ALORC-Bottle-Craft-512-Logbook(Ⅱ)

AよりRへ。記録を継続する。(二冊目)

《運命の日/Day of Destiny》/『極黒のブリュンヒルデ』第52話

(前回感想はこちら)
(第1〜3話の無料閲覧はこちら)


「ホンマにこれで・・・良かったんやろか・・・」

 ドーモ。極黒読者=サンたち。2週ぶりを待つ間、メガテン系やる夫スレを読み齧って終末期・極限状況における人間心理・極端思想について色々考えたり考えなかったりした感想書きにて候。贔屓目である事は承知だが、見ようによってはカズミのプロバビリティーなんてまだまだ人間的で可愛いもの……だからこそ世に蔓延る罪悪、防ぎ難い事態であるかもしれないが……それにつけても、「フラグが乱立し過ぎて無事な未来が息してない」にも程がある。
 単行本にまとめる際、各話の境と共にサブタイトルも消える以上はそう重みを持たないだろうと思いつつも、今回ばかりは大きなターニングポイントなのではないか、とも。


Final Operation

「今回の作戦のために 貴重なスカジを潰した もう失敗は許されない」
「ご心配なく 既に予知は終了して襲撃の手はずも全て整っています 何も問題はありません」
「だが・・・魔女どもには人間の協力者がいる」

「今までに 沙織 キカコ 奈波*1 3人の高位魔女が任務に失敗した
Bクラスの魔女達が何人集まっても 高位魔女と渡り合えるはずがない*2 恐らくは警官達が見たという高校生が入れ知恵をしているんだろう
その高校生の目星は付いたのか」
「いえ ですが スカジの予知の確度は100%です たとえ何か不安要因があったとしても
彼女が未来に干渉して排除していることは間違いありません*3
今回は既に判明している居場所を急襲し捕獲するため・・・魔女は使わずに特殊工作員の精鋭を用意させました 1107番は 必ず生け捕りにします」

「……わかっているな これが失敗したら 君も最後だ」
「もちろんです」*4


 ひとつ、イチジク所長のみならず黒服も今回の作戦が最後の機会である。もしも1107番(小鳥)を捕らえ損なうことがあれば、これまでの失敗も込みで責を問われ……地位を失うか二重の意味でクビが飛ぶか。そうなった場合、後釜に据えられるのは『エルフェン』能宗的に過激で目的達成に手段を選ばない人材かもとは予断で、先入観。
 こちらからすれば当然、両名の地位保全よりも天文台の平穏の方が大切なわけだが……何処まで真実か判らない「地球上生命全滅の危機」を防ごうという側、あるいはその大義名分の裏で組織100年の大願を実現せしめんとする側にしてみれば、市井に生き永らえる魔女達とその協力者は「悪」なり「邪魔」なりであるはず。1107番ひいては【グラーネ】のみが重要ないし他は無視しても「計画」に差し支えない程度である可能性もあるが、いずれにしても良太の、今となっては「皆」の願いとは相対せざるを得ない。たとい今回を乗り切れても、最早平穏は長く続けられないかも―――と良太の策への信頼とは別に、否応無しに不安は募るわけだが、


「約束」



「それじゃ・・・明日の夜明けに またみんなで ここに集まろう」

(みんなは一体・・・どれだけ信じているんだろうか
またここに 全員戻ってこれるって事を・・・)
「行こう」


「やっぱり ここへ来ると・・・千絵ちゃんのことを思い出してしまいます・・・」
「……あんた 怖ないんか?」
「怖いですよ でも せっかくまだ生きてるんですから くよくよしてちゃ損です」
「……」

