ALORC-Bottle-Craft-512-Logbook(Ⅱ)

AよりRへ。記録を継続する。(二冊目)

《停止スイッチ/Kill Switch》/『極黒のブリュンヒルデ』第75話

(前回感想はこちら)
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狂気の根源  破滅の引き金

前回の粗筋

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―――まったくもって、激震激震に継ぐ激震。イチジク&真子の来襲以前から今に至るまで、片時も休まることなく。

 小鳥がイチジクに攫われたことで、彼女の視点で得られる情報に期待と不安が2:8くらいだったが……なんともはや、色々と待ったが無い気配。冥土の土産的な意味で。前回ラストの消沈から一夜明けて表面上平静を取り戻した良太の、一面で1巻来の彼らしい「論理的に考えた無茶」な作戦……間に合うか? 内心がまだまだ混濁してる事は想像に難くないが今はただ、なんて言ってる内に心休まる日も悩みから解放される日も、もう来ないかもしれないなんて危惧はとりあえず封印。


生れ生れ生れ生れて生の始めに暗く

「良かった みんな無事だったか・・・」
「ん〜・・・ おー村上・・・おはようさん」
『初菜 ホントに元に戻れたのね』「余裕」
「はぁ・・・ よぅ寝た」
『あんた昨日あんな事あったのによく寝れるわね』
「……泣き疲れたんや 昨日1日で色んな事が起き過ぎやで ま 一晩寝たら忘れてまうけどな」「……」
(さすがにみんな・・・ 疲れてるな・・・)

「村上くん ここも危ないかもしれない」
「ああ ダムの工事がもう始まってる 夜も明けたしそろそろ人が集まる」
『・・・行き先 考えないと・・・』
「……大丈夫だ ひとつあてがあるんだ」「えっ?」

「……」「どうも・・・」

「おおお!! おっさんええとこに住んどんなぁ!!」
「小五郎 ここでしばらく匿って欲しいんだ もう行くところがなくてさ」
「……一体 なにがあったんだ?」
「……天文台を襲撃された」
「……詳しく話せ」

「……(いちじく)が?」「ああ」
(いちじく) 千怜(ちさと)・・・ あのファイルに書いてあった名前の人物・・・そいつがヴィンガルフの所長だ」

「九が・・・ 音信不通だと思っていたら非人道的研究機関の所長か 奴らしい」
「小鳥がそいつに連れて行かれた なんとしても取り戻したい」「……小鳥・・・」

「あのおっぱいの大きな女か」
「あのおっぱいの大きな女だ」

「取り戻してどうするのかね」「えっ?」

「どちらにしろ薬がない 助けたところで1週間しか生きられないのだよ だが薬があるから捕まっていた方が長く生きられる可能性だってある 何より敵はあの九だ 簡単には取り戻せないだろう
もうおっぱいはあきらめ・・・彼女たちにここで安らかに最後を迎えさせるのが最も理性的な判断だと思うが 違うかね」
「……」
「違う」

「九の手元には間違いなく鎮死剤もあるんだ だから小鳥と鎮死剤の両方を手に入れれば全てが解決する それが一番の解決策だ」「……」
「確かに成功の確率を考えなければそれが一番だな だがどうする気だ? 時間はないぞ?」
「……」
「考えがある」


生きている虫と死んだ虫の差は何か そこに物質的な差異はあるのか 命とは何だ
「お兄ちゃん!!」
全ての命に等しく意味はない ただひとつの例外を除いて
その時は そう思っていた

なぜ 生物は死ぬ
病気で死んだ妹 体は欠陥品だ だが脳は その心は痛んでいない 頭蓋にそのまま残っている
体などいらない 心臓さえいらない 脳に酸素と栄養さえ送れば死なないはずだ
なのになぜ生き返らない? なぜそこに魂はない? どうすれば再び命が宿る?

命とは 何だ?

「全ての生命は寿命が存在する点に於いて欠陥品だ
我らの目標は完全なる生命体(ソーサリアン)の復元・・・ 真にこの星を統べる人類の創造だ もはや人類に神など必要ない
我々の支配下にある地球外生命体の遺跡・・・ そこに人類の起源がある」

神は人間を作る 命を与える 命を奪う

蘇らせる

「一体何を怯えているんだ 怜那(レナ) なぜ私の前に現れない?」「……」

「怜那って誰ですか? 私は鷹鳥小鳥です!」
「お前本来の体はそうだ」

「私は・・・一体何なんですか? どうして・・・みんな私を探しているんですか? どうして・・・」「……」

「地球上の人類は 全て宇宙人が作り出したモノだ
遺跡を調査した結果・・・疑いようのない証拠がいくつも発見された そして創造主である宇宙人たちは
いつでも地球上の人類を滅ぼしリセットできる仕組みを人類に組み込んでいたこともわかった」

「そのスイッチが お前だ」


「えっ?」


死に死に死に死に死んで死の終わりに冥し

 遥か遠けきギルガメシュ叙事詩、飛んでイザナギイザナミ類題……更にワープして火の鳥ドラゴンボール魔界塔土Sa・Ga3×3EYES烈火の炎セイバーマリオネットJ女神転生エヴァンゲリオンFF7ファイブスター物語VANDREADトライガンHELLSINGトゥインクル☆スターシップからくりサーカス鋼の錬金術師ローゼンメイデンTOAイコノクラストコードギアス鉄腕バーディー(EVOLUTION)デビルサバイバーマジェスティックプリンス……その他諸々。創造と被造、現世と常世、生と死にまつわる反抗反逆。ことに後者は釈迦の芥子種の説話から西行法師の反魂の術からプレシア・テスタロッサの結末の更に先々に営々と連綿と、受け継がれたり受け継がれなかったり。

