ALORC-Bottle-Craft-512-Logbook(Ⅱ)

AよりRへ。記録を継続する。(二冊目)

《最後の愛撫/Last Caress》/『極黒のブリュンヒルデ』第48話

(前回感想はこちら)
(第1〜3話の無料閲覧はこちら)


―――ッ!?!?!?

―――脳汁が攪拌されんばかりの 大 激 動 どんでん卓袱台返しに、些かならず混乱している……。
 作戦面考察パートに恋愛面告白パート、更に組織面斜め上パートって常にも増して盛り沢山にも程があるのぜ……特に最後が読者(感想考察書き)殺し。勿論カズミ推しとしては真ん中もだがっ。


Logic Time / Time Logic

「お前さ・・・なんでこんなとこで靴下脱いでるんだよ」
「別にええやん 蒸れんぬや
なんや村上 足フェチ化? なんなら足コキしちゃろか?」ワキワキ

「ばっ・・・お前はどこでそんな単語覚えてくるんだ!?」
「なぁ村上 えぇ加減自分に素直になったらどうや?
体の欲求に従えば楽やで?」プニ

「お前そんなこと言ってる場合じゃ・・・」
(・・・違う これはカズミの虚勢だ 一番怯えているのはカズミ自身なんだ)
プニプニ


「ふむ 良太 いい機会じゃないか この際この子に筆卸をしてもらえば」
「はぁ!? そんなこと出来るか! この状況で!!」
「この状況だからこそだ 命の危険を感じると性欲を増すのだよ 種族保存の欲求で自分の遺伝子を後に残そうとするために
彼女が今セックスを求めるのは極めて正常だ 彼女が本気で死の恐怖に怯えているのなら それを慰めるのが男の務めではないのかね」
「でも・・・」
「……なんか あれやな そうやっておっさんに後押しされると不愉快やな やる気無くすわ」「……」
「面倒くさい乙女心だな・・・」
「だから女は嫌いなんだ」


 第4巻発売直後にすかさず表紙に絡めた素足ネタを持ってくる……いやらしい……というのはさておき。女性嫌いと放言しながらも「男の務め」とか仰る小五郎さんの甥へのDT捨てる後押しとかもさておき―――とりあえず小五郎との相談に、カズミ同席の上で自在かつ確実な予知能力者の存在が提示されたのは懸念ひとつ解消。遠慮して情報をぼかしたり、カズミを同席させず独りにしたりなんて想像するだけでゾッとしなかったので。
 ともかくも、瑞花対策。「だが正直言って情報が足りない」、という小五郎の言は、読者視点でさえそのままだ。佳奈は瑞花の【予知夢】において具体的に何がどう働くかを知らず、前回期待したような補足情報は得られなかったので、尚更に。
 かといって補足が無かったわけでもなく……簡潔に、【予知】である事は間違いなく、時間移動の類ではない。なら未来の人間に話しかけられるか、物体を動かすか? そういった観点から「未来に干渉する」というキモというべき部分への推察を良太と小五郎は重ねる。沙織の巻き戻しやキカコの「んちゃ砲」を筆頭に、常識で測り切れない【魔法】相手にこの間まで科学的常識の徒だった小五郎が何処まで、とか思っていたのだが、なかなかどうして―――


「ふむ しかし・・・
相手の能力は 自由に正確な未来を見ることが出来る
そして 未来の人間に話しかけて干渉出来るかもしれない これは強敵だぞ
彼女を救うのは ほぼ不可能に近いね だが・・・気の毒に」

「向こうも相手が悪かったな
我々じゃなければ 実現したんだろうが・・・」

「ああ おれもそう思う」

「では 作戦会議をしよう」
「カズミ 言っただろ 必ず未来を変えてみせるから」


 頼りになるMADってこういう時は本当に頼もしいですね()! そして良太も前回の気落ちぶりは何処へやら、確信に満ちている。二人の会話に口を挟まず、自分が死ぬ蓋然性の高さに小五郎が言及した時も動かさなかったカズミの表情が、一転驚きに変わった所に良太がダメ押し、もとい念押し。何この似た者叔父甥天才コンビ格好良過ぎる。
……ざっと思い返してみるにだ。エルフェンでもノノノノでもこういう場面って無かった気がする。楓荘面子の半数はギリギリまで鉄火場に触れぬまま、敵側は追い詰め側。奥信高校は『ジャイアントキリング』みたく監督が光るチームではなかったし……悪知恵を働かせてたヤツはいたか。ともあれ智慧機転で不利を覆すのが戦闘時の基本である極黒において、移動速度(徒歩のみ)と引き籠りに難こそあれ、実に喜ばしい頭脳戦力追加。MADがMADであるが故の危なっかしさと、ハーネストの中の人に張り付かれたりガン見されたりでナニカサレタ疑いは消えないけれども。

