ALORC-Bottle-Craft-512-Logbook(Ⅱ)

AよりRへ。記録を継続する。(二冊目)

《未練ある魂/Lingering Souls》/『極黒のブリュンヒルデ』第37話

(前回感想はこちら)
(第1〜3話の無料閲覧はこちら)

「あのバカ・・・ なぜ逃げ出した・・・」

お、おかもとりぃいいぃいいいいいんんっ!!!?


「普通の女の子」

「今まで 沢山の人の記憶から私を消してきた そうしろ命令されてきたから」
「だから誰も私のことをしらない 私に友達なんていない
あなたと私は友達じゃない でも・・・」

「もう研究所になんて戻りたくない・・・ もうご褒美も必要ない
私は あなたの記憶から・・・私を消したくない・・・」
「どうすれば・・・いいんだろう・・・」

「どっちもイヤ 私は・・・ 助けたい」

「あんな場所に帰りたい人なんていない 実験台にされたい人なんていない ただ辛いことをガマンしてるだけ」
「必ず助ける みんなで考えればきっと何とかなる」


「存在」

「一か八かでいい 私はもう 死なないから」

「人は死んだだけじゃ この世からは消えない 人が本当に死ぬのは 生きてる人たちから忘れ去られたときだから」
「だから私は 生きているのに 死んでいるのと一緒なの」

「でも・・・あなたたちが私のことを忘れないでいてくれてるのなら・・・私はここで死んでもあきらめが付く」
「それだけで私は・・・今より生きていることになるから」

「そんなのダメ」

「だって・・・奈波ちゃんが死んだら悲しいもの・・・」
「奈波ちゃんのことは絶対忘れない でももし今奈波ちゃんが死んでしまったら・・・きっとみんな思い出すたび悲しくなる そんなのは イヤだ」
「だから死んでもいいとか言わないで」

「普通はな 覚えてるだけやったら友達とは言わんで お互い相手のことを気に入ってからが友達や」
「けど あんたがそんなに友達欲しいんやったら・・・かわいそうやからな
私が友達になっちゃるわ」

「わわわ私もです! 私ともお友達になっていただければ至極光栄です!!」
『気軽に人の記憶を覗いたり 書き換えたりしないなら 私も友達になってあげてもいい』
「……まぁ なんだ おれは最初からお前とは友達になれると思ってたからな」

「友達が出来たら もう死んでも構わないと思ってたけど・・・ バカね」
「余計死にたくなくなるに決まってるのに・・・」


「無慈悲」

『ああ!! ダメ!!』「えっ?」

ボンッ


カラカラカラ
シュウウウ
ドサッ

ジュワァアァアァアァアァ


…………


奈波ぃーーーーーーッ!!!!



……嗚呼、岡本倫。あなたは何故岡本倫なのだ。何故作者は岡本倫なのだ(本末転倒)……あの第8話以来の激烈撃滅。さて、ここで問題だ。あの状況から如何にすれば奈波の命を救えるか?

  1. 天才な良太は突如逆転のアイデアがひらめく。
  2. 寧子が謎の力に覚醒して助けてくれる。
  3. 助けられない。現実は非情である。
  4. ええい、このスイッチだ。
  5. 予知オチ。


―――切実に、5番で。2番でも可。「死ぬより恐ろしいことになる」スイッチを此処で押せそうな奴は……居るな、一人。そんなことが試せる場合でも環境でもないが、そもそも小五郎はその存在をまだ教えられてないか。何にしても、この場で救えないより悪いことなどあるのか……? ハーネストの中身が中身であるので不穏な予想はされてきたけれど。

 「刺客*1と戦うか、逃げるか」の答えを引っ張ったのが巧く効いてるとか、“ライトワンス”は消せないだけで適当な記憶が書き込める事とか、何気に良太はある程度前から寧子=クロネコの真実に思い至っているのではないか*2とか、「液体窒素でセンサーを黙らせる」というのが短編『デジトポリス』*3をちらと想起させたとか、奈波の死生観が「限られた寿命でもこれから生きていく人を救えば何倍にもなる」という寧子のそれと似て非なるのは他者との繋がりを局限されてきた所為かなとか、カズミちゃん様がちっとぶりにツンデレ可愛かったとかやっぱり小鳥は学校で友達作れてないらしいとか―――そのすべてを消し飛ばさんばかりの残酷な裁定。処分を恐れた黒服が責任を糊塗するために動くなどという希望的観測は実現しなかった。ある意味では予期された通りに、しかし回避は不可能だったのだろうか?

 イフ、もしも銃でビーコンを破壊できていたら。今回良太が言ったように物理的圧力に反応し爆発する仕掛けならばアウト。あるいは天文台に行く前に、黒服が連絡するより先に記憶処置を再度行っていれば―――そんな風に悔やんで悔やんで悲しみ重ねる事を、誰も望んではいなかったのに。


 次号、千絵姉さんが小鳥に命を託して腕捥げたりカズミちゃん様が秋葉原で良太の部屋で大暴れの第3巻の発売記念のセンターカラー。あんまりなタイミングじゃないか? 片腕が落ち、今にも融け崩れていく奈波を、看取ることしかできないとしたら。彼女が遺すかもしれないものを、ただ受け止める他ないとしたら。それが、これからの物語に不可欠な転機、その為の犠牲だなんて思いたくはなくて。

*1:今更だが根本的な問題として、殊に寧子にとり沙織もキカコも奈波も「刺客(敵)」ではなく「同胞」なのだよな。だからシノを撃ったキカコを許せないと思っても「倒す」「殺す」という考えにはならなかった。そして今回も、寧子が寧子のままであるが故に極めて自然。

*2:奈波から操作内容を確認したうえで「クロネコが当然良太の名前知ってる」、「寧子が子供の頃の良太を思い出したわけじゃなかった」というモノローグは、寧子がクロネコと別人と思っているのか同一人物だとわかっているのかどちらとも取れる?

*3:エルフェンリート』第2巻末、短編集『Flip Flap』に収録。つくづく『極黒』はこれまでの作品要素がちりばめられてる感。