ALORC-Bottle-Craft-512-Logbook(Ⅱ)

AよりRへ。記録を継続する。(二冊目)

《捨て石の兵員/Expendable Troops》/『極黒のブリュンヒルデ』第77話

(前回感想はこちら)
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オンドゥルルラギッタンディスカー!?

前回の粗筋

                 ___/^ヽ、__
               /   / ., '  , '   ``ー、
              /// / /   .,'   l  i \
            // / , ' i   l   i  i  ヽ
         ,. ‐'7 , '  ,' /   ,'   l   l  l  |~`\
         i  /,/ , '  / / l    !   i  i  | -  }
         i j i i  / i / i   .i   .i  l  |  /
         |ゝ l l  ! _,.t'T~ヽ',  i ~i~`.ト、  l  !,/
         /,ヽヽ ',  i  ,.イj;;;;! ヾヾ! iこヽ、 ヽ ! / i
      / ,  , ヽ ', l./i;;;;;;;;;;;|    |;;;;;;;;;;ト、リ ! i l       その者、世界を滅ぼす猛毒なり
     / , ' , '  , ヘ', ゙、. ヽ;;;:ノ    ゞ;;;;;;;ノ ! ,!  !i .|
  /  / /  , ' i .j ゝ.',     ,      ,イ' /  i .i |
/  / /  ,.' /  i  ,' i.\   -   ,.イ/ ./   i l |
 ///   / ./  i .rヽ i l `Y`!,,.イ, i / / _,..._ ヽ! !
' //    , ' /  ,'  ハ i'^\ー/ /./7 , ' .///~i i ヽ '  |
イ,/    , ' , '  .,'  / .} }  r'" /,//ノ , '.// .l l  j'  |
.'    , '  ,.'   ,'  /  i_ヽーl    ‐'__/ //  l l  / / ヽ
    , '  , '.   ,'  /  ゝこ i    ,‐-、,ノ、   l .l / / i |
   , '  , '   ,'  i  /   ノ    / `ヽ  丶  i i/ / リ |
  /  , '    i  i /  r '7   ,..ヘ     i   ヽj,/ / ,イ ,'

―――違和感だか喰い違いだか、あると思ったらない、ないと思ったらある。そんな先入観予想読みを悉く破壊する極黒クオリティ……いやま、前回の界隈は方々でミヤコさん女装疑惑小五郎怪しいという見解が出ており、当方の見方が甘かったと言えばそれまでだけども。


裏切り? / 切捨て?

「どっちにしろ鷹鳥小鳥は死ぬしかないのよ」「……そんな・・・」
(でも・・・ 確かに話の辻褄が合う・・・
研究所(ヴィンガルフ)が小鳥だけを生きたまま探している理由・・・こいつらが小鳥を執拗に殺そうとしている理由・・・)

「私たちはね 鷹取小鳥を殺すために輸送車を襲撃したのよ でも失敗してしまった
小鳥の乗っている車だけではなく他の車も事故に巻き込んでしまったの
そのせいで鷹取小鳥を見失っただけじゃなく他の大勢の魔女も逃げ出してしまった そして私たちの仲間も1人失った」

「やっぱり・・・あんた達が襲撃したのか・・・」
「そうよ でも 逃げ出したほとんどの魔女は研究所に捕まったか鎮死剤切れで崩落したはず あんた達みたいに製薬メーカー襲ってまで薬を手に入れた連中以外はね」
「グラーネを取り出したら 小鳥はどうなる?」
「当然死ぬわ グラーネもドラシルも脊髄の役割を担ってるから」

「グラーネの意識はまだ発現していないと聞いている つまり小鳥の意識は素体の小鳥自身のものよ だから小鳥を助けてグラーネだけを潰すことは出来ない 小鳥ごと殺すしかないの」

「それが本当だとして・・・研究所はなぜそんなモノを作ったんだ? 地球を無生物にして一体何がしたいんだ?」「……」
ソーサリアンを生成する為よ」

「……ソーサリアン? なんだよソーサリアンて?」 MIKI!!

