ALORC-Bottle-Craft-512-Logbook(Ⅱ)

AよりRへ。記録を継続する。(二冊目)

《アダーカーの戦乙女/Adarkar Valkyrie》/『極黒のブリュンヒルデ』第58話

(前回感想はこちら)
(第1〜3話の無料閲覧はこちら)


ろくでもない つ (カオス) の 悪 寒

「村上くん ありがとう」「えっ?」
「私 またいつか・・・こうしてみんなで 遊びに行きたい」
「……そうだな 必ずまた行こう」


 「結局またおっぱいポロリの時にホクロを確認するの忘れた・・・」とか言ってる場合じゃねぇっ! ただ、“目に見える”危険度が逆に安心してしまう、というのはどういうことなのだろう。訓練され過ぎ?
 はたしてフラグの臭いしかしない帰路会話を以て海水浴イベント終了、第6巻収録分ラストだか第7巻収録分頭だか判然としないが新章本格突入! 伏線イメージを刺激せんばかりの未整理情報の大波が帰ってきたぞ。皆々様、妄想力の貯蔵は十分か―――


前門:Greyhound

(黒羽が・・・自分から未来のことを話したのは初めてかもしれない
いつも誰かを助けるためなら簡単に自分が死ぬことを選択する黒羽が・・・初めて生きる意欲を見せた・・・
黒羽は もっと生きたがっている・・・決心がついた)

「あと鎮死剤のことや うちらがもう手に入れてるって言ってたわ」

(なら手がかりは・・・もう これしかない
明日・・・東京へ出よう そしてこの端末から魔女狩り(ヘクセンヤクト)とコンタクトを取る
それしか黒羽たちを救う道はないんだ……)


プルルルルプルルルル ブツッ(出た!!)
【……】「……」【……】「……もしもし?」
【Wir sind Sie?】「!?」
(日本語じゃない!! ドイツ語が!? しまった・・・カズミを連れてくるべきだった・・・)
【Das ist Japanisch】【Geh du ans Telefon】

『茜? 茜なの!!』「!?」
『今まで一体何をしていたのよ!? シリンダーはどうしたの!?』(……女?)
「ぼくはアカネじゃない」『!?』
『……あなた 誰? 一体どうしてこの回線を・・・』

「この端末を託されたんだ 魔法使いから」
『まさか・・・あなたなのね!? 工場から鎮死剤を奪って魔女たちを延命させてるのは!?
なんてことをしてくれたのあなたは!?』
「えっ……」
『鎮死剤は外の世界で魔女が長く生存出来なくするためのセイフティネットなのよ!!
なのにあなたはそれを破ってしまった! 鎮死剤を奪い魔女を囲い込むなんて・・・1107番は生きているの?』
「1107番?」
『鷹取小鳥よ!!』「……」
『……生きているのね!? だからヴァルキュリアまで動き始めたんだ……』

『今すぐ魔女を全員殺しなさい!!
早くしないと彼女たちのドラシルが孵卵する!! そうなったら大変なことになるの!! 人が滅びるのよ!?』

『これからそっちへ行く!! そこを動かないで!!』「!?」
(冗談じゃない!! 魔女狩り(ヘクセンヤクト)はやっぱり味方なんかじゃなかった・・・! なんで人が滅びるとか・・・そんな話になるんだよ!?
おれはただ・・・寧子達を助けたいだけなのに・・・!!)

『1107番まで生きていた・・・だからヴァルキュリアまで・・・このままじゃ 大変なことになる・・・』


……意を決して得体の知れない電話を繋いだら、状況打開に役に立たないどころか想定斜め上の毒を流し込まれた挙句ロックオンされたでござるの巻。まあ魔女を生かす情報が易々と得られる筈も無いことくらい判っていただろうが、希望的観測を塗り潰して更に意味不明情報に混乱……つまりは平素の読者(おれら)と同じ状態と言えなくもない。求めてやまない新情報は更なる混沌の元。
 また見方によっては、「今回の電話相手⇔良太」∽「佳奈&小鳥⇔前回の結花」と相似ととれなくもなく。事情を知ってる側からすれば「何も知らないくせに」となるが、状況の軽重はあれど知らない側は知らない側で切実に喰らいついてるに過ぎないし……推定魔女狩り三人目・女性研究者の物言いは(前回と同程度に)相手に信じさせ説得せしめる話術とは言えない。電話越しでは証拠を提示するも何も無く、現在に至っては証拠を見せるからと言われて良太が大人しく拠点に着いていくと思えん。連行される可能性はあるかな……その場合の身の安全は、来週佳奈の予知が発動するか否かで測れようか。瑞花の件で、異なる人間の死を平行して観測可能らしいことがわかり、射程内のすべてを予知可能ではないと言いつつも「身内」の死兆は視逃さないでいてくれる毒舌マスコットさんは本当不可欠な警鐘―――ただわかっていても防ぎようが無い事象・相手と、異なる勢力に同時並行で来られたら対処しきれないのではという両懸念が合わさり最凶に見える。


