ALORC-Bottle-Craft-512-Logbook(Ⅱ)

AよりRへ。記録を継続する。(二冊目)

《伏魔殿/Pandemonium》/岡本倫『極黒のブリュンヒルデ』第5巻

「……死ぬのは・・・怖いです・・・
死にたくないです・・・生きてたいです・・・」

「あんたがなんも責任感じることなんて ないんやからな
死んで当たり前なんや なんも悲しまんで ええんやからな」

 悲しみの日は過ぎても日々は続き……また危機は訪れる。仄暗い地の底から、たびたび交錯しつつ。


 第3章のタイトル「うち捨てられし記憶」が明確に奈波を示していながら、3巻の主役はカズミちゃん様であった。そして涙の4巻を過ぎ、第4章「夢見る魔法使い」5巻6巻は瑞花(+土屋邑貴女史)が中核のようでいて……やっぱりヒロインはシュリーレンツァウアー、蕩れ(ネタバレ自重)。タイトルにしても【予知夢】の瑞花と(良太の)こっこが欲しいというカズミの夢、というダブルミーニングとも捕らえられるしな―――劇中で明言されるの第6巻じゃねーか!


収録範囲 直前掲載 表紙/裏 引き指数 収束度合 掲載時比較 主な加筆修正
第1巻 寧子、八つ裂き 小鳥、正体不明 寧子/寧子 ★★★★ 衝撃度合↓ ランク設定改訂、「まだ大丈夫だ」
第2巻 寧子、危機一髪 カズミ、吶喊 寧子/佳奈!? ☆☆☆ やきもき度合↓ ハングアップ設定改正、紙袋
第3巻 良太、危機一髪 奈波、友を得る 佳奈/カズミ ☆☆ ☆☆ 加筆の想定内外 秋葉原デート表裏、魔女狩りの影
第4巻 奈波、“死なず” 瑞花、落涙 カズミ/小鳥 ☆☆☆☆ 涙腺刺激≒ 三人で撮った写真、奈波の……
第5巻 「小鳥ショック」 初菜、来訪 小鳥/良太 ★★★★ 驚愕度合↓ 小鳥ノート、黒服の……?

 異論は認める。今回特に顕著な差異は……1巻の時点で小鳥の腹が読めなかったり2巻の時点でカズミ夜這いの結果、3巻の時点で奈波の生死が不確定だったのに比べ、先月中旬の段階でさえ第6巻(第4章)内容がほぼ確定であることだ。いやさ、第5章以降も分量次第ではそうなるかもしれないが……「終わりの始まり」、またその先のエピソードが1巻2巻で収拾のつくものだと考えるのも甘い考えに思えるし。

 公式ツイートは確認せなんだが、今回は随分あちこちに細々と手が入っている印象。掲載各話の垣根を無くす特性上、新規ページというより新規コマが散りばめられているかのような。また台詞・設定やら。当時良太似と勘違いした重力魔女さんの髪色が変更されていたり、スカジこと瑞花の能力代償が「テロメアが破壊され細胞分裂できなくなる」となっていたり……

「ん? ノートが出しっぱなしや 小鳥のノートか・・・」パラパラ 「……」ヒクッ

「……あの豚・・・一体 何を描いてんのや・・・」

「カズミさん不健全です いつもHなことばっかり・・・」
「はぁ? あんんた 何を言うてんのや?」

「あんたがノートにエロマンガ描いてるの知ってるで」
「ちょ――――――っ!!」

エロマンガなんて描いてません!! 純愛ラブストーリーです!!」
「盛ってるのは一緒やん」「盛ってません!!」
「ったく豚が発情しよってからに・・・」
「豚じゃないし発情もしてません! プラトニックなラブロマンスです!!」
「自分を主人公でラブロマンスとか全く処女のドス黒い妄想は手に負えんな・・・マジでキモいわ・・・」
「ひどい・・・ひどすぎます!! 恋に憧れるピュアな想いなのに!!」

