《空位の玉座の印章/Sigil of the Empty Throne》
- 《ヴィダルケンの宇宙儀/Vedalken Orrery》、《時の縫い合わせ/Stitch in Time》
- 《起源/Genesis》、《教議会の聖域/Synod Sanctum》
- 《厳かなモノリス/Grim Monolith》
最早止め難く火蓋が切られるかという時―――月を覆う「眼」より、地に介入者の声が降る。これは『NARUTO』の月詠か、はたまた『グレンラガン』のアンチスパイラルか。
さてさてさて、今週の『鉄腕バーディー(EVOLUTION)』。ラスト柱文に最終回まであと4話、と記されております。この大風呂敷をどう畳み、混迷した状況をどう収めるのか。それは素直に本編を待つとして、今一度情報を整理してみましょうか。
地球と連邦の交渉は難航していた。引渡しを要求されているクリステラ・レビと火之宮水晶の遺伝情報が一致しなかった為、捜索軍1万8千が降下を開始。帝国の技術供与を受けた航空部隊のみならず、帝国も迎撃準備を整えていた。人形の体を得た皇帝曰く、「祖先の危地を救うは子孫の務めだ」と。
連邦は未来の地球から過去へタイムスリップした者達の末裔である。「ペリダンの禁書」の中身がその証拠であり、殊に中杉小夜香の“未来日記”が並行世界の実在を証明する。ただ彼女は、既に「禁書」の内容とは異なる人生を辿っている。いやさ、連邦が存在する世界自体がそうとも言える。
高校生から日記の中身は違っていく。級友が居たり居なかったり、また千川との出会い方も違う。彼は小夜香や幼馴染の早宮と同じ共学でなく男子校に通っていたのだった。
如何な理屈か、彼女は夢を見た。読んだ日記の内容を追体験するかのような、別の世界の自分の人生を。
研究グループ「パンテオン」のスカウトを受けた小夜香。出会いは違えど、親しい仲になっていた千川に背中を押され、一人アメリカへ。スポンサーは「こちら」の世界において実家の会社を乗っ取ったPMIのCEOシャマランである。また其処で出会ったロバートとやがて結婚。
そして彼女は生み出すのだ。バイオチップにして量子コンピューターなる、世界を変える「Q体」を。それは連邦が用いる宇宙船生命、またバーディーたちイクシオラのみが持つ細胞内器官である。シャマランとロバートはQ体の力を用いて地上の神を目指そうとし……2040年5月12日にカタストロフは訪れる。
カタストロフといっても何が起こったかは定かでない。夢では何か巨大な黒い球面が現れていたが……ヒュッケバインのブラックホールエンジンが暴走でもしたのか? Q体を梃子に「マカロフの多元宇宙論」とやらを研究したがっていたロバートも、何か関係があるだろうか。まして並行世界が実在するとなれば。
またレビ曰く近い将来地球で生まれるという「奥の院」の事もある。5月12日に起こるというカタストロフ。しかし日記は其処で終わらず、「何かが起こった」同年9月28日に途切れる……その過程に彼らは、また「現在」地球に語りかけようとしている彼らは、かつて彼らが生まれた歴史とは違う時間を辿る世界に何を行おうとしているのか。また「最後の果実」とは……疑問ばかりであるな。
ただ、未来からの時間遡行者で、過去から積み重ねた技術を持ち、生誕の地である聖地が戦火に見舞われんとする時に声を発する……その意図は、彼らが歴史についてどういう見解を持っているかについて教えてくれるものと期待する。過去の自分達が生まれなくても構わないと思っているかどうか、とか。
かつてはイクシオラ・チュニカとの融合の影響で性転換を繰り返し、やがて女性として固定されたように映ったレビが久しぶりの男性体で登場し、「最後の仕事」とやらに臨もうとしている。その企みに小夜香は何の役割を与えられているのだろうか。人形の皇帝などは、創造者たるレビにプログラム的操り糸を掛けられているし。そういえば人形「さやか」の出番はあるや否や。
他方、実は千川つとむ本来の肉体は修復済みで、海上に停泊する母艦の中で眠っている。交渉事をややこしくするだろうと明らかにされてはいないが、はたして今後は? そして捜査官の職を解かれているバーディーに、この状況下で何ができるのか……135話を終えて、多分あと4話+1話。もしかすると無印が終わらないまま終わったように、更なる第3部に繋がる、ことは流石にないかな。
二心一体の相棒物語、再来月にはどんな結末が待っているだろうね、と徒然と綴り閉じる。