ALORC-Bottle-Craft-512-Logbook(Ⅱ)

AよりRへ。記録を継続する。(二冊目)

《認識を食うもの/Cognivore》/漫画『戦闘破壊学園ダンゲロス』第24話


――― とある 魔人 の 超誇大妄想狂(ギガロマニアックス)

 月刊ヤングマガジン掲載『戦闘破壊学園ダンゲロス』。第4巻からの直行の次。12月分1月号発売ギリギリ更新。
 かくしてド正義卓也の野望演説が炸裂せり。1話2話あたりをより強烈にした理屈立て、あるいは『刀語』じみた会話主体で二転、三転。嗚呼やっぱり、両性院は「そういうこと」なのか……? しかし生徒会長、貴方の部下も大概変態異常者揃いだと思うのですがそこのところどうか。【ユガミズム】で矯正自体は不可能じゃないとはいえ、主力メンバーでも矯正されず変態のまま、むしろ主力・要職なればこそ変態のまま清濁飲んでないかと―――逆に言えばそれだけ両性院が隠し持ってたモノの視覚的衝撃倫理的アウト具合はお察しということになる、のか? 実際問題として取引を持ち出した以上は転校生戦にあたって【チンパイ】は有用だと考えていたのに、釈明を許さず即処刑宣告とまでとなると。また「認識を共有」云々という論戦をしていたのに、最後の最後で意識の擦れ違いが生じてしまったあたり皮肉かと。


「両性院 知らぬなら教えてやろう “魔人”の力・・・・その本質を・・!」
「“魔人”の力の・・・・本質・・・・!?」

「既に“魔人”学会では“魔人(ぼくたち)”の使う能力について それがいかなる力であるのかあらかたの答えが出ている」

「それは 「自己の“認識”を他者へと強制する力」・・!!」

「“認識”を・・・・強制・・?」
「すぐに飲み込めずとも無理はない 簡単な喩え話を出そう 両性院 キミは 海を何色だと思っている?」
「えっ・・え・・・・?」「ひっかけ問題とかじゃない 素直に答えてくれ」
「青………ですか・・?」
「そうだ 「海は青い」これは共通認識だ 僕たちは皆海は青いものだと思っている・・・・!
だがここに一人の変人を登場させよう 彼は「海は赤い」と思い込んでいる 彼の“認識”では海は赤だ
だが他の者の“認識”では海は青いとなれば皆はその変人のことをこう思うだろう 「何を言ってやがるんだこのウスラトンカチめ」と」

「それはそうでしょうけど・・・・一体これは何の話なんです・・?」
「ではその変人が “魔人”だったらどうなると思う? 彼は「海は赤い」という“認識”を持ち その“認識”を周囲の者へ強制する するとその周囲の者たちはどうなる? 当然彼らも「海は赤い」と考えるはずだ そのように強制されているのだからな そうしてその場にいる全員が「海は赤い」と考えるようになったらどうだ?
それはもう実際に「海は赤い」のだ・・!! 本当の海の色が何色だろうと関係ない・・・・! 変人が“魔人”であれば海の色は変わるのだ・・・・!!  変人と“魔人”の違いは その“認識”を他者に強制できるかどうかだ・・!!」

「“認識”・・というかそれは・・・・“妄想”なのでは・・・・」
「飲み込みが早いな両性院 そう要するに“妄想”だ より端的な言い方をすれば“魔人”の能力とは 「自己の“妄想”を周囲に強制する力」・・・・!! “魔人”の覚醒が中学二年生前後に最も多いことくらいはキミも知っているな!?」
「次いで幼児期・・・・! それぐらいのことは・・・・!」

「なぜ この年頃に“魔人”の覚醒が多発するのか!? 答えは簡単だ!!
この年頃の人間は皆 自分を特別な存在だと考えたがるからだ!!
自分は他人とは違う!! 他の者にはない自分だけの特別な力がある! 本気でそう考えてしまう!!」

「鏡子は鏡に手を伸ばせば いつでも“男”の股間に触れられると考えた!!
範馬くんはハンマーを投げれば それが爆発すると考えた!!
“魔人”の能力はどれも馬鹿らしい幼稚な”妄想”ばかり! だがその幼稚な“妄想”を本人が強烈に思い込んだ時ッ」

「人は “魔人”へと変わる・・!!」

「ちなみに“魔人”の能力に 比較的攻撃的なもの 性的なものが多いのもこのためだ・・・・! 中学二年生がする“妄想”といえばバトル漫画の主人公になりきることやエロイことと相場が決まっているからな キミの【チンパイ】もそうだろう? いつもそれを“妄想”していたから能力(ちから)を手に入れた・・・・! 違うかね?」「ッ………」
(でも・・・・そうか・・・・ド正義さんの言わんとするところは・・・・)
「・・・・つまり ド正義さんの【超高潔速攻裁判】も・・」