Es sind keine befruchteten Eizellen in diesem Zylinder!
「は? シリンダーに受精卵が入っていない?」「!?」

「え・・・」
「……あんた・・・ よくも騙してくれたわね……」「ばっ……」
(こっ・・・ 小五郎の野郎・・・!!)


「……千怜(ちさと)

ビ―――ッ ビ―――ッ
放射性崩壊が5Rd・・・ 磁束密度が1万7千テスラを超えました!!
既にビーコンの許容量はオーバー!! 遠隔でのハングアップは不可能です!!
細胞の融解を止められません!! ヴァルキュリアが崩落します!!
ヴァルキュリア!! 自分でハングアップボタンを押せ!! ハングアップボタンを押すんだ!!*1

「……」
ダメだ!! 既に聴覚を失っている!! くそっ・・・こんな事でヴァルキュリアを失うなんて・・・
「……」
!? 所長!? いけません!! 今 入ったら1分で致死量分の被爆をします!! 所ちょバタン

所長!!
「3313番を呼べ ヴァルキュリアの治療をさせる」
わかりました!!
「私の被爆量はどのくらいだ?」
……滞在時間27秒・・・回復できない数値ではありませんが・・・ 数十年寿命が減ったと思われます
「……そうか」

(みんなが私を見捨てたのに・・・あの時 千怜だけが自分の命を使って助けてくれた・・・)
「千怜・・・好き・・・ 千怜が死ねと命令するなら・・・私 死んでもいい・・・」


「私は いつ殺されるんですか?」
「……新たな宿主の準備に時間がかかる だが一両日中だ」
「……そうですか・・・」

「……昨日話していた・・・レナさんて 妹さんですか?」
「……なぜ妹だと思った?」
「あの……話している時の表情でそうかなって・・・」
「どちらにしろお前には関係のない話だ」
「でも教えてください よくわからないまま殺されるよりは少しでも事情を知りたいです」
「……」

「お前の脊髄に入っているグラーネは 妹の脳を喰わせて培養した」「え!?」

「それでグラーネには妹の意識が宿るはずだったんだ なのにダメだった
自分以外の命など等しく無意味だ だが・・・妹の命だけは違う
他の命をどんなに費やしても 妹の……グラーネの意識を覚醒させる お前もそのために費やすべき命の1つだ」

「……ヴァルキュリアさんの命もですか?」
「……もちろんそうだ」
「でもヴァルキュリアさんは・・・あなたのことが好きみたいだったのに・・・」
「かつて あいつの命を救ったことがある あいつはそれを恩義に感じているらしいが・・・」

「それは単にヴァルキュリアが私の計画に必要だったからだ それ以外の感情などない」


「知ってた」

「でも 好き」


「デジトポリス」

 敵の組織力に仲間の結束で対抗するはずが身内に梯子外され窮地に陥る一方、何とも想われていないことを知った上での好意。記憶操作で刷り込みとかなかった。アカン、何とも不利過ぎる。どころか普通に主人公が殺されそうで、抵抗も申し開きもしようもないという。外に居る寧子達が来ても、魔法が使えないし。小鳥を助けに行く以前の問題、二重の意味で。このままだと助けに行けないし、「本当に」助けられるのか「助けていいのか」の目処も……いや、「何であろうと助ける」指針は早々折れやしないだろうが、どうにも苦しい。これまで楽な状況なんてあったかというとこれも苦しい()。

 さてさて、いつか何かやらかすだろうと懸念されていた柱谷小五郎、遂に明確な行動に出る*2。もしかすると握ったままの受精卵で魔女狩りとの交渉主導権を良太から掠め取る心算なのかもしれないが、次の瞬間にも良太に連絡を入れる(もしくは良太から連絡を入れる)かしないとチャンネル自体が途切れかねん。いや魔女狩りにしても同じだろうけど、空手で間に挟まれた良太の身にもなってみろ、と。奈波のドラシルにナニカサレル前、重い荷物を背負い込んだ甥を心配したり虚言疑惑で姉に連絡しようかと考えたり、「目の前で人が死ぬのは嫌なものだ。それが悪意によるなら尚更」とも……ここら辺だけ取り上げれば真っ当な大人に見えるのだが―――今回(前回から)のコレが引き籠りMADの本性か、それともナニカサレタ影響か。ある意味魔女の精神が素体本人のものかドラシルのそれかという命題に近い。現状ナニカサレタというのは疑惑でしかないけれど……彼が次週以降どうしてくれるか。それが良太の、寧子達の、ひいては小鳥の命運をも左右しかねず……本当、どうしてくれるんだか。

