ALORC-Bottle-Craft-512-Logbook(Ⅱ)

AよりRへ。記録を継続する。(二冊目)

”たとえばこの先 何処かで道が途切れても””みんながいて、わたしがいる。この奇跡がART。”――山田玲司『美大受験戦記 アリエネ』第3話感想

北島「いいか……歌川有……お前の乗ってる飛行機はな……離陸しない!!
小磯「俺は騙されねぇぜ。お前は、単に”下手なだけ”だな!!
(第1・2話の感想はこちら)

 さて、例の新書も読み出したことだし第3話「愛の嵐」(10/24発売ビッグコミックスピリッツ掲載)。
前回、私が勝手に懸念していた主人公がバカで初心者であることは実にあっさり、もしくは既にヒロインにバレていたらしい。ともあれ、登場人物が一気に増えたので、ここまでに登場したネームドキャラクターを洗ってみることにする。

★歌川有:主人公。大学に入らないと無援助で家を出なければならない。夢に惚れる。
葛飾夢:ヒロイン(の筈)。好きな絵は印象派。初心者の有をどこか羨み、親切に教えてくれる。
★北島:主人公と同じ高校の漫研リーダー。眼鏡。下の名前は不明。現状に悲観的。
(以下初出)
☆池田水菜:夢の同級生で親友。悪戯小悪魔。第1話で有が夢を初めて目撃した際に居たかも。
★小磯一郎:第1話の助演男優賞。上記の如く洞察力あり。同じく高2から予備校に通う夢と水菜を下の名前で呼ぶ。美人に軟派なところも。
(以下新キャラ)
☆月岡弥生:有と同じく今年から予備校入り。軟派に厳しい格好良い美人。有の絵を「マシ」と評する。
★青木:講師役。眼鏡。下の名前は不明。生徒たちの印象は概して「普通」*1。有を「巨匠」と呼び皆とは違う立体課題*2を与える。
★東山光河:他の予備校からの特待生。既に芸大レベルの絵を描く。夢と水菜と同級生で、夢とは「壁が無い感じ」?

 女子高生剣道漫画『バンブーブレード』みたく、名前の由来を高名な先人から取っているのではと先入観が働いていたのでWikipediaと辞書頼りに調べてみると……池田遙邨(日本画家*)、小磯良平(洋画家*)……月岡雪斎or芳年(浮世絵師)、青木繁(洋画家)……東山魁夷(日本画家*)。内3名は文化勲章
あと有の由来は歌川広重ではなく歌川国芳(浮世絵師)なのかも。同年の生まれで同時代に活動し、月岡芳年が弟子だったりするし。
 北島はさりげなく重要に思えるのだが、北島見信(天文家)北島雪山(書家)と出てもどちらかわからないし、それ以外の人かもしれない。はたまた誰の由来*3でもなく、彼の物語が用意されているのかも。どちらにしても注目株。


 『GA 芸術科アートデザインクラス』『ひだまりスケッチ』『ぽすから』『ももんち』『スケッチブック』『ハチミツとクローバー――――私が知れる程度であげても最近の美術・芸術漫画はかくもあり*4
漫画家が絡むとバクマン』『ドージンワーク』『G戦場ヘヴンズドア』『こみっくパーティー(コミカライズ)』『もと子先生の恋人』『CIRCLEさーくる』『げんしけん……そんなにも数があり、作者の数だけ画風あり、作品の数だけ展開あり、人物の数だけ「答え」もあるかもしれぬ。さて、山田玲司の画風で描かれる山田玲司理論を下敷きにしている漫画が示す道とは、その道の先はどうなるものか。読めばわかるさ……たぶん、きっと。

 そして次回、勢いとやる気はある美術素人(絵を描いてきた経験は人並み以上だが)が、最初に挑むべき課題……なんだろうこの既視感……
スラムダンク入部したての桜木花道が隅っこでドリブル練習したり、『はじめの一歩』ジム入門時の青木&木村が最初のランニングでヘロヘロになったり……冒頭で示された厳しい美大芸大の受験戦争という壁の、前の前の前に置かれた小石をどうクリアするか。クリアとは何か。何がクリアなのか。クリアしてどうなるのか……ううん?

(左から芸術科1年生→美術科2年生→3年予備校生→大学生同人生活/漫研↓+社会人&漫画家)

 記憶は曖昧だが『BILLY BAT』で人類の運命を描くよう蝙蝠に囁かれた漫画家ケヴィン・ヤマガタは、
「何処で話を閉じるかによってどういう結末かは変わる」と語った。山田玲司夢を叶えてもそこで終わりじゃないと新書の冒頭で告げる。切り口が違うもの、終わり目が違うもの、結末が違うもの、それぞれ。ただ人間は生まれて死ぬまで、エンドマークは打たれないのだった。
 さあどうしよう。どんな道を描いていこうか。まごまご蛇行するのもひとつ。その次は。

(後日付記:『アリエネ』第4話感想はこちら)

*1:いつか反転する可能性大?

*2:球体とか円錐とか美術の基礎っぽいもの。

*3:名前の由来の如く人生が用意されているという先入観。

*4:うち4作はアニメ化もしていたり。