「そうだ 【超高潔速攻裁判】も 元はと言えば中学二年の頃の僕が考えた“妄想”・・・・!」

「僕の通っていた中学校は当時「番長グループ」の猛威に晒され荒れ果てていた・・! 生徒は言うに及ばず教師やPTAすら不良“魔人”どもには逆らえなかった 校則なんかもちろんなんの役にも立たない 誰も彼らに罰を与える実力がないんだからな・・・・!! くそったれの「学園自治法」のせいで警察も助けちゃあくれない・・・・!! あの悪法を僕がどれだけ憎んだか・・・・わかるか・・・・!?」

(「学園自治法」は確か・・・・!)
(ド正義殿のお父上が勝ち取ったもの・・!)
(もしかしてド正義さんは・・・・! 自分の父親が作った法によって 自分や級友たちが苦しめられる環境を作り出してしまったことに・・罪悪感を感じているのかもしれない・・・・!)

「中学二年の時・・・・僕はずっと思っていた・・
僕に凄まじい超能力があれば・・!! 僕が秩序を保ってやるのに・・! 校則に違反したヤツらを片っ端から死刑にしてやるのに・・・・!!
毎日毎日そんなことばかり“妄想”していた・・! もちろんそんなことは空想逃避に過ぎなかったはずだが・・あまりに“妄想”が酷かったんだろうね・・・・」

「僕は“魔人”へと覚醒し 校則違反者は死刑になるという“妄想”を周囲と共有した!!」
「――――――・・・・!!」

「これがつまり僕の【超高潔速攻裁判】・・!! これは素晴らしい能力だと思ったよ・・・・!!
あの役立たずの「学園自治法」も僕の能力さえあれば・・!! ようやく本来の崇高な意義に近づくことができるんだからなッ! ド正義克也(とうさん)の考えは甘かった!! 学生運動など所詮遊びだ!! 学園自治などでこの世界にあふれる“魔人”差別を根本的に解決しうるはずもない!!」

「だが僕はッ 不完全だった「学園自治法」を足がかりにッ もっと確実に多くの“魔人”を救うことができるッ
両性院! 僕はこの学園に一時的な平和をもたらそうとしているワケではないッ!!」

「「国」だ!!! 僕が望むものは“魔人”が安心して暮らせる平和な「国」!!
学園じゃない!! 僕はこの人口島に「国」を作るのだ!!」

「この異様に広大な学園は“魔人”の暮らす国として十分な国土がある!! 日本中の“魔人”がここへ集まり ここで一生暮らせばいい!! 僕の能力があればどれだけ“魔人”が集まろうと秩序は保たれる!! 「学園自治法」によって国家権力も僕の国に介入はできない!!」

「高等学校としての機能を形骸化させ
この学園を“魔人”のための国家へと作り変える!!
それが「生徒会」の最終目的であり 新校則施行はその第一歩なのだ!!」

「でもっ・・ でもその国では結局っ・・! ド正義さんの考える正義の下でしか生きていけませんよ・・・・!!」
「確かに! 僕の正義とは食い違う者・・・・邪賢王のように僕と対立する者も出るだろう!!」

「だが敢えて言おう! だからどうした!? 少数者が弾圧されるのはいつの世も仕方のないこと!!
僕の支配下では思想信条の自由はいくらか失われるだろう!!
だがその程度 僕の保障する安全と公平性に比べればッ 些細な問題ではないか!!?」

「そんな酷い状況では みんなド正義さんをッ・・ 好きになれません・・!! 嫌われてしまいますよ!!」
「だからどうした!? 中学の時もそうだった!! そんなことは覚悟の上だ!! キミ()に案じられる必要などない!!!」

「いいか!? 言っただろう“魔人”とは己の“認識”を他者へと強制する者!!!
しかるに!! 僕は僕の能力【超項高潔速攻裁判】を使い
僕の「“認識”する正義」を全“魔人”へ強制するのだ!! 
魔人”が“魔人”を治める国としてッ 僕のこのやり方は間違っていると言えるのか!!?」

「くっ・・・ うっ…… ッ……」

「………じゃ・・・・邪賢王ちゃんの・・邪賢王ちゃんのやり方にも正義があること・・ド正義さんはさっき認めてましたよね・・・・?」「・・・・?」
「相容れない二つの正義・・・・その二つがぶつかった場合・・・・そんな時は―――・・・・」
「そんな時は決まっている 力の強いほうが勝つ・・・・!」

「今回のハルマゲドンでは僕たち「生徒会」が勝利した・・・・! すなわち僕たちの「“認識”する正義」が勝ったということだ・・・・!」
「「“認識”する正義」が噛み合わなかったときは・・・・どちらか力の強い方が勝ち・・・・自己の「“認識”する正義」を押し通すということですか?」「その通りだ」
「それなら・・ 僕たちの能力の場合はどうなんですか・・!?」