 他方ヴァルキュリアこと藤崎真子は、蓼食う虫もダメンズストックホルム症候群と言い切れるや否や。碇ゲンドウ綾波レイ、またエルフェン巻末(また短編集)収録短編の爆弾解体師弟のクライマックスを想起させる過去エピソード馴れ初め。
 そもそも少女達を人間でない者に変え、かつ死ぬほど過酷な実験を繰り返して役に立たないとなれば処分する環境下で、寧ろ「死ねば楽になれる」とさえ思ったかもしれない場面で命を助けたから何だというのだ……という反駁も出来なくはないが、やはりその辺はロジックじゃないのだろうな。実際命を削って助けた事には違いなく、所長からすれば「命の分は使い倒そう」という考えか、はたまた「削られた分の命と同一視」か……妹を完全な生命体にする以上は多分に自分もそうなろうと考えている筈で、「人間としての寿命」が削られても死ぬ前に成就させれば構わない……もしくは「真子を使い計画を短縮」が「見捨てて計画を進める」を期間・確実性において勝ると彼の中で判断されたなら迷わず実行するだろう、とは思う。其処に理屈以外の感情が「本当に無い」のか、それとも「自覚してない」のか……どちらであろうと彼の行動も結果も、また真子の想いも行動も変わるまいな。ああ、もう深く考えまい。たった一人の為に捧げ尽くすという意味では似た者同士だよ……。

 良太とイチジク、寧子と真子。他にも佳奈と瑞花にカズミと初菜、奈波と怜那とかもあるけれど特にこの二組……対比対照的なようでいて、しかし行動原理としては似たようなものだという話。目的までの過程に出る犠牲迷惑をかえりみない、のは一見大きな違いに見えるが……人類社会の平穏と魔女達の安穏で後者に傾いてる良太も割とそちら寄りになりつつあり、まして小鳥に関して事と次第によっては、と。またこの面子の内では、イチジク所長だけが自分の命を懸ける積もりが無い……と表明してはいるものの、そこがお前とは違うと良太が行動で示したわけだが……一歩二歩引いて俯瞰するに、所長も妹復活の為に一歩違えば物理的に首が飛び即死する綱渡りと言えた。それが特別な妹を自分の命と等価に見るが故か、彼自身にも説明のつかない非ロジックなのか……何故だろう。現状でそんな気配は欠片も無いのに、所長が悲願成就の前にころっと死ぬかもしれないと思えてきた。不可解、徒然。願望、逃避。敵でいてほしいのか、人間でいてほしいのか。どうにも解無く冗長。

*1:初見で(予想してなかった)読者と初菜を驚かせた特殊仕様のハーネスト。もしかしてこの時点では他の娘らと同じ仕様だったかと思いきやイチジクが金庫鍵みたく……いや普通にボタン押してるのかこれは。つまりアレは外付けカバーだったと。そもそもハングアップ機能は魔法の過剰使用による肉体負荷≒崩落を避ける為の安全機構でもあり、そうしなければ瑞花みたく融け死ぬ。いやあの場面は純粋に代償だったか? 今回の回想においても、ハングアップしなければ(自動発動を待たず押さねば)肉体が耐えられないような実験……反物質放射線出すのかね。そもそも研究所内で実験していいのかあの破壊力。ともかくもリミッター乃至ブレーカー的作用があるのは確かか。ややっこしい。

*2:対してイチジク所長は、真子解放の段階から反旗を翻したかのように見えて、その実「まだ」高千穂ヴィンガルフの指針に反する行動はしていない。小鳥を研究所でなく実家だか隠れ家だかに連れ込んではいるものの、魔女狩りが懸念した通りに「器」の入れ替えを行うようだし。