「……なにこれ? とりあえず カーテン全開にしまーす」
「あーー! カズミさん見てください あれ!」「……」*5


『久しぶりね ここ ダム工事始まってるのに よく壊されないで残ってたもんだわ』

「それじゃ・・・また夜明けに 天文台で会おう」
「必ず行く」

『前は ここでこうして寧子と二人きりで暮らしていて それだけで幸せだったのにね』
「……私も 佳奈ちゃんと同じ事考えてた」

「誰にもいなくなって欲しくない・・・また みんなで 天文台で暮らしたい・・・」


「そうですか カズミさん・・・ここからいなくなるんですか・・・」
「……小鳥・・・」

「わかりました!! それじゃ明日の朝に また天文台で会いましょう!!」「!?」

「カズミさんも ちゃんと来てくださいよ!!」
「……ほんじゃ また後でな」

「……大丈夫や!! 小鳥は 殺されへんのやし……!!」


「あっ! 寧子さん!! 寧子さんどうしたんですかーー!!」ガバッ
「わた! 小鳥ちゃん!!ちょっと……!!」

「村上くんの手紙に書いてあったの ここへ来るようにって」
「嬉しいです!! ひとりで寂しかったんです!!」


「村上・・・!! 村上!!」バッ
「!? お・・・おい・・・」

「心配するな もし計画がばれていたら おれたちはとっくに殺されている 大丈夫だ」
「……」

「……そうですか カズミさん・・・そういう未来を選びましたか・・・」
「もう 帰らなくちゃ・・・」


 ひとつ。「夜明けに全員無事で集まれる」気がしなさ過ぎる。否、「皆」でそうしようという意気込みを重ねに重ねているせいで、逆にそうなる気がしないという。正確には、「できるならそうしたい」か。良太の策に賭ける他なく、失敗しても彼を恨むことなく、死ぬ覚悟は最初から決まっている。だがそれは今生きている事を諦める理由ではなく、仲間と共に暮らす日々の幸福を知り、それを喪う事への恐れもまた在る。だから良太を信じ、皆で生き残る事に全力を傾ける―――しかし私欲で輪から外れかけている娘さんが一人、惚れた男に告白したばかりで倍率ドン。自分を騙しきれない罪悪感も込みで。
 また本章で唐突に重要度の跳ね上がった小鳥は、捕まったら然るべき場所でイジェクトされることが確定しており、寧子はカズミが書き換えた手紙に従って瑞花の予知した死地(山荘)に到着。更に言えば、現時点で佳奈には誰もついておらず一人きりである。最後はちと不安視が過ぎようが、「動こうと思えば動ける」が「動いたら寧子が死ぬ」*6事を鑑みると現状、襲撃間近の山荘以外で不確定要因が発生した場合に一番危険かもしれないことは懸念として明記しておく。感想記事というよりメモ帳の体になってきてるやも。

……それにしても、このところカズミが暗い顔続きだったり瑞花がテンションハイ→魔女ときて崩落したり、他の面子は余り表情が動かなったりする一方で、我らが保存食さんは安定の清涼剤だなあと。憂い顔→くよくよするまい、カズミを笑顔*7で見送ったけど寂しくて一人パペットマペット*8してた所に寧子来訪に感激抱擁。
 疑惑に妄想を重ねた第2章が終わってからはノーマークだったけれど、唐突に重要な位置にあることが明らかになった魔女が、ある意味で誰よりも普通の少女らしい在り様であること。それは亡き「姉」の願いであろうし、彼女の本質的なことでもあろう。高千穂ヴィンガルフからすれば【グラーネ】の器の性格なんてどうでもよいことだろうけど―――カズミが死なないという予知の変化が真であれば、現状寧子に次いで死に近い少女が、その笑顔が喪われる事なきようにと。ずっとウザ可愛くアホの子ボケてればいいんだよ!


