだろう。
 村上良太は寧子達の命を永らえる事と同じくらい、彼女達の学校生活を送りたいという希望を叶える事に真摯だ。各々が「前歴」において学校に通った経験有無、あるいは研究所時代に彼女達に学校を志向させた出来事の有無は未だ不明なれど……脱走時点でそう長く保たない事が判っていながら/判っているからこそ、短い寿命で夢見た生活を楽しむ……寧子佳奈に救われ小鳥の事情を聞き、奈波の死を目の当たりにした良太は、その願いの重さを知っているから。鎮死剤の残りギリギリで問題解決するための調整とか言わない。そんな余裕は全く無い、はずなんだが……ネコさん沸点低すぎやしませんかヤキモチで寿命削ってますよ。


「そんな・・・あんまりやんか村上……
忘れたっちゅうんか? 秋葉原でのこと・・・」
ド ン

「あっ……あの時の間接キスか・・・」ブシュウ
ギ ギ ギ ギ ギ

「あんなのキスじゃないだろ!! オムライスの味見をしただけだ!!」
「そらちゃうわ」

「あんたと私は唾液の交換の交換をしたんや
もうあんたの唾液が私の体になって・・・私の唾液があんたの体になってんねやで?」ブチブチブチ

「村上は・・・覚えてもなかったんやな
私はあん時嬉しかったんやけど・・・別に村上はそうでもなかったんか」
「……」

「何なの私・・・カズミちゃんと村上くんが仲良くなるのはいいことのはずなのに・・・
どうしてこんなにイライラするの・・・?」


―――私は貴方様の喜びように(また不意に挿入された推定ヘクセンヤクト二名に)気を取られ、間接キスを意識する暇もありませんでした!(開き直り) それにしても此処で単行本加筆分を、しかも大筋に一見関わりなさそう(三角関係が世界の命運を左右するというなら話は変わるが)な方を連載に反映してきたか……ヘクセンヤクトの存在を明示すると同時にヴィンガルフ内幕編に入り、今しばらく放置が続くかと思われたが、あの二人が再登場(連載では初登場)するのもそう遠い事ではないかもしれんね。
 他方でカズミ、必要以上に寧子の嫉妬心*1を煽ってたように見えたが……寧子が気持に自覚的でないと、どちらにとっても勝負にもならないと考えてのことかな。その辺の胸中をロジックで掃かれるや否や……もし勝負を求めての事なら、件の「クラス2位を取った際のご褒美」はかなり本気なのやも。


( 3_3)メガネメガネ

「……人事部だったんですか?」
「おかしいか?」
「ええちょっと・・・」

「私……ちょっとわくわくしてきました」
「……お前にこの仕事は 向いてないかもな」
「えっ?」


 さてさて、去年末から待望のヴィンガルフ入り口パート。山中深くにあるゲート施設から敷地内に入り、更に長いトンネルへ公用車は進み……そこで唐突に爆発である。正確には壁面ブチ抜き貫通か。横転した車から脱出した邑貴女史*2が目撃したのは……一糸纏わぬ少女の姿。常識的に心配の声をかける邑貴に対し、案内役のヴィンガルフ人事部員こと宅間は驚愕を顕に。それは少女が何者であるかを知ってのこと。即ち―――警報レベル5、D23から26放射隔壁閉鎖などという大仰な状況を引き起こした危険極まる存在に他ならぬ―――そして戒めを解かれた少女にとり、自分がどういう立場の人間かということも。


「……出れた・・・」
「ちょっと あなた大丈夫!?」
「バカな・・・何が起きた・・・? あいつが解放されているなんて・・・」「は?」

「……殺さなきゃ・・・この基地にいる人間全員・・・」


 これまで劇中に登場した誰よりも長い髪。またその面差しは……完全に私見で述べれば、そう、『エルフェン』のユカよりも『ノノノノ』のノノよりも……村上良太に似ている。奈波が登場し、その能力が良太と割れ鍋綴じ蓋に思われた際の妄想よりも強く、親類血縁関係を連想させる。そういえば、『エルフェン』終盤においてはルーシー(楓)の父親違いの弟、唯一無二の男性ディクロニウスが登場した途端に首を刎ね飛ばされもしたか……事故で父親と共に死んだのは「弟」の筈である。一方で良太似であるなら、父親似ということも考えられなくもない。あるいは良太の“ライトワンス”が組織の改造を受けた証左とすれば、双子の姉/妹かはたまたクローン……性別って変えられるんだっけか。むしろ良太の方がクローンかつイレギュラーの可能性も……止め処なくキリが無い!

 閑話休題。少女が片手を振り上げると、二人を囲むように円形の光が発生し……その内側が悉く押し潰された。咄嗟に邑貴を範囲外に突き飛ばした宅間の左半身を諸共に抉り取って。勿論、即死。「ヴィンガルフにスカウトされた以上はこいつも変態的性癖の持ち主で友達がいないぼっちに違いない」*3という想像の答えが返る前に、その命運は早々に尽きた。
 推定、重力操作。まるで巨人が踏み潰したかの如き、また前々回の上層部パートからするに彼女こそが「スカジ」と呼ばれる存在、Sランクのヴァルキュリア同様、北欧神話の名を冠せられた特別な魔女……寧子のハーネストの中身ことグラーネを回収する為にイチジク所長に使用許可が降りた……これは、以前に予想した通りに、「これが最後」という宣告に応じて反旗を翻し、彼女を解き放ったということなのか? でも彼女、逃げるどころか同胞を救うべく研究所を全滅させようとしてないか。解放に所長が立ち会っていた場合、真っ先に殺されててもおかしくないのでは。または此処まで「道を作り」突破する過程か、これから殺すべき目標筆頭……もし今、研究所(基地)施設内にイチジク所長が不在なら、「スカジ」解放を仕向けたのが彼である蓋然性が高まる……ああ、また不確定の方面に脱線してるな。


「……えっ? ちょ・・・宅間さん?」
「殺さなきゃ・・・ここにいる人間全員・・・
じゃないと みんなが殺される・・・」

「死んでる・・・一体・・・なにが起きた? 事故?
それとも・・・これが魔法?」

「ごめんね でも あなたたちがわたしたちにしてきたことだから」


 宅間の挺身もむなしく、呆然と座り込む邑貴に向けて再び少女はその力を振るう。邑貴を中心に光が……直ちに原形も残さず潰してしまうだろう。「魔法を見せてやろう」と連れて行かれた先で、初めて見たそれが、魔女の宮殿に足を踏み入れる直前だった彼女の人生を終わらせる。処女手荒川ポジションなら長生きして重要な役目を担うだろう、という先入観を物ともせず。このまま……本当に終わってしまうのか? 奈波の一件でどうにもならない死を覆せなかったばかりだけども……嗚呼もう、何故合併号なのだ!

*1:ハングアップした上に口元出血するほどの魔法暴走。キスシーン落書きで切欠となった小鳥がガクブルである。さておき、やはり鎮死剤は魔力の補給を兼ね、また魔女達の肉体は魔力により維持されているものと推量される(マジレス)。

*2:登場早々に眼鏡(個性)……を紛失……だと……? どうしてこうなった。

*3:むしろ自分が同じような立場に居た人間を奇々怪々摩訶不思議の世界に引きずり込む部署で働く人間にしては、些細ながら気遣いと、理由はどうあれ女性新人を先に逃がした結果の死を見た限りでは……黙祷。