 閑話休題。なにやら地図を広げたと思しき描写と、予知の期限が二日後であることが好都合/一週間後だったら収拾がつかなかった、という良太の言からどんな策を張ろうとしているのか……正直まったく判らない。とりあえず、「未来に行く事が出来る」と瑞花が言った時点から想像された彼女への能動的アプローチ、こちらへ感化させる事での予知妨害不発という類ではなかろうとは思うのだが。地図……これが地図じゃなかったら前提から外れるけれど、何かシラミツブシ的な範囲を……広域、封鎖……干渉手段は人間……話しかける*1……居なければ……一時的にでも無人地帯を―――カズミなら、作れる? 今この時に思いついて書いたが、はたしてどうだろう。やはり確信は持てない。カズミ自身の手で状況を変えられるという点で個人的にはいい線なのだが……およそ生半可な想像が通用する手合いじゃない事を、今回思い知らされたしなぁ……。


「告白」


「ごめん カズミ」「なにがや」

「怖がるな なんて言っても無理だよな おれは無茶を言ってお前に我慢をさせてたみたいだ ごめん
ひょっとしたらおれは・・・お前が落ち込んでる姿なんてみたくなかったのかも知れない
でも・・・お前のカラ元気を見るのは もっと辛い」

「……あんた ホンマに鈍感やな」「えっ?」

「私のカラ元気が今日だけのことやと思ってたんか?
死ぬことに怯えてんのが……昨日今日始まったことやと思ってたんか?
ずっと怖かったし・・・ずっと寂しかったんや
薬が手に入らんと このまま死んだらどうしようって・・・いつもそのことばっかり考えてたわ
でも・・・みんな死ぬことばっかり考えて 暗なってしまうやろ
だから 私だけでも無理して明るく振舞わんと・・・」

「ホンマはずっと・・・誰かの前で泣きたかったんやけどな・・・」

「……カズミ・・・」ゴシ「なんてな」
「えっ!?」「冗談や」
「びっくりしたか? 私の泣きマネ 女の涙を真に受けたらあかんで」

「……何言ってるんだお前・・・今更そんな強がり・・・」
「強がりちゃう 本心や」

「うちらはな 研究所を逃げ出したときから いつでも死ぬことは覚悟してるんや
のほほんと生きてる普通の女子高生と違うわ 死ぬことなんてなんも怖ない」
「どうしたんだよ急に・・・」
「せやから・・・もし あんたの立てた作戦がダメで私が死んでも・・・
あんたがなんも責任感じることなんて ないんやからな
死んで当たり前なんやから なんも悲しまんで ええんやからな」

「……カズミ・・・」
「まぁ・・・これが最後かもしれんから・・・ 今のうちに言うとくわ」

「私 あんたのこと 好きやったわ
結局・・・死ぬ間際になるまで 素直に言えんかったけど・・・」

「……カズミ・・・そんな遺言みたいなことを言うのは やめてくれ まだ・・・」
「だから ええんよ あんたが一生懸命 私のために・・・がんばってくれてるんは ようわかってるから・・・
ホンマ・・・ありがとう・・・」


