ALORC-Bottle-Craft-512-Logbook(Ⅱ)

AよりRへ。記録を継続する。(二冊目)

《希望の喪失/Lose Hope》/『極黒のブリュンヒルデ』第27話

(前回感想はこちら)
(第1〜3話の無料閲覧はこちら)

「私の身体・・・あんたの好きにしてもええんやで」
そして良太を待ち受けていたものは―――

「……なあ 村上は寧子のこと好きなん?」「は?」
「……なんだよ急に……」「どっち?」
「別に好きってわけじゃ・・・」「ほんなら良かった」
「それじゃあ私とHせぇへん?」
「!?」
「それとも・・・ この状況になってもムラムラせんほど
私に魅力ないんかなぁ・・・」


……さて、単行本第2巻の発売を挟んで二週間ぶりの『極黒のブリュンヒルデ』でございます。これまでも一週間スキップした事はありましたが、今回が一番待ち遠しく感じられ、また多くの同好の士諸氏もそうであったろうと想像いたします。第二章で合流してからというもの何故か良太にアプローチをかけ続けて、推定第三章に入ってから強烈なヒロイン力を発揮してきたカズミ。魔女たちの寿命を支えている鎮死剤の手がかりを求め、どんな罠が待ち受けるとも知れない場所に赴くと決めた良太の家に押しかけて、折りよく?御母堂が留守で二人きりで……どうなってしまうのかと思ったわけですが。


「なんで・・・お前はそんなHなことばっかしたがるんだよ」
「理由がいるん?」「えっ?」
「私の感情・・・全部ロジックで動いてやんとあかんのか?」


「そんな……揉めって言われても揉めないだろ
つまむの間違いじゃないの
ガッ
「これはホンマに殺しても無罪を勝ち取れる自信あるで!!」


「ま・・・まあええわ! いきなり童貞には刺激が強いやろからな
今日はこれくらいにしといちゃる!!」
「……」スリスリ
「なんや? それとも物足りんのか?」
「バッ・・・バカ言うな! お前と違って俺はロジックで生きてるんだよ」
「それじゃやっぱり 本心は私とエロい事したいってことやんか」
「寧子に気を遣って手を出さんだけで」
ドキッ


「まだ起きてるか?」「……」「もう寝たか?」「……」
「明日・・・あんま無茶せんときよ・・・」


―――ふう……。


 結局のところ、良太は雄になれなかったし、カズミも雌になりきれなかった。双方とも童貞処女ゆえ仕方なかったのかもしれないが……いつものボケに斬影拳から半裸でマウントポジションに入られた返しに全裸のカズミを押し倒した段では、結構ヤる気になってたのに。『エルフェンリート』のコウタとユカの時もそうだった気がするが、岡本倫の主人公は性的な意味で手癖足癖が悪いような。それでカズミの未開発な乙女()をびっくりさせてしまい、今回はお流れとなった。なってしまった……? ある意味で問題の先送り、ある意味では今後の為のファーストステップ、かも。そんな余裕があればな! あの二人、間違いなく仲は良いんだよ。喧嘩するほど的な意味で。

 しかし、私はガッカリしてるのか、それとも安心してるのか? 『極黒』はその過酷な状況設定と伏線がために常に死亡フラグを意識せずにはいれない。今回カズミが想いを遂げてしまったり、良太がカズミを明確に拒絶してしまった場合、近く迫る刺客の危機への恐れがいや増してしまうと懸念されていた。命短し恋せよ乙女と言えども、破滅的未来が予見されていても出来得る限り、いやさ限界すら超えて生き残る、生き残らせてほしいと私情は告げる。だけども只でさえ時間が限られ機会も多くないのに、こういうことになったのが惜しまれるのだ。夜明けのコーヒーとか朝見送りとか描写しようぜ! 求む加筆!