 ともあれ、探究者的性格と頭抜けた天才(+傍若無人)でもって犠牲や迷惑かえりみず「生命の解明」に邁進してるのか、てな印象先入観を掌返しまで行かずとも激変せしめるイチジク所長内面初描写である。これまでは「なんとなく高千穂に良い感情を持たず対立しそう」「一部失態はワザとの疑いが濃厚」くらいのものだったが……一転して肉親の情(シスコンという言葉に収まりきらない)が極端に逝き過ぎ狂的でさえある。妹の生首……生? を機械に接続なんてヴィンガルフ所属前には普通できない……自宅だか隠れ家だか、秘密の施設か。もしかしたら今、小鳥と一緒に居るのは同じ場所なのかもわからんね。そう考えると一見普通の家屋でもリアルバイオホラーの臭いがしてくる悪寒。普通に考えたら疾うに諦め受け入れてたところを、下手どころじゃなく頭が良過ぎた所為でああいう方向へ逝ってしまった末のヴィンガルフ入り……スカウト前に調査した人事部員、土屋女史でいう宅間さんにあたる人は「コイツやばすぎる」と思ったのか「向いている」と思ったのか、正直明らかにされてほしくない恐々。

 さておき。寿命が限られており、また創造主の胸先三寸で滅亡の憂き目となる現人類ではない存在(相手と同じ土俵に立つ者)を生み出す事。そして多分に、自分達もその高みに登ることが高千穂歴々の目的であり、イチジク所長にしてみれば死んだ妹を「死なない存在」として蘇らせることにある、と。あと、もしも現存しているのならば人類を滅亡せしめる神の如き宇宙人をその力で滅ぼすことも含まれるかもしれない。人類全体を次のステージに、という感じがあまりしないのは「人間に無理をしたくない」と嘯いた丸眼鏡からの予断だが。今回開示された情報、セクションの壁が予想されたヘクセンヤクトと異なり秘奥の最奥まで知り尽くした所長の回想・発言から想像されるこれら。はたしてその通りであるとすれば、前提として幾つかの事項が必須となる。

 まずドラシルひいてはグラーネのこと。その中にはイチジクの亡き妹の魂が存在しているのか? それとも魔女の本体と言われたアメーバ寄生体は、物質としての枠を超えて何処かと繋がっているのか? それこそ、ニブルヘイムとかに。その場合ヴァルキュリア真子が扉だか鍵だかで特別な理由が別途必要に思うが。また前者にしても本当に妹の魂がグラーネに宿っているのか、そうだとしてもいつ、どのように……魔女って、一度死んだ(公的に死んだ事にされた)少女に改造手術を施して「誕生」するかもしれないんだよな。でも魔女の怜那がイチジクの傍に居る様子は今のところ無い……そんなの居たら真子さんベタ惚れになる隙間も、ない? 本当どうしてああなったんだか。脱線脱線。
 また現時点では想像に過ぎない人類補完計画高千穂総ソーサリアン化計画。まあ新人類を作るだけ作って自分達は未来を託すのみ、なんて殊勝な集団には全く見えないから勝手にそう捉えているのだけど。怜那をの魂をグラーネに入れたか、グラーネが死者の世界に繋がってるかのいずれにしても、おそらくそれを転用可……本来の目的からすればイチジクの反魂法(推定)の方が転用か。しかし何にしても、小鳥&グラーネを実験台にしての完全な宇宙人≒不死不滅のソーサリアンの再生とやらがどのように行われるか次第……いや、良太達視点ひいては読者視点としても実験・再生を完遂されたくないさせまいという話であり、となると完遂前に実験が妨害されて中途半端な結果になり、正確な情報が得られないイチジクの願いが叶わない……いかんな、当方も結構なド外道になってら。

 造物主たる宇宙人の任意で人類にリセットをかけるスイッチ。もしかしたら何らかの発動条件が設定されてるかも知れず、ドラシルが孵卵した人喰い怪物の一匹や二匹千匹以上より尚、物騒というか危険極まれり。現人類が宇宙人の被造物というからには、人類そのもの全体に影響して……という可能性も多分に。はたまた【転位】および【転時】の関連からリセットボタン以外の時間を巻き戻す、巻き戻した時間にボタンを跳躍させる……こう考えると【転時】魔法って解釈し難い代物だったな。そのお陰で九死に一生どころか十死んだ先に命を拾えたわけだけど……んんん? 時間、時間ね。何かおかしいのか何もおかしくないのか。


 小鳥はリセットボタンである⇒小鳥は鷹取小鳥(故人)にグラーネをぶち込んで生まれたと思しい⇒リセットボタンはグラーネである⇒グラーネは研究所で再生された⇒リセットボタンの存在如何に関わらず人類にはそれに反応するアポトーシスが仕込まれている⇒何故グラーネを再生する必要があったのか?


……いや魔女の精神=ドラシルまんまではないかもしれない(希望的観測)ように、グラーネ=リセットボタンではなくグラーネと名付けられたドラシルにどういう経緯でか(遺跡発見以前から存在した)リセットボタンが包含されることになった、のかもしれない? 仮定の上に仮定でわからないことだらけは平常運転。ただパッと思いつく所だと、やはり高千穂の歴々が現人類を切り捨てる気満々に思えてきてならず。