……なんかね、もうね。弱みを見せるとか隠れて泣くとか、3章からのカズミ伏線が凝縮されて最近の良太気負い加減と渾然一体になって鼻血出そうだった。ぶっとく硬い死亡フラグが屹立する音なんて聞こえない。
 なまじ平穏な日常シーンが続いた事もあり、寿命問題・寧子の記憶問題に続き改めて主人公に突きつけられた、魔女の死生観……同時に、冗談だと笑った部分も本音には違いないのだと思う。両方とも本心で、その両方からカズミは言うのだ―――仲間に、良太(好きな人)に負担をかけたくない、悲しませたくない、と。良太とエロいことしたいのも本心だろうがな!
 千絵姉さんが小鳥に命を託したように、奈波が友達となった面々から記憶を持って逝ったように、寧子が自分が生き永らえるより良太が生きている方が嬉しいと言ったように……それぞれに形とやり方は違うけれど、きっと同じ死生観に根を持つ。村上良太の戦いとは、刺客相手の死線以上に彼女達をそういった部分から遠ざけ、「普通」と「平穏」に安らげさせたいという意味合いを含んでいたと推量するが……彼の努力が無為だった訳でも、その想いが伝わらなかった訳でもなかったが……どうしようもなく絡み付きこびりついて離れなかった。もしも早期に、あるいは今後鎮死剤の問題が解決できたとしても、易々と抜き難いそれは、楔の如く。

―――なぁ、試験が終わったら海行こう。ケーキバイキングでもいい。絶対行こう。もし彼女がクラス2位を取れてたら、その時は……


THE Changeling

「では 予知を初めてもらう」

「まず 予知の目的は・・・逃走した1107番の捕縛だ
この写真が1107番 今回の標的だ
彼女を回収して 我々の手でイジェクトしなければ・・・地上の生物が絶滅してしまう」

「だからなんとしても 彼女に埋め込まれたドラシルを回収しなければいけないんだ」


……で、少女達を魔女に改造し、ああいった死生観を持つに至らしめた元凶巣窟であるヴィンガルフ。今回にしても大義名分でもって【スカジ】こと瑞花に予知を実現させようというハラなのかもしれない。前回明らかにされた1107番を放っておいては地球上生命が危ういという危機……その真相は如何にやら。それが明らかになるよりも早くに、あまりに唐突に発生した大問題がある。つまり―――1107番とは黒羽寧子ではなく、鷹鳥小鳥である。わけがわからないよ。待て、ちょっと整理させてくれ。


  1. ビーコンには現場音声を運用側に送る機能は無く、沙織死亡
  2. 故に、沙織戦後も寧子と良太の正体は割れなかった(1〜2巻)
  3. 小鳥登場。挙動も説明も不審な所は多く、幾つもの憶測を呼ぶ
  4. 独自の情報を持つ佳奈もカズミも小鳥の存在を知らなかった
  5. 佳奈の予知で寧子を殺す刺客かと思われたが、そうではなかった
  6. 他の脱走魔女を殺しにきたキカコと知己である寧子が交戦
  7. 寧子を追い詰めたキカコを、小鳥の魔法を活用しハングさせ逃走
  8. 研究所がキカコを尋問した結果1107番の生存が確認される(2〜3巻)
  9. 中軽井沢教会跡にて警官に捕まった良太を、寧子と小鳥が救出
  10. この結果、研究所に1107番・7620番の出現が確認される(3〜4巻)
  11. 奈波が1107番捜索任務に就けられる。読者に資料写真の表は見えない
  12. 一時反逆した奈波が良太の記憶から1107番を発見する
  13. 「小鳥」「カズミ」「寧子」「佳奈」が天文台に居る
  14. 「見つけた 1107番」その場に居たのは良太、小鳥、直後に記憶操作された寧子(4巻)

―――いかん、結構辻褄が合ってしまう。合わないと困るけど。キカコや課長さんの状況から【転位】魔法の仕業と察し小鳥(1107番)と特定したなら……でも直接顔合わせたのは寧子なんだし、プロローグ前フリからしても誰だって1107番は寧子だって……そー思うじゃん? 見事にミスリードだったよ! 小鳥のメイン回は2巻までで終わった……そんな風に思っていた事もありました。

 それもこれもさておいて、小鳥が世界の危機を招く存在……正確には彼女のハーネストの中の人、推定【グラーネ】の宿主だとすると……寧子は一介の脱走魔女で、佳奈と何らかの相関こそあるが世界の命運メインストリームにおいて、何ら特別な存在ではない? 本 当 に ?
 今、敵味方ともに差し迫っている状況。その先の先、元から曖昧模糊としていた先の先の先の先が、完膚無きまでに読めなくなった感想考察ブレイカーでしたとさ。流石は岡本倫ドS、斜め上を突き抜け一周回って2巻収録分掲載時にもどってきた、かも? どころじゃ済まないかも知れない!

*1:この辺、瑞花が「夢の中では自由に動けて人と話が出来る」という部分の詳細が気がかり。