 ところで、理由。そう理由(または動機)が今回明らかにならなかった。先週ミラクルジャンプで連載開始した『君は淫らな僕の女王』においては、ヒロインの「好きになるのに理由が必要なの?」という台詞があり、今回も「ロジックでなければ駄目か」という言がある。繰り返しになるが実際、良太という主人公の男気甲斐性は大したもので、フラグ云々を問わずとも魔女達が惚れるに足る……スペックが好きというか、それを用いる行動が読者視点でも株を上げに上げてきた。だからといってもげろと思わないことが無いでもないがな! 佳奈にも時折、カズミには割といつもぞんざいな物言いする(そして蹴られる)し。

―――逆に考えてみよう。この第三章は良太がカズミにフラグを立てるエピソードではない。それは既に立っている。逆だ。カズミが良太にフラグを立てる話なのだ。過去のトラウマと命の恩と寧子への感情が渾然となって、魔女たちに対して父親じみた保護者状態の良太を撃墜する為に頑張る話。根っこには「こっこほしい」系の夢があるのかもしれんが、目的の為の過程に心奪われはじめた乙女に幸あれ! ……本当に、幸あれ。


“ゆうべは おたのしみでしたね”

 そんなこんなで翌日。早朝図書館で調べ物をして、目的地が中軽井沢に建つ「教会」であることを確認し、其処にやってきた良太だが……

  • 教会は既に廃墟だった。秘密を漏らそうとした誰かは既に捕殺された!?
  • 2、3ヶ月前に爆発や怒鳴り声が……神父が行方不明に!?
  • 聞き取りをした売店の老婆が警察に通報(゚Д゚)
  • 跡地で手がかりを見つけた傍からタイーホ


……なんだこの絶望的状況は……流石のドS()。それにしても高千穂は、公権力や地域住民にどれだけ影響力を持ってるんだ。対キカコの折に発砲許可が出てるとあったが、出てるのと撃てるのとは違うと思っていた。能力次第で無手でも人間を容易に殺傷できるのが魔女であるが、見た目は十代の少女に過ぎない。翻って今回、一介の高校生に対する反応としては異常に映る。老婆は何か後ろめたい様子であったが……問答無用で住居侵入、公務執行妨害に不退去を合わせ拘束して手錠ときた。どこの宗教団体への対応だ。
 彼らは良太を、その背後について一体どんな情報を与えられ認識しているのだろうか。坂東さん……みたいな猛者は出てくるとむしろ困るが、官憲所属の人がどういう目線かが気になるところで、新キャラ求む。あと眼鏡♀()。
 あと何気に、最序盤に懸念された自衛隊等公権力の前に高校生に過ぎない良太が無力化される事態が初発生。秘匿の為に魔女と通常部隊は連携させず、キカコ戦ではカズミが警察無線を妨害してくれたからそういうことにならなかっただけで、良太一人だと逆にこういうことになる可能性を忘れてたかも。


 他方、微妙に不審な点のある脱走事件を手引きしたのではとか、端末の通信から寧子達の居場所を把握してるのではとか、なんとなく研究所よりも情報面で先んじているかもと推定抵抗組織について期待していたが……良太が寧子に出会った時点で疾うに拠点が襲撃の憂き目にあっていたとは……? あ゛、作中時系列がよくわからないことになってる。三ヶ月前は確実に夏じゃない、よな?
 そして「真実」を知る生き残りが居るかということ。なんとはなしに複数人居ると予断があるが、まず行方不明の「神父」が主要人物で、彼と接触できるかが寧子達の延命に繋がるだろうか。黒羽寧子≒クロネコの件や、良太の父や弟のことを穿ってみるに公的に死亡とされても生きてる可能性はある一方で、逆に殺されているから行方不明とも……まあどうとも取れるのだけど。
 もしも生き残りと接触ができなければ、残る手がかりは良太が目撃した壁の文字……「魔女を殺せ」という端末の指示と同じく、ドイツ語らしき文面。これを良太の完全記憶/写真記憶で持ち帰ってカズミに解読してもらうしかない。崩れた建物の中で偶発的に残ったそれが鎮死剤複製に役立つなんて御都合は想像しがたいが……何にしても警察から逃げて天文台へと帰らなければならないが……

(http://www.okamoto.tv/image/brn01.jpg)

 颯爽登場ネコさん何を被ってるんですか(゚Д゚)
 そもそもなんで此処に来てるんですか、むしろクローンの別人ですか。いや「窮地の二人は……」とか書いてあったから寧子本人か。佳奈が何か予知した? 明らかに射程外では? それとも……単に居ても立ってもいられなくなって追いかけてきた? あるいは、これが切欠で寧子の所在が割れて刺客が送り込まれることになるのか。その場合は二正面作戦じゃなくて助かるんだけど、良太に加え寧子不在の所に刺客が来たら最悪にピンチだな……特にカズミと佳奈が(゚Д゚)ガクブル

―――ぅん? 魔法を秘匿するならば、寧子の【破撃】を目撃させられた警察官達の運命って……?