ALORC-Bottle-Craft-512-Logbook(Ⅱ)

AよりRへ。記録を継続する。(二冊目)

《戦争と平和の剣/Sword of War and Peace》/漫画『戦闘破壊学園ダンゲロス』第18話

【鬼神刀工】 の 意志 と 遺作

 月刊ヤングマガジン掲載『戦闘破壊学園ダンゲロス』。第3巻からの直行の次。シリアスな笑いに満ちていたこの頃、しかして今回は全編通して熱量的にも友情としてもアツイ回想、一刀両断嬢が持つ刀に纏わる逸話。「戦慄のイズミ」が支配した時代と言いつつ、しかしイズミ本人は出ないまま終結。となるとまたいずれ、この頃への回想があるのやも。


よう・・来たか福本・・待ってたぜ・・・・
頼んだ品は完成したんだろうな・・・・?
“ド正義卓也を殺す刀”は・・・・

(……!! 様子がおかしいから尾けてみたら・・“ド正義卓也を殺す刀”だと・・・・!?
ちくしょう福本のヤツ・・・・! とんでもないモン作らされてたんじゃねーーか・・・・!!)

「強力な妖刀を打つには・・・・ある程度時間が要りますよ・・・
強けりゃ強いほど時間がかかる・・・・ド正義がどんなヤツかは知りませんが・・
噂通りの強さなら そうだな・・・・せめてあと七日はみてもらいてェ・・・・」

(福本おまえまさか・・・・! 本気で打つ気じゃねーよなそんな刀・・!)
七日ありゃ・・・・“ド正義を殺す刀”は打てるんだな?
「“戦慄のイズミを殺す刀”でも多分いけるんじゃないですかね」
………聞かなかったことにしといてやるぜ・・・・
しかしまぁ お前に刀を打つ意志があるようで安心したぜ福本
その気になりゃ刀を打たす方法なんて幾らでもあるが
オレたちゃあくまでもお前の自由意志に任せたかったんだ
巷のド正義を英雄視する風潮に お前が流されなくてよかったぜ・・・・

お前は自分の立場ってもんがよくわかってる・・
お前にとって ド正義は英雄でもなんでもねェもんな
今校内に出回ってる(ぶき)の既に半数はお前の打った刀・・・
これだけ大量の武器を持ち込んだお前をド正義が見逃すはずがねェ・・!!
ド正義にしてみりゃお前も俺たちも同じ粛清対象ってワケだ・・・・!!
(そんな・・・・! まさか そんなこと・・・・!!
だが確かに・・今まで福本が打ってきた刀の量を考えれば厳罰もあり得ない話じゃない・・・・!?)

お前が生き残る道は結局一つ・・! 改めて依頼するぜ福本・・・・
七日以内に“ド正義を殺す刀”を打ってこい・・・・!!

「打 た ね ェ よ」

………なんだと?
「そんな刀は打たねェ ド正義は学園の平和を取り戻してくれるかもしれねェヤツなんだ
今ここでド正義を 死なせるワケにはいかねェ・・!!」

(なッ・・!? 福本ッ・・・・!?)
おいおい福本 気はたしかかよ テメェさっきの話聞いてたか? よく考えてもの言えよ・・・・?
(その通りだぜ福本 何考えてんだ・・! 意地張るにしたってここじゃねェだろ・・・!
今はとりあえずこいつらに従ったフリでもなんでもして切り抜けてから・・・・!!)

「お前らさっき「オレに刀を打たせる方法なんて幾らでもある」っつったよな
そりゃ要するにお前らの中に操作系の能力者がいるってことだろ
ここをうまく取り繕って切り抜けても・・その後すぐに操作されねェとも限らねェ・・・・
だったらオレの意志を示すタイミングが今しかねェ・・・・!!
オレはな・・・・入学してからこっち テメェらの言いなりになって刀打ってきたことに
激しくイラついてんだよ・・・・!!」

(助けに行くか・・!? いや・・・・・相手五人だぞ・・返り討ちだ・・!!)


「ようオメェか? 後輩のどてっ腹に必殺シュートで風穴あけちまったエースってヤツは
そう睨むなよ オレは福本 お前と同じ“魔人”だよ」

「おうエース知ってるか? 日本中の“魔人”が集まる高校があるんだってよ・・・・
希望崎学園っていうらしいぜ・・・・
“魔人”だらけのその高校でならよぉ オレの打った刀も認められるかもしれねェ
それに “魔人”だけのサッカー部だってきっとあるぜ
どうだ一緒に 進学しねェか?」

「バッカお前そんなもんもう打たなくてもいーーんだよ!
ド正義が「番長グループを皆殺しにしてくれるって!
それよりさオレ・・・・学園が平和になったらさ 魔人サッカー部作ろうと思っててよ!」

「それだけじゃねェ!! オレの刀がテメェらに悪用され放題なことにヘドが出る・・・・!!
なんの抵抗もできなかった自分の弱さにも腹が立つ・・・・!!」

(くそ・・・・っ馬鹿やろう福本・・・・!! ヤケになりやがって・・・!!
オレは・・・・オレはもう知らねェぞ・・!!)