「僕たちの“認識”も噛み合わなかった時はどちらか力の強い方が勝つんですか?
たとえば一人の“魔人”が「最強の矛」の能力を持ち もう一人が「最強の盾」の能力を持っていた場合・・・・
二人が戦えば一体・・・・どっちが勝つんですか・・・・!?」

(なんじゃそりゃ・・!? 何を言い出したんだ・・・・!?)
(“魔人”の能力は「思い込み」や「信念」ではなく“認識”・・・・! “認識”に強いも弱いもないと・・・・!?
「盾と矛」の“魔人”が各々相反する正義を持ち・・! 互いに力でそれを押し通そうとしても
この両者に限っては・・・・! 答えは出ない―――!!?)

(ド正義殿は自らの支配体制を そのやり方を“魔人”能力のアナロジーとして語っていた・・・・! 故に! “魔人”の能力論理に生じたこの「矛盾」を ド正義殿の論理に生じた矛盾として指摘したおつもりか・・・・!?)

(いや・・! 詭弁だ こんなもの・・!!)

(そのようなことが実際に起こる確率 0%ではなかろうが・・・・! しかし所詮はあくまで言葉遊びに過ぎぬ・・・・!)
(苦し紛れの言い掛かりみたいなもんだぜ・・・! そんなこと言ったところでド正義は・・・・)

「・・・・! ド正義・・?」「………えっ・・?」

「「最強の矛」と・・・・ 「最強の盾」・・・・?」

「…お・・ おいおい・・・・!」
「確かに・・ どうなるのだろうな・・ 互いを自己を最強と“認識”し・・・・また相手のことも最強と“認識”している場合・・ 力の強い方が勝つ・・・・とは言えないな・・どちらも最強なのだから・・・・」
(なんということだ・・・・ 気づいてしまった・・! 己の計画に 一点の誤算・・!!)

「…………! …………わかった・・ ド正義! 邪魔して悪いんだが ちょっとこれを見てくれ・・!」

「!! なッ それは・・ッ!!」
(なぜ ここに!!?)

「「番長小屋」付近に落ちてたものを アルパが勝手に拾ってきたもんだ・・ どうやら両性院の私物らしいんだが・・その・・中身がな・・」
「危険物でも入っていたのか?」
「ちょっ・・ちょっと待ってください 開けないでッ それはッ・・・・!!」
(まずいまずい・・!! 誰にも見られぬよう いつも肌身離さず持っていたのに・・!!
中身を・・アレ(・・)を見られてしまっては・・・・!!)
「ド正義さん待ってください!! それ(・・)にはワケが・・!!」
ビキッ・・

「両性院ッ 貴様 この異常者が!!
なぜこんなもの(・・・・・)を鞄に入れて持ち歩いているッ!?」

「ちがっ・・ 違うんです「答えろ貴様ッ!! こんなもの学校に持ってきていいと思っているのか!?」
「聞いてください!! 誤解なんですッ!!」

「貴様のような異常者を「生徒会」に入れられるかッ
貴様は邪賢王と共に特一級極刑を受けろ!!!
この二人をッ 「生徒会独房(プリズン)」へぶち込んでおけっ!!!」

「く・・・・うぅ・・・・う・・」
(見られて・・しまった・・ アレ(・・)を―――・・)


……思うに、当初のド正義卓也がここまでの考えを抱くのに「何があったか」などという考えは今更に過ぎていた。最初から環境からそうであり、そうでなくして彼がかくも滅茶な能力に覚醒することもなく事態がこうもならず、その逆は必然だったと。
 ダンゲロス世界における魔人差別撤廃を掲げた「学生運動」の主宰、ド正義生徒会長の父親。その仲間が平行世界からの旅人である「転校生」として当時そのままの姿で現在に現れるとは如何なる意味を持つのか。彼らが“成功してしまった”ことにより生まれた悪法が為にある現在、その因果は“転校生の謎に迫る”次回で語られ得るだろうか。あと誘拐された一刀両嬢がズタボロ「でも」逃走「できている」経緯についても?

 その一方、友釣香魚が両性院と会っておかねばという前振りだったのに今回ラストで動き出したのは怨み崎Death子さん。厳罰覚悟で邪賢王「さん」に一目だけでも、というのに加えて彼女が持つ「ラッピングしてるのにすごく臭い」物体……そして牢には「施術者」と「被験者」二人揃って……となれば順調に推移できたならば? いやしかし何処かで不穏なネタバレを喰らってた気もするし……しかし本当に、事が起こらなければお二人はいずれゴールイン可能だったんじゃないかと。鏡子さんとド正義のように、可能性を断たれた平行世界イフ。まだどちらかが死んだわけでもないけれど、楽観できる要素皆無ゆえ。