Surprise Attack

目標はブリーフに記載された少女 生きたまま確保する
それ以外は 発見次第全て射殺しろとの命令だ

行動開始は2時00分 敵は武装している可能性がある
万が一 銃器を破壊されるようなことがあったら 手榴弾を使え

目標を目視で確認 他 女1名
了解した 60秒後に作戦を開始する


 「特殊「急襲」部隊」てほとんど「Special Assault Team」坂東さんが居たSATじゃないですかやだー!! 汚い流石公権力を握った悪の秘密結社汚い。ただ、あくまで通常の部隊でありヴィンガルフ専属の対魔女・耐魔法装備とかではない、或いはそもそもそんなものは存在しない、かもしれないのは幸か不幸か。事情を知らなくとも(テロリスト等誤った情報を与えられていても)放っておけば人類社会に災いなす存在の相手をする/できる/させられる……彼らの今後如何によっては、今次作戦への意味合い思い入れが違ってくるやもしれんね。
 さておき、銃器を破壊されたら手榴弾というフラグ。あまり詳しくないが……防ぎ損ねて/ハング状態で直撃にしても、【破撃】で部分的に防いだとしても、読者視点の瑞花予知のごとく胴体に大穴が出来るようなことになるのかどうか。あと目標(小鳥)を確保する前に使ったら巻き込みかねない……微妙に解せなさが残るのだよな。瑞花も「寧子が特殊部隊に殺される」とは明言してないし。その辺りがヘクセンヤクトの介入闖入を恐れさせる。

 なんにしても……今しも1分後には山荘に突入されて、寧子銃殺・小鳥捕獲の危機について、駅前でカズミと合流した良太からどう対処できようか、というのが直近最大の疑問である。「既に仕込みは終わっている」というのが妥当なところだろうし、実際そうでなくてはどうにもならん。次回以降、その答えはどういう形で描かれるのか。まず突入部隊視点で、合間合間に良太が語りカズミが聞かされたり? そして、カズミが侵してしまった行為の是非は……少なくとも「朝まで良太と一緒」が全然色っぽい展開にはならんだろうなとは思う。

―――かくもフラグにフラグを重ねた状況下、その運命を打ち砕けるや否や。全ては其処に集約される(大雑把)。

*1:おもむろに所長が名前呼び。単行本6巻収録時に番号ルビ加筆でも、と思わなくも無いが黒服が「瑞花」と呼ぶような含意は一見感じられない。それ以前に感情が読み取れなさ過ぎる。

*2:そこまで断言されるほど力の差があっただろうか、と実績面から思うものの……良く考えると出力/破壊力、持続力に圧倒的な格差があり、「運」か「情」が無ければ死人が出ていた。また瑞花に対し佳奈がそうであったように、高位魔女への劣等感ないし諦観が染み付いてる所為もあるか。その意味で良太の功績は実に大きく、「魔女を扱うプロ」にさえ認められるものだということ。

*3:どうして「騙して」「使い潰した」彼女の事をそこまで信用できるのか。いや、信頼したのは能力の方か。確かに殺されない為には役立たねばという考えではあったが……実際必要な情報は吐いて逝ったが、なんともモヤモヤ。

*4:口元に不審な笑み、その壱。実は命令系統もしくはセクションが表面上とは違うところに属しており、所長の監視役とか……それにしては傍に居ない時もあるが……少なくとも二人は一蓮托生ではない、とか?

*5:口元に不審な笑み、その弐。小鳥が窓の外に発見した「何か」(想定されるのは、犬?)。それは作戦において有意義つまり小鳥の脱出に役立つか、単に心を和ますもの。それでいて“カズミに意図を悟らせず”“予定通り小鳥を置いて行かせ”られるもの。ああ、意図には気づいてもいいのか? でも実際には気づかずに罪悪感いっぱいな感じに。

*6:逆に言えば、寧子が死んだ後ならば自由に動けると読めなくもないか? また魔法的因果関係にあるとすれば、それと悟る事も可能かもしれない……でも沙織戦では「寧子死亡予知が実現した後に巻き戻った」ことを認識できなかったようだし……? ただ「大筋が最初から決まっている」本作の性質上、設定の後付矛盾は多分にないと見る。

*7:これこそ「悲しいときほど笑顔で居なさい」かもしれんね。ただカズミ(と佳奈)は、その辺の事情告白に居合わせていないな。

*8:つくづく思うこと。どこから出てきたそんなもん。佳奈ゴス服の換えとか水着とかカズミのデート着とか例のバイザーとか。全部が廃村から出てたらそれはそれで凄いが、服屋で買い物なり通販なりしてる描写も無いのだった。小鳥の学園生活と同じくらい不明瞭っ。下手をすると描かれないまま終わりそうな所とか特にっ。