「刀の使い方も知らねェテメェらド素人のクズ共のせいで!!
校庭は折れた刀の残骸と汚ェ死体の山で埋まってやがる!!」

「サッカーもまともにできねェだろうが!! あ゛あ゛!?」
(!!!―――)

「もう一度言うぜ!! 何度でも言う!! ド正義を殺す刀は打たねェ!!
オレがド正義の粛清対象だろうが知ったことか!!
これ以上お前らのために刀打つくらいなら 死んだ方がマシだぜくそったれが!!」

「そこまでだ・・・・! 僕の目の前で 暴力行為は許さん・・!」
何者だテメェ!?
「確認するが・・・・お前たちは「ド正義卓也」を殺すために・・・・
そこの男に 刀を打たせようとしていたな?」
だったらどうした!? 何者かって聞いてんだよ!!
「明確な殺意を伴った殺人未遂・・・・まァ 有罪だな」!?

【 超 高 潔 速 攻 裁 判 】!!

「福本くん・・と言ったな よくぞ拒否してくれた
場合によってはキミを 巻き込みかねないところだった」

「キミは趣味で作っていた刀剣を「番長グループ」に盗まれ
彼らがそれを勝手に校内で使用した・・よって無罪・・ということにでもしておこう」
「! そっ・・・待ってくれ・・・・!! そんないい加減なことでいいのかよ!?
アンタ「法の番人」なんじゃ・・!」

「今は何よりも戦慄のイズミ率いる「番長グループ」を駆逐することが最急務だ
キミの余罪を洗っているヒマはない 罰するべきは僕が決めるのだ
僕が無罪だと言ったのだからキミは無罪だ」

「ただし キミを罪に問わない代わりに キミの力を僕に貸してもらおう
戦慄のイズミを打ち倒し新生「生徒会」を立ち上げた暁には
キミは「生徒会」役員として僕の下で働いてもらう
どうもこのカッコのせいで僕は融通のきかない頑固者に見えるらしい
だがどうだ? 司法取引も慣れたもんだろう?」
「わかったよ・・アンタに力を貸すぜ・・・・
だが倒せるのか・・・・? あのイズミを・・・・」

「当然だ 僕は ド正義卓也なのだから」

(もう思う存分 刀を打った・・あの時ド正義に助けられなかったら消えていた命だ・・・・)
「後輩どもの未来のために くれてやるのも悪かねェか・・・・」
(いつか再び戦慄のイズミのようなヤツが現れた時のために・・・!
ド正義の力だけでは乗り越えられない試練が訪れた時のために・・・・!
“最強の刀をここに残す・・・・! エース・・・・適任がいなけりゃお前が持ってろ”)

「なんだよそりゃ福本 遺言みてぇな言い草だな」

「・・予感がすんだよ・・これがオレの・・・・生涯最後の刀になる・・」

「吸い込まれそうな輝き・・これが・・・・福本先輩の“福本剣”・・・・!」
(この刀は「生徒会」最強の“魔人”に持たせてくれ―――・・!)
「お預かりいたします・・!」
(福本・・・・お前が命懸けで打ったその刀は・・・・
お前と直接面識のない後輩たちにも・・・・しっかりとお前の意志を伝えているよ・・・)


“学園の平和を守れ”・・!!
“理想のために戦え”・・!!
お前達のリーダーは かつて 命懸けで学園を救った男だ・・!!
正義を信じて 進め・・!!


―――予想通り、あるいはそれ以上にド正義会長株上昇回であり、今回だけ見れば完全に清濁合わせ呑む善玉。というか生徒会メンバーから見たド正義卓也という男は真実かくあるものであり、その故に彼ら彼女らはその旗につき従う、といった所か。
 真正の悪人悪党ではまずないだろう。邪賢王ヒロシマと幼馴染であり、戦慄のイズミ達の暴虐に終止符を打ち、口舌院言葉をして「自分が殺されても彼の本意では無い筈」と言わしめ、もしかしたら鏡子さんの伴侶となりえたかもしれない男だ。だが同時に架神に言葉を殺させた上で処刑し、鏡子さんにも刺客を放ち、ダンゲロス勝利の果てに総死刑化計画と魔人の国をぶっ立てようと、ある意味では協調関係にあった邪賢王達と全力で殺し合っている。否、現時点では一方的に爆殺している。どうしたことだ、この違和感。どういうこった、本当に。

 「転校生」の介入テコ入れ、ないし番長グループの反撃と共に、早くその辺の子細が明らかにならないかと……月刊の上に話の「遅さ」に定評ある本連載においては望みの薄いことを願いつつ。