後門:White Tiger

ヴァルキュリアを使う?」
「それが出来るならとっくにやっている Sクラスのヴァルキュリアを外に出して制御できるわけがない
AAでさえ収拾を付けられなかったではないか 断じて認められない」

「ですが もう残された時間はわずかです ヴァルキュリアの「魔法」であれば 必ず1107番を回収できます」
「そんなことはわかっている だがリスクが大きすぎる」
「混成チームで行動させます こちらに従順で防御・制圧系の魔法を持つAおよびAAランクの魔女7人でヴァルキュリアを監視させます
今まではリスクが高いのでチームを組ませることはありませんでしたが・・・
今回は攻撃1に対して監視役の防御7の変則チームです ヴァルキュリアが我々のコントロールから外れることはありません」
「ダメだ 認められん」
「既に 私の独断でヴァルキュリアのチームを送り出しました 全責任は私が取ります」

「……とてもお前の1人の命だけでは贖えないぞ」
「……心得ています」

「は〜・・・久しぶりの外だ なんと清々しい」
「久々に寧子と会えるわ 超楽しみ  みんなもそう思うよね?」

「あっ……いっけない みんな殺しちゃったんだった・・・」


―――なんかもう、あれだな。イチジク所長ってワザとやってるんじゃないかな、かな? 前々からなんとはなしに期待してはいたが、しかし超えるごとにハードル跳ね上げるし、本気で殺しにきてるかとも思ってた。そして瑞花(スカジ)喪失の件は黒服に全部責任おっ被せて終わったのか。まあ実際瑕疵・隙は多かったかもしれないが……引継ぎ云々とか丸々すっ飛ばして頭越しに派遣済みで土屋女史の出番がぬぇ。昨日今日だか先週今週だかでいきなり重大任務に就けと言われても無茶だし上もそう判断したのだろうが……信じて送り出したらご覧の有り様だよ! よかった邑貴ちゃん殺されずに済んだよ!

 ところで、奈波もびっくりの速攻見張り皆殺し*1Sランク魔女【ヴァルキュリア】本名未詳さん2Pカラー白寧子さんクローン疑惑とかもあるけどさておいて……改めて見るにイチジク所長が良太の父親にしか思えなくなった件。「第1話から周回時間移動した良太の未来」よりかは見込みがあるかと……だって眉毛は御母堂譲りとしても、それ以外は激似にも程があるよ。いつぞやの重力魔女が良太の親類じゃあとか妄言吐いてすぐさま滅殺されてorzした当方が言ってもいささか確信に欠けようけども―――ただ本当に「そう」だとしても、それが何を意味し、何故そうなったのかは掴み難い。良太が2歳の折に事故で「弟」と共に亡くなった設定の裏で、何が起きていたか。酷薄に魔女を扱いながら、ところどころで高千穂へ含むところをうっすら滲ませ、ついにヴァルキュリアさえ外に出した……何を思い何を狙うのか。

 結局のところ、三つ巴なのか四つ巴なのか……ああ、小五郎さんも感染状態次第では何処かに加わるか独自に動く可能性もあるな。この終着点も過程もさっぱり読めなさ加減が実に極黒クオリティー。そう言っておけば大体あってる。


不確定情報を整理妄想を列挙してみよう!