―――もうやめてげてよお! 何故そこを追加したし。ラストカットに併せ、彼女の存在感を増進しておく試みだったかもしれない。弄られ過ぎて哀れに思うべきか、嗜虐心に目覚めるべきか……あるいは「絵日記」だか、今回のノートだかが小鳥√なり彼女に纏わる謎の彼是に関して重要な鍵・伏線になるとしたら……なんて深読をせずにいられなくさせたのが掲載時の衝撃であったし、そうでなくても数撃っても当たらない想像妄想が絶え止まないのが訓練され過ぎたM読者根性、などと胸を張れない事を主張してどうするのだろう(惑乱)。そして秋葉原の時といい、何故カズミは多方面を敵に回すのか―――おかしいな。遂に内幕を描き出したヴィンガルフの新人こと土屋邑貴眼鏡腐女史がソーサリアンに魔女にと未知への探究心好奇心と倫理感情の板挟みだったり、惨死予告されたカズミを助けるべく頑張る良太が(佳奈の下の世話をして)泣く程ギリギリだったり、カラ元気と不安で一杯一杯のカズミがとうとう良太に「告白」……幾らでも焦点たるべき所はあるのに何故ここを大きく取り上げてるのだろう。実は自分で思うよりもS寄りに振れているのだろうか()。

「しかし これが最後だ 意味はわかるな?」
「・・・ありがとうございます」

「…………これで いいんだな?」「はい」

「奈波・・・5210番を失ったのは私の不始末です 1107番は必ず私が回収します」
「スカジはあと1度しか使えない もう失敗は許されないぞ」「はい」
「その時は覚悟しています」

「任せる」

 他方、イチジク所長と結局最期まで姓名不詳の城ウォッチャー黒服のやりとりがスカジ使用許可直後に挿入。連載の展開を鑑みるに、二人の関係性やら黒服の魔女への姿勢やらから逆算されて得心がいくようないかないような。それでいて新人の前では冷厳な態度を崩さないので、その内面を改めて想像する余地が増えるのも味わい深い……カズミの告白場面についても同じ事が言えるか。やはり本章は、何かにつけて彼方此方が対比対照ないし相似を感じる構成の妙。まだかまだかと過去編を待ち侘びる気持ちも強まるけれど、次巻も如何に加筆されるか/どのように整理されるかが連載・単行本両刀派の楽しみでもあり。


 はたまた恒例の本巻カバー下の「きまぐれキャラ紹介」、ここで主人公・村上良太が出座である。展開次第じゃあ奈波かと思っていたが……悲しくも脳内彼女の存在感は前半以降薄れ、6巻収録範囲でも一度言及されるに留まり、界隈の召喚要請を袖にするのであった。岡本倫ドS(約束)。もしかして刺客枠の娘は採用されない運命にあるのだろうか。となると6巻は瑞花ではなく、小五郎?
 奈波に関しては連載の方で脳内彼女大復活祭イベントが発生すればまだ芽があるが、瑞花は……アレがああなってこうなってそうなって実はまだ、とかいった誰かの(当方の)願望が実現でもしない限りは……つくづく不憫な。
 閑話休題。5巻で紹介される主人公というのも結構珍しい気がするが、内容の方も結構ひどいことが書いてある。

  1. NASAの研究員になることが夢だったけど最近忘れ気味
  2. 女の子が苦手だったことも最近忘れ気味
  3. 決めゼリフは「まだ大丈夫だ」だけど、あまり使う機会がない
  4. おっぱいに目がない
  5. 服はほぼユニクロ


……最後のは、家庭教師のバイト代を魔女達の食費に注ぎ込んでるからじゃねーかなと。単に着飾る機会も欲求も無いだけかもわからんが。見方によっては寧子との出逢い(再会?)によって人生の意味がまったく変化してしまったとも言えるし、ある意味クロネコの死というトラウマが為に「抑制」されていたものを解放したとも言える。いやまあ、当人からしクロネコの事に囚われてる自覚はあるし、本日本誌掲載分にしてからが……だったし。寧子は忘れて「しまう」ことの方が悲しいと序盤に言ってたが、本巻序盤も合わせ「忘れられない」ことも大概難儀。いや、良太に【ライトワンス】が無かったら奈波が存在を繋ぐ事さえ無かっただろうし、それが役立って寧子達の命脈を保った事も一度や二度じゃないが……当人が幸福かどうかという話。魔女を守る事に全力を注ぎ、彼女達が平穏を享受する事に幸福を感じ……父性だこれ……ハーレムの主(兼寧子親衛隊・軍師)の筈なのだが、メンバーが増えそうなのだが。もう修羅場に振り回されてMOGEROと言われる位が丁度いいんじゃないか(諦)。


 ううむ、単行本の感想記事らしさとは何なのか。どうにも先のことに触れずに書く、というのが上手くない。


【第6巻】収録分頭〜推定第4章完了【単行本派ネタバレ注意】