ALORC-Bottle-Craft-512-Logbook(Ⅱ)

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『美大受験戦記 アリエネ』第56話――《アミーシャの口づけ/Kiss of the Amesha》

「よかった・・・ウザい女だと思われて・・・嫌われちゃったかと思った・・・」

(第55話の感想はこちら)

 第56話「BEYOND THE EASEL」(1月7日発売ビッグコミックスピリッツ掲載)。前合併号休載につき、3週ぶり。更に今号も合併号。なんだそりゃぁっ!

 もしかしてこれが初めてかな。いや弱音を吐く事自体は初めてじゃないはず。歌川有が葛飾夢に、一人の男性として自信不足を吐露したことが初なのか。芸大助教授という地位、アートの世界で戦ってきた先達であり、昔から夢の事を知ってもいる。それに対して自分は……という劣等感。浪人組の画力を見せられた直後でもあるし、学力でも夢の助けを受けてるし。特訓は実際不可欠でも、焦りが濃かったのか。

「でも……とにかく限界まで努力して、絶対に・・・君が安心して、頼れるような男になるから・・・あの人を超えられるような男に・・・絶対なるから・・・」

「色々不安になるけど・・・有くんが好きだから一緒にいたいし・・・一緒なら……助け合える……」

 そうして初キス、不安な胸中を曝け出しあった二人の仲は一層深まったのだった。弥生さんマジ不憫さん。それにしても、芸大受験も大概なのだろうが、速水遼平を超えるとはまた自分でハードル上げに上げてきたものだ。安牌という発想が無いのだろうか。「大学に合格できなんだら家を出なければならない」とは毎週粗筋に書いてあるけど、良くも悪くも普段から全然それを意識してない気配もある……動機が定まったら原因への恐れは消えたのかもしれない。恐るべき前向きさというべきか。ましてリア充状態。

 他方で、速水が有の事を予想以上に買っている事が明らかになった。コンクールの夜に夢の携帯への着信、それは夢ではなく有の出来を気にしての事だった。そして折り返し電話し「自分がついてるから大丈夫だ」と夢……その時は有の彼女として。
―――自分の為のみならず、こんな己を想ってくれる人達の為に、何よりも夢の為に、受験合格への決意を固める有なのだった。「人達」枠の小磯君端っこ適当で微妙な不憫加減。踏んだ地雷をうまく処理、ないし順応できるとよいね(投槍)。