  1. 高千穂百年の大願とは何か? そもそも彼らは何者であるのか?
  2. 彼らの目的達成に【ヴァルキュリア】は、あるいは1107番/【グラーネ】はどう関わるのか?
  3. 人類を何度も滅ぼすだけの力、小鳥の回収確実という【ヴァルキュリア】の魔法とは?
  4. まず当時の記憶は無くしている寧子(随一の力を持つ?)と【ヴァルキュリア】の関係は?
  5. その寧子の命と体を動かす事が連動しているという佳奈には何があるのか?
  6. 寧子に受精卵と端末を託した茜女史の意図は何処にあったのか?
  7. 女史は魔女狩りの女性と知己。輸送事故脱走事件には魔女狩りの手引きがあったのか?
  8. 魔女狩りは元ヴィンガルフ職員からなる集団ではないのか?(デビサバ2的発想
  9. 事件の狙いは、魔女を世に放つ事ではなく、研究所の管理外で死なせる事だったのでは?
  10. もっと言えば、1107番/鷹取小鳥を研究所にイジェクトさせない為に行われたのでは?
  11. 良太の行動と千絵姉さんの献身により都合4人が生き延びた。他には残っていないのか?
  12. ドラシルとは、魔女とは何か? 受精卵と、もしくはソーサリアンと何の関係があるのか?
  13. ドラシルの“孵卵”により何が起きるのか? なぜ魔女「全員」と念を押さねばならぬのか?
  14. “孵卵”はどういう条件下で起こるのか? 一定期間を経た魔女には必ず起きるのか?
  15. Bクラス魔女を処分することは役に立たない「器」の取り替え以外にも意味がある?
  16. 小鳥以外が“孵卵”した場合でも、連鎖的に人類種に致命的な事態が発生するのか?
  17. 一人の“孵卵”が連鎖的に同胞にも波及する? 小鳥の場合は尚悪いことになる?
  18. 「疾うに宇宙人に侵略され」「宇宙人の遺跡がある」地球の現生人類への“孵卵”の影響は?
  19. 奈波のドラシルと眼が合った小五郎には何が起こったか、現在彼は彼たりえているのか?
  20. 研究所曰く「地球上生命全滅」、魔女狩り曰く「人が滅びる」とは同じ因果を指すのか?
  21. それを防ぐべく1107番を然るべき所でイジェクトさせよう/させまいとする綱引きには何が?
  22. 結局のところ「世界を救えるのはお前しかいない」という茜女史の遺言の真意とは?
  23. 荒廃した世界で「お前さえ居なければ」と良太が寧子を刺殺する未来へどう繋がるのか?
  24. この物語は何故『極黒のブリュンヒルデ』で、何故ヒロインは寧子なのか?

 思いつく限り、ざっとこんなところ。あと寧子は……もし良太に会う前なら、あるいは佳奈と一緒でなければ……自分達が生き延びることが、多少なり人命救助を行うのとでは全く釣り合わない程の災厄をもたらすのだと聞かされれば、それが本当だと信じれば、自分からイジェクトスイッチを押すか自分の魔法で己を潰すかくらいはしたかもしれない。今でも、真実がそうなのだと電話の女性に突きつけられれば揺らぐかもしれない。しかし、躊躇い無く死を選べもしないだろう。良太と出逢って、彼の助けを借りて寿命を延ばして、仲間と共に死の危機を乗り越えて、学生生活を楽しんで……良太視点で、それは到底悪い事だと思えやしない。けれど魔女の存在、彼女達の魔法(特に【操網】など)が社会に混乱を引き起こす可能性からこれを秘匿すべし、といった問題とは別次元に魔女は死ぬべきだという大義が二重に降りかかる。

 人類の危機なぞは他に任せ、まず寧子達の延命と平穏が第一。これが良太のスタンス。しかし彼が生かした寧子達が、自分の身内含む世界全体の災いをもたらすと言われてどうすればいい。
 それが自分がなすべきことだというなら、自分に世界が救えるならそうすることで自分の「生きた」証としたいのが寧子のスタンス、だった? しかして、「生きる」ことに幸福を感じ始めたまさにその時、「生きる」こと自体が悪だなとと言われてどうすればいい。



 生まれ出ずる欲望が罪ならば 神はこの痛みを何と説くだろう
 求め合い守るのが罪ならば 僕は惜しみなくこの身を捧げよう
 生きて夢を追うのが罪ならば 神が定めた運命も越えよう

*1:残る行動制約はビーコンの有無と鎮死剤の量か。人間の監視役が居ないというのもかえって恐ろしい。居ても既に殺されたかもしれないが……あと根本的に彼女の意志が何処に向いてるか、責任者イチジクが何処までそれを把握して彼女を解放?したのかが彼の意図を判ずる要素になりそうな。また彼女の現在位置か……前回襲撃こそ失敗したものの、長野松本からそう外れていまいとは思うが……身一つで気まぐれに随行皆殺しにしてあても無く小鳥と寧子探した挙句薬切れで力尽きるなんてことは……「魔女の肉体が魔力により支えられている」と仮定した上でSランクともなれば保有魔力総量も想像以上かもわからんが。